第二十五話 星詠の森と使節団2
星詠の森 出発当日朝。
父上は兵100名を連れて先発隊として一刻前に出発していた。
俺達も城門前に集合しサルガスの訓示を聞いていた。
「我々はこれより星詠の森へ警戒任務に赴く。親善も兼ねての重要な責務である。諸君達はその事を十分肝に銘じ、無事何事も無く戻ってこられるよう努めて欲しい。簡単だが以上だ」
分かりやすい言葉だが、堂々としている。
サルガスとメイサが馬車に乗り込むと周りをアケルナル様と俺達で囲む様に出発した。
途中メイサの我儘で俺やプロキオンを馬車へ呼び出したりしたが特に大事もなく順調に目的地に到着した。
星詠の森へ着くと父上達と族長ルクバトさんが出迎えてくれた。
サルガスとルクバトさんは会談があるとして族長の家に入って行った。
俺はその家の前で待っていた。
暫くするとアケルナル様がシルマさんとこっちへ向かって来た。
「こんにちはシルマさん」
「あなたはシリウスさんですね。その説はしっかりとお礼も出来ず。お世話になりました。」
「いえいえ、お元気そうで何よりです」
シルマさんは他のハイエルフと違って透き通った感じがした。これが神子だからなのか何なのかは分からない。
「申し遅れました。私はシルマの兄でマタルと言います。妹の命を救ってくれたとか。感謝する」
とても優しそうな人だ。シルマさんの事を大事にしているのが良く分かる。
「では私達はサルガス殿下と会談がありますのでこれで」
そう言うと族長の部屋へ入って行った。
「アケルナル様、アケルナル様はエルフですよね?エルフとハイエルフはどう違うのですか?」
「基本的な違いは無いがハイエルフは俗世と関わらず肉食なども好まないそうだ」
「元々同じなんですね?」
「そうだ。だが我々エルフは長い歴史で混血していることもありハイエルフ特有の力も無いと聞く」
「混血?特有の力って?」
「正確にはハーフエルフと言うらしい。蔑称だがな。特有の力は神通力とか言うものが有るらしい。神通力はこの世とあの世を結ぶ力と聞くが、良くわからん」
「そうなんですか…」
この世とあの世を結ぶ力か…
「兄上〜」
プロキオン達がやってきた。
「チョットシリウス!森を探検させなさいよ!」
「し、しー!中で大事な話をしてるんだよ!」
「メイサが聞かなくて…」
「なによ!貴方達だって村の外に出たいって言ってたじゃない!」
「そ、そうだけど危ないよ」
「姫様、今サルガス殿下が重要な会談をしてますゆえ今暫くお待ち下さい」
アケルナル様が諭すと取り敢えずメイサは大人しくなった。
「今の人、ここのお姫様でしょう?きれいな人だったわ」
「なによ、ア・タ・シだって姫なのよ!」
「そうだけど…全然雰囲気が違うよ?」
「なによプロキオン!」
暫くすると会談が終わりサルガス達が出てきた。
メイサが暴れていると見かねたシルマさんが優しく話し掛けた。
「じゃあ皆で少しだけ森をお散歩しましょうか」
「でも宜しいのですか?シルマさんは神子としての仕事が有るんじゃ」
「いいえ、ありませんよ。当日まで自由です」
なんとなくその優しい雰囲気が母上の様な優しさに似ていた。
「兄の私からも頼む。妹と一緒に居てやってくれないか」
結局サルガスはアケルナル様が見ていてくれるというのでシルマさんと俺達で森を散策することになった。
「えー!シルマさんって五十歳なのー!?」
メイサとスピカが一斉に驚いた。
「全然見えなーい。お肌ピチピチだし綺麗だし!」
「エルフは長寿ですから。これでも人間の二十歳位なんですよ」
「じ、じゃあ長老さんはいくつになるんだろう?」
「うふふっ、いくつ位だと思う?当ててみて」
「五百歳位!」
「それはないわね〜」
「えーでもヨボヨボだしー」
「メ、メイサ失礼だよ!」
「うふふっ、じゃあここだけの秘密にしましょ」
「秘密賛成〜!」
そして滞在4日目
最近俺達は毎日シルマさんと居た。プロキオンもスピカもメイサもシルマさんに懐いてしまった。シルマさんは優しくて面倒見も良かったので子供からも人気があった。俺もシルマさんと居ると自然と心が落ち着いた。
皆で森の中を散策しているとマタルさんらしい人を見かけた。しかし遠くて後ろ姿だったので違うかも知れないが何となくマタルさんだと思った。森の奥へ入って行ってしまったので声はかけれなかった。
滞在5日目
今日も相変わらず、ずっとシルマさんと一緒にに森の中を散策していた。森は外から騎士団達に警備されているので安全。のはずだった。
ダビーが俺達に向かって来た。
「シリウス!嫌な予感がする!すぐ戻れー!」
だんだんと黒い靄が立ち籠めやばい感じがした。
しかし時既に遅し。
当たり一面スケルトンの魔物に囲まれてた。
ダビーにすぐ応援を頼んだが、ここは俺達でなんとかするしかない。
「俺が突破口を作る!プロキオンとスピカはシルマさんとメイサを連れて走れ!」
「シリウスはどうするのよ!」
「ダビーに応援を頼んだ。それまでは耐える!耐えてみせる!」
俺は村の方角のスケルトンに向かって斬りかかった。
プロキオン達も援護してくれ、道が出来た。
「走れえええーーー!!」
「あ、兄上ー!」
「止まるなー!」
なんとか突破したのを見送り安心したのもつかの間、夥しい数のスケルトンが襲ってくる。
1体づつなら大した事ないがここまで多いと消耗戦だな……っが、やるしかねえ!
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