第18話:魔法使いの使い魔。

「無理なんかしてません・・・私は、まじで言ってるの・・・」


「女神ってあんまりセックスに興味ないのかと思ったよ」

「俺がしたいって言った時だけで、させてくれてるから、あんまり性欲って

ないのかなって・・・」


「人を不感症な女みたいに言わない・・・」

「女神にだってちゃんと普通に性欲はあるよ」

「それってカップルの大事なコミュニケーションでしょ」


「だね」

「俺、言われたことちゃんと守るから・・・」


一緒にいると、何かと相手のダメなところが目につくんだよね。

お互い別んところに住んでて時々会ってるほうがいいのかもな。


この狭い部屋がいけないのかな?・・・どっか広い家に引っ越したいな。


とまあ、そんなラブラブな毎日なんです。


ところがまた何かトラブルめいたことが起ころうとしてたんだな。

今度は、陽介の女とのトラブルなんかとは比べ物にならないことだった。


最近、近所の猫に盛りがついて夜中にワーオ、ワーオうるさいんだ。

夜だけじゃなく、昼もワーオ、ワーオってやってる。


俺のアパートの窓の外は、すぐ隣の屋根があって猫は、そこで盛んに発情

してるんだ。

あまりにうるさいから、ちょっと、猫ちゃんに文句言ってやろうと思って

窓を開けたんだな。

そしたら、いきなり何かが部屋に飛び込んできたんだ。


びっくりして部屋の中を見たら、それは一羽の白い鳩だった。

あ〜鳩が迷い込んできたんだと思って、つかまえて外に追い出そうとしたら、

リンデが、その状況を見てて鳩を追い出そうとしてる俺を止めた。


「セイちゃん・・・待って」

「その鳩・・・ファミリアだよ」


「ファミリアって?・・・なに?」


「使い魔のこと」


「この鳩はたぶん、魔法使いルートガルザの使い魔だよ」


「さっぱり分かんないんだけど・・・」


「きっとルートガルザが私を見つけて使い魔をこの世界に寄越したんだね・・・」


「ますます分からんけど・・・」

「え?・・・、それってなんのために?」


「考えられることは、この世界にいる私を連れ戻すため・・・」


よく見ると鳩はクチに指輪らしきものを咥えていた。

その指輪を鳩はリンデの前に落とした。


「この指輪・・・ドワーフのヴェラナイトの指輪だ」


「さらに輪をかけて、分かんないんだけど・・・」


「この指輪を持ってたらね、次元や時空を超えることができるの」

「たとえば、私がこの指輪を持つと、向こうの世界に戻れるんだよ 」


「え?・・・まじで・・・戻っちゃうの?」


「まさか・・・そんなことしないよ」

「私はセイちゃんとひとつになったんだもん」

「でもルートガルデが、この指輪を送ってきたってことは私に戻れってこと

なんだと思うの 」

「でも心配しないで、なにがあっても私は向こうには戻らないから」


ヴェラナイトとかって指輪を使えばリンデは向こうに戻れるってことなんだ。

そうか・・・とうとう、恐れていたことが起こったのか・・・。


「俺はリンデにいつまでも俺と一緒にいてほしいって思ってるけど」

「向こうへ戻ることがリンデの望んでることなら俺は無理には止めないよ」

「俺のエゴでリンデを束縛したくないから・・・」

「これは最初にリンデと出会ったときに覚悟してたことだからね・・・」


「だから〜、私は戻らない・・・ずっとセイちゃんと一緒にいるの」


「せっかくルートガルザが送ってくれた指輪だけど今の私には必要ないもの」


そう言ってリンデは手にした指輪を、俺の机の引き出しにしまった。


つづく。

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