第2話:そして新たな出会い。

「お・・・息してる・・・よかった、生きてるよ・・・」

「それにしても綺麗な顔つきだな」


その女性は、ほんとにラブドールみたいな、超べっぴんさんだった。


可愛い唇を見てると、どさくさに紛れてチューしたくなった。

俺はなんだか、この状況にドキドキしてきた。

普通、ありえないシュチュエーションじゃないか・・・。


俺は彼女を押したり揺すったりしてみただけど起きなかった。

生きてるんじゃほうっていけないよな。


しかたなく俺は彼女をお姫様抱っこして、家に連れて帰った。

重くて腰が砕けそうだった。


俺が女なんか連れて帰ったもんだから、親父とお袋が驚いた。


「お前、どこでその裸の女なんか拾ってきたんだ?」


「海だよ・・・砂浜に流れ着いてたんだ・・・ほっておけないだろ・・・」


ってわけで、彼女は俺の家で俺たちの献身的介護もあって意識をとりもどした。


改めて彼女を見ると髪はほとんど白に近い金髪、肌は白くって瞳の色は

グリーン・・・外人にしては、さほど彫りも深くなくて、年の頃なら・・・

分からないけど、俺くらいか?


お袋が俺が持ってきてた着替えの服を彼女に着せてくれた。


でも次の日、彼女は俺の服でもおふくろの服でもない衣装を身にまとっていた。

中世のヨーロッパの衣装みたいだった。


それから何を聞いても、彼女はひとこともしゃべらず、しばらくは、ただ放心

したみたいにボーッとしていた。


彼女がようやくしゃべったのは、お袋が夕飯に作った豚汁を食べた時だった。


「美味しい・・・これ、すごく美味しいです」


「そう気に入ったのなら、たくさん食べなさい」


初めてしゃべった彼女を見て俺は驚いた。


「今、はじめてしゃべったよね・・・」

「しかも、ちゃんと日本語しゃべってるし・・・」


「私バイリンガルですから・・・」


「あの、お礼が遅れて、ごめんなさい・・・」

「私を救ってくださってありがとうございました」


「ああ、無事でなによりだったよ」

「元気になって君の家に戻れるまでここにいていいから」

「俺もいっしょにいてあげるからさ・・・」


「ありがとうございます・・・」


「いいんだよ・・・それよりその君が着てる衣装だけど、どこから持ってきたの?」


「普通に出せますけど・・・」

「この衣装は私の普段着ですよ」

「それから、お借りした服は私には合いませんからたたんでおきました」


「出せるって・・・え?魔法みたいに?」


「そうですよ・・・」


「そんなことできるんだ・・・」


そんなことできるって彼女はマジシャンか魔法使いか?って俺は思った。

でも魔法使いなんてファンタジーの中だけの話だろ・・・。


それ以降も、彼女は自分のことついてあまり喋ろうとしなかった。


いつでも障子戸を開くと穏やかな顔をして、縁側から遠くの山を眺めていた。

風になびく金髪のシルクのような長い髪・・・逆光を浴びたその姿はまるで

天使か女神みたいだった。


俺はここに彼女を置いて置くわけにもいかず、田舎の警察に彼女の身柄を

預けようと派出所に頼みに行ったんだけど結局、彼女のことは何もわからず、

警察で引き取るわけにはいなかいのでそちらで面倒みてくれって言われた。


行方不明者とかって年間にどのくらい、いるんだろう。

警察も忙しくて少しでも面倒をしょいこみたくないんだろう。


「お前、あの女をここに置いていかれても困るけん、おまえのアパートに

連れて帰ってくれ」


親父にもそう言われた。


で、彼女を親父とお袋に押し付けるわけにもいかず、俺は俺のアパートに

彼女を連れて帰ることにした。


海岸で拾ったものが人間じゃなかったら粗大ゴミに出してそれで終わり

なんだけど生き物となると、放っておくわけにはいかないだろ。


つづく。

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