第7話:大胆で無防備な女神。

俺は飛び上がるほど嬉しかった。

まだはっきりしなかったリンデへの思いが、これではっきりした気がした。

俺は彼女が必要なんだ・・・・俺は・・・彼女にリンデに恋してるんだ。


とは言え、いつ彼女が向こうへ帰りたいって言い出すか分からない。

月日が経てば別れた元カノみたいに当然、さよならって出て行くかも

しれないし・・・。


彼女を返したくないって思いは、それこそ俺の自分の勝手な彼女への束縛に

他ならない。

それが、少しだけ俺を自己嫌悪に陥らせた。


俺の欲が彼女をここに留まらせる結果になったことは確かなんだろう。

彼女は優しいから俺の想いを無視したりはしなかった。


やっぱり俺の彼女は女神様だよ・・・心に一切の曇りのない乙女戦士だ。


そうしてリンデとの生活が始まったわけだけど・・・。

リンデは自分の私服を変えることなく、ずっと同じものを着ていた。


やっぱりこの世界で生きてくのは、この世界の服を着せたほうがよかないか?


「リンデ・・・服を買いに行こう」

「他にも、生活必需品いるし・・・」

「現実問題、歯ブラシだって、タオルだって、茶碗や箸だっているだろう?」


「服なら自分で出せるけど・・・」


「それのことなんだけどさ、その出してくるって衣装なんだけどどこから出して

るの?」


「私の衣装は普段は分子レベルに分解された状態で空中に浮遊してて常に私の

周りにあって私が呼び出せば結合して瞬時に現れるんだよ」


「ああ・・・そうなんだ、一応科学的なんだね」

「そんな技術も持ってるんだ」

「いや、俺的にはその中世ふうな衣装、気にいってるんだけど」

「やっぱりここで暮らすんなら、この世界らしい格好してたほうがいいと思う

んだけど・・・」


「そうなの?」


「それにさ・・それに下着だって替えがいるだろ?」


「下着って?・・・」


「だから・・・下着・・・パンツだよ」


「下着は知ってますけど・・・そんなもの履かないよ」


「うそ・・・履かないって?」

「え?だったら今も履いてないとか?」


「うん・・・履いてないよ」


そう言うとリンデは、思い切りスカートをめくった。


「ほら」


「俺は目が飛び出しそうになった」


「やめろって・・・いいから、スカートおろして」

「ま、まじで焦ったわ・・・」


大胆って言うか、無防備って言うか・・・ほんとに女神なのか?

およそこれが女神?って思うようなことを平気でするリンデ。

まあ、たまのボケとのギャップも可愛いかったりするんだけど・・・。


俺に彼女ができたはいいけど、元カノと違ってリンデは働いてないわけで、

生活費は全部俺の肩にのしかかってくる。


リンデは当然、こっちの世界では何も分からないわけで働くなんてこと無理

だろうから俺ががんばって稼ぐしかない。


俺はバイトを増やすことにした。

一人分余計に稼がないと、たちまち立ち行かない。


彼女ができて悪い気持ちじゃないけど現実は喜んでばかりもいられない。


だからって早くリンデが向こうに帰る方法見つけて帰ってほしいとは思わない

わけで・・・。

とにかくリンデが俺の彼女じゃなかったとしてもリンデが家にいるだけでお俺の

生活にハリが出るのは確かなことなんだ。


次の日、俺は大学に行かなきゃならくて、リンデ一人部屋に残して出かけるのは

まだ心配だったから彼女を連れて大学へ行った。


「そのうち着るものも買ってあげるから・・・大学からの帰りに、とりあえず

生活に必要なものだけ買って帰ろう」


「お手数おかけするね・・・セイちゃん」


「そんなの彼氏としてあたり前のことだよ」


ってことで俺たちは大学へでかけた。

ホームで電車を待ってる間、リンデは俺とずっと手をつないでいた。

なんか、俺はそれが当たり前のような顔をしていたが内心はめちゃ嬉しかった

わけで・・・素直に嬉しいって言えばいいのに、カッコつけて何も言わない。

それがいけないんだろうな。


もっとリンデに素直にならなきゃ・・・。


「これ田舎からこっちへ帰って来る時にも乗っただろ」


「電車って言うんだよね」


「向こうの世界じゃ、移動になに使ってたの?」


「馬だよ・・・」


「あ・・・そうか馬ね・・・」


「そこは車とかじゃないんだ」

「文明が発達した世界にいると、つい機械を想像しちゃうよ」

「俺たちはもう機械に頼らないと生きられなくなってるんだな」


「それは分かるような気がする・・・」

「でも私の世界では機械に頼らない人もたくさんいるよ」

「たとえば、魔法使いや戦士の中には宙を浮遊して低空で移動する人もいるし」


「お〜ますますファンタジーっぽい世界じゃん」


「私もできるけど・・・」


つづく。


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