第15話:ノルンのワルキューレ。

俺たちは倉庫の勝手口から、恐る恐る中に入った。


「誰かいる?」


絵里子が言った。


「おい、こっちだ・・・待たせやがって・・・」


見ると女ひとりと男が五人ばかり・・・間抜けヅラした胡散臭そうな男達だった。

女は陽介を手玉に取った女だろう。


「あれ・・・ひとりで来いって言ってあったろう」

「なんか、おまけを連れてきやがって・・・」


「だれだ、そいつら・・・関係ねえやつは帰れ、邪魔だ」


「あんた達・・・陽介を騙して、なに考えてるのよ・・・」


「おまえだれだ・・・」


「陽介の姉だよ」


「へへ・・・ひとりで来れないから姉ちゃんに一緒に来てもらったのか?」


「俺は・・・その女に騙されたんだ・・・」


陽介が言った。


「バーカ・・・世の中、騙されるほうが悪いんだよ」

「出会い系になんか首をつっこむから、こういうことになるんだよ」

「自業自得ってやつだな」

「それより金は持って来たんだろうな」


「そんなもん、ないよ」


「なんだと・・・じゃ〜出るところに出るか・・・まあ、婦女暴行だな」

「俺の女が、訴えたらおまえ、おしまいだぞ」

「ついでにネットにもバラまいてやるよ・・・とっておきの動画があるからな」


「もう、そのくらいでいいでしょ」

「あなたたち、今おとなしく帰ったら何もなかったことにしてあげます」


リンデがそう言って俺たちの前に出た。

俺はと言えば・・・何もできない訳で・・・情けないったら・・・。


「なんだ、姉ちゃん・・・偉そうに・・・」


「退散しないと後悔しますよ」


「女だからって舐めてたら容赦しねえぞ」


「そうですか・・・じゃあ」


そう言うとリンデの服は、見る間に田舎の家を出る時と同じ戦闘服に変わって

いった。


その光景を俺ははじめてみた。

胡散臭くさそうな男たちも絵里子も陽介も、そして俺もあっけに取られて

ただただその様子を見ていた。


一瞬、リンデが、光はじめたように見えたと思ったら空間から粒子の粒が、

キラキラ輝きながらリンデを包み込んでいった。


粒子の粒が徐々に形になって、そしてあの戦闘服に変わった。


それは中世ヨーロッパの女性のロングスカートの衣装に胸や肩や腕に金属の

防具がきらびやかについていた。

そして彼女の背中にはリンデが言ってたブリュストメイデンって剣が背負われて

いた。


お〜めっちゃ凛々しいじゃん・・・俺の彼女。

まさに、あれがワルキューレだよ。

田舎で、最初この格好を見たときはちょっと引いたけど、今は違う。


鳥肌が立ちまくりだもん。

なんかその神々しい姿を見たら俺は自然と涙がこぼれた。


「なんだ、おまえ・・・おまえ、誰だ」


胡散くさい男が言った。


「私はノルンのワルキューレの一人、リンデブルグ・シュタールエックです」


「なんだこの女、頭がおかしいんじゃねえのか?」

「へんな格好しやがって」


「あなたたちにはブリュストメイデンを使うこともありません」

「そこにある箱・・・」


そう言ってリンデは胡散臭い男の右横に積み重ねてあるダンボールを指さした。


「セイちゃん・・・あの箱なんて言うの?」


「あ〜ダンボールだよ」


「そう、そのダンボール?・・・よく見てなさい」


そう言うとリンデは右腕を前に差し出すとダンボールめがけて衝撃弾?

みたいなものを発射した。

あれがブレードリングとやらなんだろう。

リンデの手から光の玉が現れると、めちゃ早いスピードでダンボールに

向かって飛んで行った。


つづく。


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