第三十二話 ピカピカの1年生




       〜王立学園〜

     〜時は遡り入学式当日〜



入学式典も終わり男子寮女子寮に別れて荷解きをしていた。

部屋は2人一部屋で結構広く使える。


「僕はプロキオン・コルネフォロス。宜しくね」


「ぼ、僕はニハル…コーリン村出身で貴族じゃないから…氏は無い…です」


「ニハル君だね。宜しく!仲良くしようね!」


「う、うん!」


そこへ上級生達が各部屋1名づつ指導役としてやって来た。


「プロキオン君とニハル君だね?俺はカウスアウストラス・ピーコック。五年生で君達の指導役だ。よろしく」


「カ、カストル侯爵の!?」


「あははは、学生は身分を撤廃されるから気にしちゃ駄目だよ。それに僕は三男だし家は継がないからね。それより君達に学園の施設や授業割りについて色々おしえるね。ついて来て」


カウスアウストラスさんに色々施設や学園のシステムを教わった。


「カウスアウストラスさんは魔法科なんですか?」


「名前長ったらしいだろ?カウスでいいよ。僕は政治経済科だね。魔法も剣術もからっきしでさぁ。将来は城で官史になろうと思ってね。幸い算術は得意なんだ」




     〜時同じくして女子寮〜



「ねえ…メイサ。部屋割でなにか陛下に言ったの?私達偶然相部屋になるなんておかしくない…?」


「おかしくなんかないわよ当然でしょ!スピカがアタシと居ないで誰と居るのよ!それにどこの誰だか分からない子と何で一緒の部屋で住まなきゃいけないのよ!」


「お、落ち着いてメイサ…余り権力使うのは良くないっていうか…」


「これ位良いじゃない!それにこれっきりよ!学園の生徒は立場や身分を持ち出すのは禁止されてるのよ!」


「そ、それなら良かった。けどこんなに広い部屋…」


「だからスピカと相部屋なんじゃない!他の子じゃ荷が重いわ!」


「まあ、色々な意味で荷が重いかも…」


(コンコンッ)


「入るわよー。君たちがスピカさんとメイサ……さんね。私は君達の指導役で五年のミモザ・ムリフェイン宜しくね」


「ミモザ!お久しぶり!」


「メイサのお知り合い?」


「ミモザはギェナー・デ・サダクビア・ベネトナシュ・ムリフェイン公爵の令嬢よ」


「お、王族?」


「再従姉妹よ。じゃなきゃ他の子なんてすぐ萎縮して私の指導役とかやってくれないわよ!」


「あははは、た、確かに…」


「てかミモザったら何よ!メイサさんとか言っちゃってー他人行儀ったらありゃしないわ!」


「だってそういうルールなんだもん。まあ元気そうで何よりよ。スピカちゃん大変だろうけどメイサの事宜しくね」


「何よ大変ってー!馬鹿にするんじゃ無いわよー!良いから早く学園案内しなさいよー!」


「はいはい、じゃあ行くわよー」


「私…五年間やっていけるかな……」




「まあこんなところかな〜。何か分からない事とか有る?」


「有難う御座いますミモザさん」


「ミモザってたしか魔法科よね?卒業までどの位習得しするものなの?」


「う〜ん1年間で魔法1個位かな?魔法科なら学年に上がる度に実技で1個は使って見せないと落第だからね〜」


「落第って留年ですか?」


「そう、だから卒業までに最低でも5、6個は覚える事になるかなぁ」


「メイサとスピカちゃんは今どれくらい使えるの?」


「アタシは2個!フレイムバーストとライトアローね」


「なんで先にファイアーボールとライトボール覚えないのよ。しかも攻撃魔法だけ…」


「私は…ダークシールドとダークウォールとダークバイト。あと簡単な魔法陣や術式を何個か…今は反転魔術を勉強してます」


「スピカちゃんこんなに可愛いのに闇魔法なんだ珍しいー!習得数も凄いけどバランスが良すぎる!もう卒業出来ちゃうじゃない!将来宮廷魔道士団から就職のスカウト間違いなしよ!」


「当たり前よ!なんたってアタシの友達なんだからコレ位出来なきゃ困るわ!」


「なんであなたが自慢げなのよ…そしてあなたは留年する気がするわ…」


「アナタこそどうなのよ!どれだけ習得したってのよ!」


「フッフッフ…見くびらないで頂戴メイサ!私はファイアボール、ライトボール、ファイアシールド、ライトシールド、ライトヒール。5つ習得済みよ」


「アンタ完全に単位だけの為に覚えたでしょ…」


(光の加護が…勿体無い…)



翌日

「ちょっとプロキオン!遅いのよ!」


「ごめん、寝坊しちゃって…」


「授業始まっちゃうじゃない!それ、その子は?」


「僕の相部屋でニハル君だよ。仲良くしてあげてね」


「あ、コーリン村のニ、ニハルです。宜しく…です」


「私はスピカ、こっちはメイサよ。宜しくね」


「それより授業始まっちゃうじゃない!行きましょ!」


授業初日の1時限目はホームルームで皆の自己紹介だった。

席は自由だったが、しかし…


「ね、ねえメイサ何で一番前のど真ん中選んだの?もっと後ろでも良かったんじゃ…」


「何よー!特等席じゃないのよー!」


「ニハル君が萎縮しちゃってるよ…」


その後は何だかんだで皆で昼食を取ることにした。


「ねえニハル、アンタ何でそんなビクビクしてるのよ!もっとシャキッとしなさいよシャキッとー!」


「メイサ、そんな言い方したら逆効果だよ」


「むぅ…わ、悪かったわよ…」


「だ、だって僕は…へ、平民だし…それに…王女殿下と同じクラスだなんて…」


「アンタねえ、ここじゃ身分なんて関係ないのよ!それに平民で魔法科に来る位なんだから魔法得意なんじゃないの!?」


「そうだよニハル君は試験にしっかり受かってここに居るんだよ。もっと自身持って良いと思うよ」


「うんうん、ニハル君は何の加護を受けてるの?」


「ぼ、僕は…変なギフテッドで……」


「変?」


「でも凄いよギフテッドなんて」


「ぼ、僕の加護は…風と……土なんだ」


「!?」


あり得ない…反属性だけでもあり得ないのにのギフトで反属性だなんて。


「どういう事よ!詳しく教えなさいよ!」


ニハルは元々双子だったのだそうだ。

しかし母親の妊娠初期に1人を流産をしたのだそう。ニハルは無事母体に留まってその後順調に生まれたのだと。想像の域を出ないが、恐らく流産した方の器がニハルに移ったと考えるのが自然だろうと言う見解だった。


「成る程ねえ、でも凄い事だよね。反属性なんて聞いたこともないよ。光属性より希少じゃないのかな!」


「ぼ、僕の両親はきっと何か意味があるのだろうって。それで学園に…」


「私もそう思うな。ニハル君の力には何か意味があるのよ。全然変では無いと思うよ」


「ニハル!アタシの家来……友達になんなさい!」


「ニハル君、こ、断っても良いんだからね!!」


「そ、そうよ無理しちゃ駄目よ!」


「何なのよアンタ達ー!折角アタシが友達になってあげるって言ってるんでしょうがー!」


「だ、だってメイサは乱暴だから」


「誰が乱暴よー!いい加減にしなさいよ!大体アンタ達だって」


「メ、メイサ落ち着いて」


「い、良いのかな…僕なんか」


「アタシが良いって言ってるんだから良いのよ!それとも何よ、アタシじゃ不満なわけー!?」


「そ、そんな事ないよ。じゃあ…よ、宜しく…メイサ様」


「宜しくニハル。それと様とか要らないから!分かったわね!」


「は…あ、うん…ありがとう、メ…メイサ」


そんな感じでメイサが目立っていると…



「おい、ニハルじゃないか?」


「お前平民のクセに何でメイサ様と食事なんかしてるんだ?」


ヤバイ……荒れそうだ…


「アンタ達何よ」


「こ、これはこれはメイサ様、ご冗談を。私は…」


「アンタの事なんか聞いて無いわよ!アタシの友達になにか用でも有るのか聞いてるのよ!」


「う…、メ、メイサ様、御学友はしっかりお選びになった方が宜しいかと」


「しっかり選んでるわよ!失礼ねー!だからアンタ達を選んでないんでしょー!」




「プッ……あはははははははははははは」


食堂は一気に大爆笑の渦に包まれた。

その後その貴族の馬鹿息子達は恥ずかしそうに退散していった。





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