第4話 失踪

君と出会ってから1年がたった。

君がくるのは大抵夕焼けが綺麗になる頃だ。

僕は心を踊らせる。

――あ、いた。

今日も君が来てくれた。

弾むように君のもとへ向かう。

君は、泣いていた。

人目もはばからず、声を上げて。

今まで誰とも接してこなかっただろうか。

僕は何も出来なかった。

ただただそばにしかいれなかった。

君は普段よりずっと長くここを動かなかった。

そして、なにか一言言ってから、君は姿を消した。


夏も盛りをすぎ、ひまわりがし折れてきた。

舞う花びらが夕日に照らされる。

おかしい。

君が、こない。

いつもなら2人で笑いあっているのに。

僕が、何かしただろうか。

唯一の味方が消えたみたいで、すごく、怖い。

最悪の選択肢を頭の中から消す。

今日は、事情があったのかもしれない。

少し、怪我をしちゃったのかもしれない。

明日になったら、君が微笑んでくれると信じて、

僕は満月をみあげる。

頬をつたう涙がきらりと輝いた。

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