第二十八話 志と盟友1
俺達は星詠の森から王都へ帰還した。
家へ帰り母上を見た瞬間、あんなに我慢出来てたハズの涙が溢れて人目も憚らずに大泣きしてしまった。プロキオンも泣いていた。
母上は何も言わずに温かく受け入れてくれた。
その後、自室に入りまた泣いた。
昔から簡単に泣くタイプじゃないのに、何故こんなに涙が溢れるのか自分でも不思議だった。
何もやる気が起きなかった。
けどこのままじゃイケないと思い気晴らしに装備も持たずに街中を彷徨いていたが、気分が晴れることはなかった。
知らないうちにギルドへと足が向いていた。
ギルドには着いたが入る気がしなかったのでそのまま歩き続ける事にした。
結局宛もなく歩き続けているとコルが居て飯でも食おうと誘われた。
ダビーとカラも食堂に居た。
皆で飯を食うことになったが腹は空いていない。
するとダビーがシルマの事を話す。
悪魔騒ぎの犯人はシルマの兄、マタルだった事。
マタルはシルマを失うのが嫌で悪魔…魔族を召喚してその騒ぎで儀式を出来ないようにしようとしたらしい。
「やった事は最悪だが、マタルもお前と同じ気持ちだったんだろうぜ」
「なあシリウス、他の国や地域には俺達の物差しじゃ計れないような風習や文化が沢山有る。そしてそいつ等からしたら俺達だって同じ様に見られてるかも知れない。けどそんな風習や文化や伝統と言われるものを、はたして俺達、外部の人間が壊して良いものなのかな?」
「奴隷問題だってそうだぜ」
「奴隷?」
「ああ、俺達が今何不自由無く暮らしてるのは何でだと思う?」
「………」
「俺達みたいな国があって、奴隷使う国があって、そのどっちつかずの国があって、そんな色々な国の微妙な関係で経済ってのは成り立ってる。バランス取り合ってんだよ」
「シルマさんもそうよ」
「シルマが?」
「彼女は星の神子としてこの世界のバランスと秩序に安定をもたらす存在だったでしょう。悲しい事だけど、彼女は立派だわ。そんな彼女の勇気のお陰でこの世界も成り立っているのね」
「彼女の決意を無駄にしない手はないと思うぞ」
「決意……」
「よし、あそこ行くか!今日は俺が奢る」
「げぇ…まさか…」
〜パブ・ブルーオイスター〜
「あら〜!いらっしゃ〜い」
「邪魔するぞ」
「ヤングマンはエビバデウェルカムよ〜!」
「取り敢えず酒頼む!」
「かしこまり〜、坊っちゃんどうする〜?あら、元気ないわねぇ〜!可愛い顔が台無しじゃな〜い」
「ちょっと…色々あって…」
「な〜にそれ〜、健全な青少年の思春期的な〜?」
良くわからないけど、何故かメローペさんに事の経緯を話した。
メローペさんは真剣に聞いてくれた。
「ねえシリウス、それって難しい問題よね。だから子供じゃなく、貴方を男として話しさせてもらうわね。先ず、結局どうしたかったの?」
「俺はシルマに…犠牲になってほしくなかった」
「そっか。じゃあどうすればシルマが救えたと思う?」
「俺がもっと強ければ…」
「強くなってどうするのよ。まさかその村を焼き払って無かった事にするなんて言わないわよねぇ?」
「それは…」
「向うには向こうの言い分があったのよ?それを変える力が貴方の言う力には有るの?」
「もし本気で変えたいなら偉くなんなさい。偉くなって国を変えなさいよ」
「でも俺は勉強も出ないし、偉くも…」
「なら夢を叶えてくれる偉い人に貴方の力を使いなさいよ〜」
「夢を叶える…」
「いいシリウス、人はね一人じゃ出来無い事が沢山有るの。でも出来ない事でも協力すれば出来る事も増えていくし、その力は大きくなっていくわ」
「協力すれば…」
「居ないの?同じ志を持つ、貴方に無い物を持つ仲間は」
「仲間…」
数日後の朝
父上と俺達パーティーは王宮へ呼び出された。
星詠の森の褒美だという。
王宮へ向かいいつものチョビ髭が迎えてくれた。そしていつもの部屋で待つ。
「あ、あの俺コルって言います。ベテルギウスさんに憧れて冒険者になったんです。ご一緒出来て光栄です!」
「こちらこそシリウスが世話になってるみたいでありがとう。君のフィールドデコイ、見事だったな」
「いえそんな、シリウスは凄い強いので逆に俺達の方こそ助かっちゃってるというかなんというか…」
「親の俺が言うのも変だが、コイツの力は信じて良いとおもうぜ。ただまだ世間を知らねえから…そこん所頼むわ」
「は、はい!」
「皆様、準備が整いましたのでこちらへ」
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