第4話:私、あなたの彼氏になっても。

「親父・・・おふくろ、世話かけたね」

「俺、この人連れて帰るから・・・」


「お前、見ず知らずの女性に手を出すなよ」


「バカ親父・・・何言ってんだよ」

「な、ことするわけないだろう〜が・・・」


「いや、俺のせがれだからな・・・魔が差すってこともあるからな・・・」


「そんなことしたら俺は彼女が背負ってる剣で串刺しにされるよ・・・」


そんなアホなやりとりをしてる間にリンデは衣装を着替えていた。

ってより、一瞬にして戦闘服からヨーロッパふうな衣装に変わっていた。


俺は両親に別れを言ってリンデを連れて田舎の無人駅に向かった。

リンデの衣装は、この世界には似つかわしくなかったけど、でも俺には以外と

これが新鮮でよかった。


中世のヨーロッパの衣装も、それはそれでいいもんだなって思った。

でもやっぱり、郷に行っては郷に従えって言うじゃん。

アパートに帰ったら彼女のリンデの服は必要だなって思った。


「これから、どこへ行くんですか?」


「俺のアパート・・・って言っただろ・・・汚ったねえところだけど、

自分で他に行くところがないって言ったじゃんか」

「俺だって、面倒はしょいこみたくないんだけどさ・・・君を放っては

おけないから・・・」


「ごめんなさい・・・」


「謝らなくていいよ・・・どうしても嫌ってわけじゃないから」

「それに冗談だけどさ・・・俺に新しい彼女ができたって思えば楽しいじゃん」

「あ、あくまで冗談だからね・・・」


「そんなこと言ったからって、背中の剣で俺を叩き切らないでよ」


「いいです・・・私、あなたの彼女になってもいいです・・・」

「助けてもらったお礼しなくちゃ・・・」


「あのね、彼女なんてそんに簡単になっちゃダメだよ」

「それに、お礼だなんてそんなに気、使わなくていいから」


「私、あなたになんのお礼もできなし、あげるものもないから・・・」


「だからいいよ、そんなこと」


「あ、そうだ・・・あなたのお名前?」

「まだ聞いてませんでした」


「あ〜俺?・・・俺は「皇 聖すめらぎ せい


「セイって呼んでくれていいから」


「わかりました・・・セイさん」


「セイでいいよ・・・大学のダチや、みんなからはセイちゃんって呼ばれてるけど」


「じゃ〜私もセイちゃんってお呼びします」


そうこうしてるうちに電車がホームに入ってきた。

彼女は電車に乗ると、なにもかも珍しいのか終始キョロキョロしていた。


「そんなにキョロキョロしない」


「ここが珍しくて・・・それに私、もう2度と自分の世界には帰れないかも

しれないでしょ」

「だから、この世界について、いろいろ覚えなくちゃけないと思って・・・」


「そうか、俺にとってもリンデが帰る方法を見つけてくれないと困るし」

「来た道をたどって帰るとか?」


「それは無理です」


彼女の話をよく聞いてみたところまあ、帰るのは無理って分かった。


彼女の世界で起きた週末戦争の時、彼女はワルキューレとして敵に倒された

味方の兵士の魂をヴァルハラってところに導くために戦場にいたんだそうだ。

そこで手傷を負った味方の兵士を助けようとして、敵の攻撃を受けてワルズって

岸壁から海に落ちた・・・そこまでは記憶にあるらしい。


で、気が付いたら、知らない家に・・・つまり俺の田舎の家で目が覚めた。

ってそういうことらしい。


リンデがこっちの世界に来たのは海から落ちた衝撃によるものだったんだ。


つづく。


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