第二十二話  ブルーオイスター




コル達とパーティーを結成して3ヶ月が発とうとしていた。

その間も合間を縫って収納魔法を訓練していたがなかなか難しい。カラは良い線までは行ってると言うが…

以前のダンジョン攻略で踏破した経緯もあって俺はランクDに昇格していた。最近は魔獣討伐メインで実入りも良い。

偶にサルガス達と近況の報告をしあったりもした。



「ちょっとシリウス!なんでアンタ学園へ遊びに来ないのよ!」


「そう言うなメイサ。学園へは勝手に入れぬのだ。それにシリウスも遊んでいる訳では無い」


俺がパーティーを結成した事。ダンジョンや魔物の話をするとサルガスとメイサは目を輝かせて聞き入っていた。

外の情報に飢えている様子で、サルガスやメイサも本当は冒険がしたいのだろう。

サルガスも学園で剣術に磨きをかけているという。今度手合わせするのが楽しみだが、メイサもメイサで新しい攻撃魔法を覚えて今度俺に喰らえと言ってきた…

プロキオンとスピカも学園生活に慣れてきた様子で友達も出来た様だ。

皆上手くやっているようで安心して俺も冒険者の日常に戻った。



ギルドに行くとコル達が次の依頼を受けるところだった。ダビーは用があるからと来ていなかった。


「今度の依頼は俺達にギルドから打診された仕事で、報酬も悪くなく簡単だから受けようと思う」


なんでも以前コボルトのダンジョンで行った近くにある星詠の森周辺で魔物討伐と周辺地域の調査だという。

星詠の森はベネトナシュ王国の中にあるが、そこに住まうハイエルフ達が結界を張り外界とは隔離しているらしい。

五十年に一度結界を張り直す儀式があり、その時期は結界が薄れるので王国から騎士達が護衛という名目で立ち会うのだとか。

つまりそのお膳立てというわけだ。


「っでいつから出発するの?」


「明後日だ」


俺はそれまでに準備をしようと思いまずマイアの魔道具店に向かった。


(カランカランコロン〜)


「いらっしゃいませ~。あれシリウスさんお久しぶりです〜」


「こんにちはマイアさん。チョット見させてもらっていいかな?」


「何をお探しで〜?」


「聖銀のナイフってまだ有ります?」


「あ〜あれ、ありますよ〜」


「売り切れて無くてよかったです」


「魔族なんて居ませんからね〜買う人なんか居ませんよ〜」


「あははは。っでお幾らですか?」


「大銀貨2枚ですね〜」


「じゃあコレで」


「はい毎度あり〜。でもシリウスさんももの好きですね〜」


「前々から魔獣の解体で良いナイフが欲しくて。それに聖銀のナイフで切ると毒素が抜けるって言うし」


「成る程〜、でも切れ味は良いですが元が銀で柔らかいのでスグに刃が駄目になっちゃいますから手入れは大変ですよ〜」


「分かりました。有難う御座います」


マイアの店を後にした俺はダリムの店に向かった。



(カランカランコロン〜)


「こんにちはー」


「シリウスか、今日はどうした」


「この薙刀、刃を研いで欲しいんですけど。あと防具の調整と手入れ用の油を買いに」


「そうか…良いだろう研いでやる。ついてきな」


そう言うと奥の部屋へ行き刃を研ぎはじめた。


「相当使い込んだな。手入れも一応はやってるみたいだ」


「はい、大分手にも馴染んできてもう身体の一部みたいなもんですよ」


「それで良い。こんな安物の武器でもキッチリポテンシャルを引き出してやればそれなりに戦えるって事だ」


暫くして研ぎ終わると柄も修復してくれた。

お代を払おうとするがダリムは受け取らなかった。


「砥石は買ってけよ。あと…手持ちがあるなら防具を一新したらどうだ。身体がデカくなって少しばかりカバー範囲が狭い」


「そうですか、じゃあ何かオススメが有れば買っていきます」


「お前さんなら軽装鎧だろうさなぁ、胸当てを基準として篭手と今の革のブーツに脛当を付けるのが良いだろう。今後は肩当が有ったほうが良さそうだ」


「えっと…つまり」


「今ある革物を弄ってその上に鉄のプレートを充てがうってこった。一日もあれば仕立てられる」


「是非お願いします」


「任せろ、脱ぎな」


防具を一式ダリムに渡しお代を払って店を出た。


その後家に戻り馬の世話をした。母上と星詠の森や奴隷の事、収納魔法の事を聞いてみた。

奴隷に関しては正直に話してくれた。

やっぱりまだまだ知らない世界が沢山有るのだと思い知った。

ベネトナシュは奴隷撤廃派の先駆けだと聞いて少し陛下を尊敬した。

星詠の森については、入った事は無いらしいが一部のハイエルフ達が住んでいるという事。

またそこの儀式が世界の理に緩衝し秩序をもたらす助けになっており非常に重要な事だと教わった。

故にそこのハイエルフは外界と隔離しており古風で伝統を重んじているという事だ。

収納魔法についてはやはりかなり難しい魔法らしく、殆ど見たことが無いと言う。

母上と話した後、自室で収納魔法の練習をしたがまだまだ出来そうな気配は感じなかった。


次の日ダリムの店へ行くと装備が出来上がっていた。鉄のプレートを上に重ねただけなのに妙に装備が豪華に見えた。腰巻きも新調したせいもあるかも知れない。また気になる程の重さも無かった。流石ダリムだ、サイズ感もバッチリだった。


ギルドへ向かうとコル達が集まってた。

明日からまた旅になるので皆で夕飯を食べ、その後コルが知り合いだと言う酒場に行く事になった。




        メローペの店

     〜ブルーオイスター〜



(カランカランコロン〜)


「いらっしゃ〜い。あらコルじゃないの〜」


「よう、ご無沙汰」


「あら〜今日は可愛い殿方も一緒じゃな〜い」


どう見てもゴツイおじさんが化粧をしている様に見える。

初めて見る凄い世界だ…


「コイツはメローペだ。ここのオーナーで店長をしている」


「シ、シリウスです。よ、宜しく…」


「うんうん〜、若い殿方は大歓迎よぉ〜」


ち、近い…


「コイツは元パーティーメンバーのモンク僧だったんだ」


「彼、こう見えて強いわよ」


「やっだ〜!モンク僧だなんて〜まるで元聖職者みたいじゃな〜い!今はせ・い・しょ・く・しゃ、なんちゃって〜」


「おいおいまだシリウスは12だからなかうなよ」


聞けば、メローペさんはここ最近この酒場を出店したらしい。冒険者でお金をためて念願のお店を持つことが叶ったという。


「アララ〜こちらのノームちゃんも可愛い顔してるわ〜」


「それ以上近寄ったら闇討ちするぜ…」


「やっだ〜夜這い宣言キター!大歓迎〜!どんだけ大胆なの〜お姉さん困っちゃ〜う」


つ、強い…

怪しい夜は更けていった…



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る