第24話:なにも変わらない朝。

俺の部屋の中にはリンデの洗濯した服やパンツが干してある。

リンデが履いてるスリッパがあって、リンデが毎日掃除してる部屋。

なにげない日常がそこにある。

そういう日常を見てると彼女が乙女戦士だってことも忘れてしまいそうになる。


戦う女神なんて、ここにいる優しいリンデからは想像もできない。


自転車に乗って大学まで弁当を持ってくるワルキューレってどうなの?

そのギャップに思わず顔がほころぶ。

可愛いよな・・・一生懸命自転車漕いで・・・。


俺はそんなリンデが愛しくてしかたない。

俺は多分将来、普通に人間の女性と恋をして決められたように結婚するんだと

思ってた。

まさか異世界に住んでた女性とラブラブになるなんて想像できただろうか。


全ては夢、幻じゃないんだろうか・・・?


それでもまた、いつものように、リンデがいなかったことなんかなかったように

なにも変わらない朝がやって来る。


「はい、起きて・・・」


「え〜もうちょっと寝かせてよ」


「今日は学校お休みじゃないんだよ」

「さっさと起きなさい」


でもって、いつものように顔じゅうキスの集中攻撃に合う。


「分かった、分かった・・・起きるから」


俺を起こしながらリンデが言った。


「今日もいいお天気だよ」


そう言って窓のカーテンを開けた。


窓のガラス越しに差し込む光がまぶしいったら・・・。

リンデが言った通り、今日の空は俺の心みたいに、めっちゃ快晴だった。


「今のところ、私が言ったことはなんとか守れてるみたいね」

「お利巧さんだね」


「お利口さんって・・・子供じゃあるまいし・・・」


「いいえ、セイちゃんは子供だよ」

「私がいないと何にもできないし、ひとりじゃ生きていけないんでしょ」


「そうだよ・・・君が向こうへ帰ってる時はめちゃ寂しかったんだ」


「飯食っても美味くないし、大学の講義だって頭に入らないし・・・」

「リンデが帰ってきてるんじゃないかって毎日期待して帰ってきても部屋には

誰もいないし・・・いくら見渡しても君はいないし・・・」


「たぶん、あのまま君が帰ってこなかったら、俺は今頃、干からびてるよ」

「エッチだってしたくてもできないし・・・」

「干してあるリンデのパンツに顔をうずめながら俺は泣いたよ」


「なんで、そこはパンツなのよ」

「一緒に撮ったツーショット写真とか、そう言うのあるでしょ」

「パンツって・・・」

「そんなことしてたんだ?」

「ほんとに、ほんとにおバカだね・・・」


「でも、もう心配いらないからね」


「リンデが向こうに戻ってから俺はトラウマになってるのか、時々嫌な

夢を見るんだ」

「君が絵里子みたいに置き手紙に「さよなら」って書いて、向こうの世界に

戻っちゃうって夢・・・それも嬉しそうな顔して・・・」


「あはは・・・楽しい夢だね」


「ちっとも楽しくないよ」


「夢でよかったね・・・でも私は誓って、どこにもいかないよ」

「だから安心していいからね・・・」

「セイちゃんが寂しい時や辛い時は、いつでも私が慰めてあげるから・・・」

「私は癒しの女神でもあるんだからね」


「寂しくない時でも、慰めてほしいんだけど・・・」

「ってこと、さっそく今夜あたり・・・どうでしょう?女神様」

「俺、言われたことちゃんと守ってるよ」


「ほんっとに私がいないとダメなんだね、セイちゃんは・・・」


つづく。

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