第27話:新しいバイク。

土曜日、俺はリンデと新居に引っ越してきた。

でもよく考えたら、ここから大学まで距離が遠くなったよな。

ここからならチャリで最寄りの駅まで行って、そこから電車に乗って通学って

ことになる訳か・・・。


前のアパートからの距離が倍以上になったな・・・どうしよう・・・。

新しい家にリンデと住めると喜んでて肝心のことを忘れてたよ。


ルートガルザは魔法の杖を持ってるから移動は自由だしリンデと俺は

指輪を持ってるけど・・・俺もルートガルザから借りてる指輪を使って学校まで

飛ぶのか?


そんな横着なことしていいのかよ。

俺、人間だよ・・・あっちの人じゃないからね。

現実を見つめながら生きてるんだ。


指輪を使ったとして講堂にしろ図書室にしろ、どこへ現れたとしても

誰かがいるだろ?

もし俺がいきなり現れたら・・・で、そんなとこをダチや同級生に

見られでもしたら誤魔化しきれないだろ・・・・絶対ダメだなそれは。


いっそ大学やめて、どこかの企業にでも就職しようかな?

そしたら今より生活も楽になるし・・・。

でもな〜大学中退なんて、今日日どこも雇ってくれないかもしれないしな・・・。

それに生活のために安易に仕事を選びたくないし・・・。


そんなことを、考えていたら、ルートガルザがやってきた。


「ルートガルザ・・・家が新らしくなって嬉しいんだけど

大学までの通学距離が伸びたよ・・・まあ、朝早く家を出たら大丈夫とは

思うけどさ・・・」

「どっちみちリンデに朝は早く起こされるからな」


「あ、そのこと、私が考えてないとでも?」


「え?考えてくれてるんだ・・・どうしようっての?」


「学校までの足としてですが、車がいいかバイクがいいか迷いました・・・」


「車はダメなんだ・・・大学は車で通勤は禁止されてるから、どっちかって

言うとバイクになるのかな?」

「それにバイクなら大型も乗れる免許持ってるし・・・」


「そうだと思いましたので、バイクにしておきました」

「まあ今日、明日はもう間に合わないでしょうから明日は早起きして通学して

ください」


「明後日には新しいバイクが届くと思いますよ」


「え〜もう注文してあるんだ?」

「そんなこともできちゃうんだ・・・?」


「私におまかせあれ・・・私に不可能はないんですよ」


「さて車種ですけど・・どこのメーカーのなんてバイクがよろしいかお聞き

してからにしようかと思ったんですが・・・」

「私の一存で独断と偏見で選ばせていただきましたので」


「あ〜買ってもらうのに贅沢言ってたらバチがあたりますから・・・」

原付以外ならなんでもいいです」


「大丈夫です・・・原付以外ですよ」


ってわけで次の日、俺は朝早くリンデに起こされて大学へ出かけた。

駅までの足がなかったからリンデのクロスバイクを借りることにした。

だからリンデの弁当は食べられない訳で今日は大学の食堂で昼食を

取ることにした。


ルートガルザは明後日って言ったから、それまでリンデの自転車が活躍する

ことになる。

もうリンデは俺なんかより自転車を漕ぐ脚力は上なんだろうな。


二日後、ちんたらちんたら自転車をこいでリッチな家に帰ると俺の家の

玄関前にバイクが一台止めてあって、ちょうどリンデがそのバイクを眺めていた。


つづく。


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