第12話:リンデの自転車。

「歩いて?・・・そんなのんびりしてたら昼までに間に合わないよ」


「そうだな、バイクは買ってもリンデが免許持ってないと始まらないから

自転車・・・新車は買ってあげられないけど中古の自転車でよかったら買って

あげるけど・・・」


「自転車?・・・ってなに?」


「自転車っていうのはね・・・」

「ああ〜説明するより行ったほうが早いか」

「ん〜とりあえず自転車屋さんへ行こう」


俺はリンデを連れて近所の自転車屋さんへ出かけた。


「あの、こんにちは・・・」

「こ〜んにちわ〜、お邪魔します〜・・・誰かいます?」


「はいはい・・・」


奥から出てきたのは、たぶん自転車屋さんの店長さん。

俺の親父くらいのそこそこのお年寄り。


「悪いね、耳が遠くて・・・」


「あの、中古でいいんですけど、自転車あります?」


「中古?・・・う〜んと・・・奥にあると思うけど、ちょっと待ちなよ」


って、おじさんは奥からホコリにまみれた自転車を持って出てきた。


「これなら二千円でいいや」


「は〜・・・これ?、あのママチャリはないの?おじさん」


「品切れだね」


「リンデ・・この自転車でどう?」


「それが自転車?」


「そう自転車」


「・・・よく分かんない」


「だよね・・・」


「おじさん、これでいいわ」


それは、ママチャリじゃなくクロスバイクって言って、ちょっとスポーティーな

自転車だった。

真っ白なクロスバイク。

ってことでママチャリがないから、その自転車を二千円で買って帰った。


おじさんは自転車を綺麗に掃除してくれて油をさしてくれた。

でもって余ってるからっていかにも安そうなヘルメットをサービスだって

プレゼントしてくれた。


で、アパートの前の道路で特訓じゃ。

俺が試しに乗ってみて見本を見せる・・・でリンデが乗って俺が後ろから

バックアップする。


「がんばってバランス取りながら、ペダル漕いで・・・」


「え〜怖いよ〜」


「ワルキューレなんだろ?」

「自転車ごとき屁でもないだろ?」


ワーワーキャーキャー言いながらリンデは自転車を習得していった。


案外ママチャリじゃなくてよかったかも。

クロスバイクにまたがるリンデは、めちゃカッコよかった。

それにママチャリと違って変速機がついてるから坂があっても平気だ。


ただ頭がキノコみたいになるのが嫌だってヘルメットだけは被るのを渋った。

外人さんがクロスバイクに乗って流線型のヘルメット被ってたら・・・絶対、

その手の人たちと間違われるよな。


それから完全に自転車をマスターしたリンデはルンルン気分で弁当を持って

大学までやってくるようになった。

リンデが弁当を持って来るようになってから、ダチや他の野郎どもがリンデ

目当てに集まって来るようになった。


キラキラ光る汗をかいて息を切らしてやってくるリンデに、みんな癒された。

俺の女神様は、これ以上ないくらい眩しく輝いていた。


たぶん俺は何人かの男にネタまれているだろうな。


あ、そうそう弁当の話をしてた日の夜だけど、一応報告しときます。

俺は、めでたくリンデと結ばれました。

最高の夜でした・・・それはもう言葉にできないほど、死んでもいいほど。

女神様最高。


つづく。

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