第19話:魔法使いルートガルザ。

魔法使いルートガルザとやらの使い魔の鳩が帰って行って以来なんの変化も

展開もなかった。

リンデも、そのことは一度もクチにしなかった。


そんなことも忘れかけようとした頃、俺の部屋のドアを叩いた人物がいた。


「は〜い」

「セイちゃん、誰かな?」


「ここに来るやつって言ったら大学のダチか絵里子か宅配の人くらいだろ?」

「それかリンデのファンとか・・・」


「え〜どうしよう私、サインの仕方とか練習してないし・・・」


「練習しといたほうがいいかもよ」


すると、またドアを叩く音がした。


「はいはい・・・」


リンデは恐る恐るドアを開けると、そこに昔の貴族みたいな格好をした、

男「青年」が立っていた。

俺と同じくらいの年恰好で、なかなかのイケメン君だった。

髪は真っ白で、今流行りのツーブロック・・・瞳は透き通りようなブルーだった。


その男を見たリンデが驚いた。


「ルートガルザ・・・」


「ここで何してるんですか?」


「リンデ様、お久しぶり」


「え?・・・リンデ・・・もしかして、あの鳩を送ってきた魔法使いって人?」


「そうだよ・・・」

「ルートガルザ、なんでここにいるんですか?」


「リンデ様をお迎えにあがりました」


「お迎え?」


「でも、よくここが分かりましたね」


「エルフの谷に伝わるフェルリンの鏡で、あなたの居場所を突き止めたんです」

「って言いますか、リンデ様が行方不明になられた時から探しておりました」

「リンデ様がワイズの岸壁から敵と一緒に海に落ちるところを見た者がいます」

「その後、海の中を捜索しましたがリンデ様は見つかりませんでした」

「そこで、願ったことを映すフェルリンの鏡を使って・・・」


「そうなんですね・・・」


「あ・・・セイちゃん、紹介するね」

「この人は魔法使いのルードガルザ」


「どうも・・・格式で言えばリンデ様のほうが私より上位ですけどね」


「ルートガルザは私とは幼馴染なの」

「皇帝づきの由緒ある魔法使いの家系なんだよ」


「はあ・・・どうもこんにちは・・・俺、皇 聖すめらぎ せいって言います」


「どうも・・・こんにちはスメラギ様」


「あのう、魔法使いって、もっとこう、髭なんか生やしててタブダブの衣装を

着てて木でできた杖なんか持ってるってイメージなんですけど・・・違うんですね」


「現実はイメージどおりとは限らないことのほうが多いんですよ・・・

でも、杖は持ってますよ、あいにく木ではありませんけど・・・」

私の杖は、もっとクオリティーが高いのです・・・」


そう言うとルートガルザは、一瞬で右手に杖を出した。

想像してたものと違って、杖っていうより幾何学的な飾りがついたすごく

近代的で金属かなんかでできてるような長めのスティックみたいだった。


「この杖は世界で一番硬い金属「バリステン」って素材でできてるんです」


「へ〜そうなんですね、俺のイメージも固定観念に捕らわれすぎてるんだ・・・」


「ねえルートガルザ・・・私を迎えにきたってことは向こうで何かあったん

ですか?」


「実は、皇帝がお亡くなりになられたのです」

「ですからノルンのみなさんに招集をかけて皇帝の魂をヴァルハラへと導いて

もらわねばなりません」


「ノルンのワルキューレは5人いますが、皇帝の魂は特別です。

一般の戦士の魂と違ってワルキューレ五人そろわねば導くことはできません・・・

ですから、あなたがいないと困るんです・・・」


つづく。

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