第23話:リンデが、なかなか帰ってこなかった理由。

こっちの世界にいた俺には、リンデが向こうで何をしてたか、まったく

知らなかったわけで、その理由が知りたくてリンデに聞いてみた。


そもそも皇帝の魂をヴァルハラに導くためには五人のワルキューレが揃わないと

いけないらしい。

で、向こうにいる四人のワルキューレ「アルデランス」「ルカルド」「エレンダレル」「ミスランドル」

それにリンデを加えて五人の乙女戦士。


皇帝の葬儀はおごそかに行われて皇帝の魂をヴァルハラに無事、導くことが、

できたんだそうだ・・・だけど、その式典の最中、ちょっとした邪魔が入った

らしい。

式の邪魔をしてきたのは「ヴァーラ・スキャールヴ」って言うディースの

ワルキューレ。


ワルキューレにもノルンとオルドとディースって言う三女神がいてノルンは

神オーディーンに仕えるリンデ達五人のワルキューレ。

だからリンデは俺の世界へ来るまでは戦場で倒された兵士の魂をヴァルハラ

に導いていた女神だった。


オルドのワルキューレ達は、鎧は着ず、地上に降りることなくオーディーン

の世話をしている、女神。


ディースのワルキューレ「ヴァーラ・スキャールヴ」は自分の主人を持たず

常にフリーで行動している傭兵のような存在で、いつも黒い戦闘服を身に

まとった乙女戦士の女神。

破滅と不吉の未来を予言する、人の運命に介入する役割を持つらしい。


そのヴァーラがリンデたちの邪魔をするために城に攻め込んで来たんだそうだ。

式典の最中だったので、城の防衛も緩かったため油断してる隙に城壁を

よじ登って城の中に侵入されたらしい。


ヴァーラは個人的理由では行動しないらしく、今回の式典の邪魔も誰かの

指示のもとで攻めこんで来たんでしょうってリンデが言ってた。


ヴァーラの他に傭兵が数人いたらしいが、レンデ達の活躍で彼らを追い払う

ことに成功はしたものの、その後の後始末に奔走していたため、俺のところに

帰ってくるのが遅くなったんだって。


もちろんルートガルザや他の魔法使い達の防御魔法のおかげで負傷者はひとりも

出なかったらしい。

彼らもワルキューレ以上の活躍だったようだ。


リンデはヴァーラとは度々戦場で顔を合わしていて言わばレンデのライバル兼、

宿敵みたいな存在なんだそうだ。

因縁の相手って言うのかな。

かと言って、毎回ヴァーラが敵に回るわけじゃなくて一緒に敵と戦ったことも

あるらしい。

状況によっては味方になることも敵になることもあるんだそうだ。


それが向こうでの、だいたいの出来事だったらしい。


リンデはヴァーラ達と戦っていたせいで、こっちの世界に帰ってくるのが

遅くなったみたいだ・・・。

俺のところに帰って来たくなっかったわけじゃなかったんだ。


「そうなんだ・・・大変だったね」


「ほんと・・・こっちにいたほうが戦争や小競り合いもなくて平和でいいよ」

「戦争って勝っても負けても誰かが傷つくからね・・・」


「今は、ルートガルザから預かった指輪があるから、向こうに戻れるようには

なったけど・・・やっぱり私にはもう指輪は必要ないかな・・・」

「もう向こうに戻る理由もないしね」


「でも、またワルキューレ五人、揃わないといけないような事態が起こったら、

向こうに戻らなきゃいけないんだろ?」


「そんなことはあってもずっと先のことだし、私がいないことで私の代わりになる

新しいワルキューレが生まれるかもしれないしね」


「もし、向こうが恋しくなったら時々なら里帰りしてもいいからね」

「私の居場所はセイちゃんのところだけだよ」

「これもきっと私に与えられた運命なんだって思うの・・・」

「私はこの世界でセイちゃんと巡り合うようになってんだと思うよ」

「ね、そう思わない?」


「そうだね、きっとそうだって俺も思うよ」

「だって田舎の海で、君を見つけた・・・あんな偶然ありえないもん」


「でもさ・・・向こうの世界でリンデが戦ってたなんて俺には想像できないんだ」

「陽介が女に騙されて恐喝受けた時にリンデの勇姿は見たけど、それでも多分、

あんなチンピラより向こうの敵のほうがもっと強いだろうし・・・」


「そうだね、その目で見ないと信じられないよね」

「私だって、こっちの世界にいたら、いつの間にか信じられなくなるもん」


つづく。


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