第10話:元カノ。

俺がトイレから出るなり、俺を見た絵里子が言った。


「セイちゃん・・誰?この子・・・」


「エロ子・・・・何しに来た?」


「誰がエロ子だよ・・・絵里子だよ、バーカ」


「その絵里子さんが何をしに来たんでしょうか?」


「いや、セイちゃん、どうしてるかと思って・・・近所まで来たから・・・」


「まさかよりを戻したくて来たわけじゃないよな・・・」


「まさか・・・」

「私も、勢い余って、さよならだけ書いて出てっちゃったからセイちゃんに

悪いことしたって思ってるんだよ・・・」

「でも、もうよりを戻そうって気はないから・・・」

「もし、元にもどってもまた同じことの繰り返しでしょ」

「ほんとに近所通ったから、どうしてるかなって思って覗いてみただけ」


「ごめんね・・・セイちゃん、勝手に出で行っといて勝手にまた来ちゃって・・・怒ってる?」


「出てった直後は地球を爆発してやろうかって思ったけど・・・もういいよ」

「全部、リンデが癒してくれたから・・・」


「彼女、リンデさんって言うんだ」

「その子が出てきたからびっくりしたわよ」

「様子見に寄ってみたら、こんな綺麗な外人さんがいるんだもんね・・・」

「私と別れてまだ、いくらも経ってないんだよ」

「なのにもう部屋に女の子連れ込んで、セイちゃんも隅に置けないね」


「あ・・・いやこれには深いわけが・・・」


「さぞかし深いわけがあるんでしょうね」


絵里子に話す義理はなかったけど、俺はリンデと出会った経緯を彼女に話して

聞かせた。


「すっごい作り話・・・もっと簡単に街でナンパしたって言ってくれたら信じて

あげたのに」


「信じなくていいよ」

「とにかく、もう絵里子とは関係ないから信じてくれなくてもいいよ」


「・・・信じるよ」

「でもさ、私たちこのまま永遠のお別れなんてのも寂しいじゃん」


「今更、何言ってるんだよ・・・」


「セイちゃんは、このままこの彼女と仲良くやればいいよ」

「私とは、改めて普通に友達として付き合って・・・いいでしょ」

「セイちゃんのこと嫌いじゃないし・・・気にもなるしね」


「別れた女と、どのツラ下げて友達でいようなんて言えるんだよ」


「そんなに冷たくしなくていいでしょ」

「お互いもう傷つけ合うのはよそうよ」


「彼女さん・・・リンデさん?、ほんとにその、あなた女神様なの?」


「そうですよ・・・」


「まだ信じられないけど・・・」

「私が言うセリフじゃないかもしれないけどセイちゃんのことよろしくね」


「はい・・・絵里子さん、ありがとうございます」


「また来るから、仲良くしてやってね」


「はい・・・お友達ですね」


「セイちゃん・・・めっちゃいい子じゃん」


「あんたにはもったいないかもね・・・」

「今度は,フラれないようにしなよ」


「フラれるって言うか・・俺たちの関係は彼女が自分の世界に帰るまでの間だよ」


「まあ、いんじゃない?その間だけかもしれないけど彼女大事にしてあげなよ」

「じゃ〜ね、バイ・・・」


そう言って絵里子は帰って行った。


「セイちゃん・・・せっかく訪ねてきてくれたのにもっと優しくしてあげれば

よかったのに・・・」


「なかなか、そんなに素直にはなれないよ」

「こういうことは時間が必要なんだよ」


「デート、出そびれちゃったね・・・」


「そうだな、また今度、遊びに行こう・・・あ〜あ、なんだかな・・・」


「リンデ・・・あの・・・ハグして」


「はいはい・・・」

「寂しいんでしょ・・・分かるよ、私には・・・セイちゃんの気持ち」


女神様の体は暖かくて柔らかで優しくて、めっちゃいい匂いがした。


つづく。

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