第二十一話 ダンジョンとPT戦2




「地図だとこの辺りのはずだが…」


出発して3日目の昼過ぎにはダンジョンに到着した。

星詠の森の近くの林に洞窟の穴があった。


「これは魔物の巣だが……厄介だ」


コルが険しい顔をしている。


「夜行性で林に巣作りとは面倒な…」


ダビーまで嫌そうな顔をしている。


「何の巣なんですか?」


「コボルトよ」


コボルトとは人形の魔物で、ある程度の知性を持つ為にずる賢く好戦的な魔物らしい。

また普段は日光を避け森の中に隠れたりして巣を作るのだが星詠の森は結界が張られておりその横に作ったと見られる。


「シリウス、コボルトは人の形をした魔物だが人間じゃあない。躊躇するなよ。小さい悪魔だと思って戦え。それと…抜剣しておくんだ」


そういうといよいよ突入していく。


「ジャック・オー・ランタン」


カラが灯りを灯してくれた。


「行くぞ…」


洞窟の中はジメジメしており匂いが気になった。

所々罠のような物もありダビーは手際良く解除していった。

更に進んで行くと道が二手に別れていたがダビーが左手へ行くと決めた。

ダビー曰く、初めてのダンジョンマッピングは道に迷わないように片方の壁沿いに進むのだそうだ。それ故に時間もかかるがマッピングはギルド報奨も高いという。

更に進むとダビーが止まった。


「臭え…血の匂いだ」


パーティーに緊張が走ったが、進む事にした。

すると奥にコボルト達を発見した。寝ているようだ。その傍らには捕まえた動物や攫ってきた家畜の死骸が散乱していたが、人だったモノまであった。


「俺達より前に先行してた冒険者だな…装備がある。視認できるコボルトは7匹」


ダビーが裏闇声という特殊技術で話す。

するとダビーはコボルトに気付かれるまで闇討ちすると言い出した。

俺達は何かあったときの為に臨戦態勢でダビーに任せることにした。

一匹、また一匹と静かに仕留めていくダビーに何か職人芸を見ているようだった。

結局全部気付かれずに倒してしまった。


「ダビー凄いな、何か俺要らないんじゃないか?」


「起きてたら出来ねえよ。仲間呼ばれてただろうしな」


そう言い、亡骸になった冒険者の荷物を物色するダビー。


「死人に金はいらねえだろ」


「そりゃそうだが、お前には弔いという概念は無いのか」


コボルトの魔石と耳を切り落として更に進んだがその後も行き止まりだったりコボルトが数匹寝てたりしていて、全てダビーが処理してくれた。

結局最初の分岐まで戻ってきてそのまま右ルートへ進むことに。

すると次の部屋ではコボルト達が起きていた。

数は12匹。

コルは悩んだが排除して進む事にした。


「シリウス。俺を信じて敵に突っ込めるか?」


「任せろ!」


「任せた!」


俺はブーストして群れに飛び込んだ。

切れ味の悪い薙刀で一匹切った。いや引き千切った。

骨の砕ける感触が伝わる。

敵が俺を囲んだ。


「フィールドデコイ!」


今度はコボルト達がコルに向かって襲いかかった。

俺は一匹でも多く倒そうと必死に薙刀をコボルト達に叩きつけた。

ダビーもいつの間にか後に回り込み仕留めていく。

コルがコボルト達の攻撃を盾で処理する。

その後ろでカラがエアカッターで倒していく。

あと数匹という処で奥からコボルトの群れが集まってきた。

俺は残りをコル達に任せ群れに突っ込んだ。

正直楽しかった。コボルトの群れの中で無双している自分に酔っていたのもある。

けど自分が実践で戦えている事が嬉しかった。

切って切って切りまくった。


「シリウス下がれ!!」


コルの声に反応して咄嗟に下がった。

嫌な予感がする。奥からなにか来る…

するとなにか飛んできた!


「エアウォール」


カラが止めた。魔法が飛んできたのだ。

魔法使いのコボルト…?

その後にデカいコボルトが居た。


「メイジコボルト二匹に、ザコ二匹と…親玉が一匹…いや二匹か…面倒な」


どうする…あのデカいのアルデバラン様よりデカいな…けどそれよりは全然弱そうだ。


「俺は強そうな方のデカい奴とやりたいです」


「無茶だ!」「危険だ!」


「雑魚と弱そうな方のデカい奴、ちょっとだけお願いする事は出来ますか?」


「勝算は有るのか?ヤツは、硬いぞ?」


「行けます」


悩んだコルとダビーだったがシリウスに任せてみようと決断した。


「ぶっ飛ばして来いシリウス!」


俺がデカコボルトに突っ込んで行くと又コルが他を引き付けてくれた。


「デカい図体はココが弱いんだよなぁ」


初手は足を狙った。当たった!

けど倒れなかった。硬い!それどころか棍棒を振り下ろしてくる。

遅い!

更にブーストして脇腹を狙った。当たった!

コイツ…全然避けねえじゃん…

又棍棒で振り払ってきた。

はっは〜ん…さてはコイツ硬いだけだな?

ブーストを全開にし後頭部を狙った。

効いた!前に倒れ込もうとするデカコボルトの眉間をフルスイングでぶっ飛ばした。

白目剥いて倒れたデカコボルトの首に止め刺しをした。


急いでコル達の応援に合流し、あとはデミデカコボルトだけだったので不意打ちで悪いが後頭部をフルスイングした。

そこから起きる事は無く止め刺しをした。


「終わってしまえば呆気なかったな」


「デカいヤツが来た時はチョット焦ったが無事片付いた」


「手早く戦利品を回収するぞ」


デカコボルトの耳、俺のナイフじゃ切れないなぁ

そう思っているとコルがナイフを貸してくれた。

「シリウスお前凄いな。あのデカいコボルトはコボルトキングとコボルトクイーンって呼ばれててな、Bランク昇格基準の一つ何だぞ?」


「え、そうなの?」


「物理が効きにくいからシリウスとは相性悪いはずよ」


「俺も手練れ5人で行ってカラの魔法頼みでやっと一匹倒したのに…ホントお前何者だよ」


確かに硬いは硬いけど、そんなに強くは感じなかったけどなぁ…


「コボルトキングかクイーンのどちらかで良いから耳は取っておけよ」


「ダビーは冒険者ランクCだっけ?」


「ああ」


「じゃあダビーが一個持ってればBになれるじゃん」


「良いのか?有り難く貰うけど」


「2つあるし」



そうして戦利品を回収するとマッピングの為に奥に進んだ。

そこからは敵は疎か、対して目新しいモノも無く、先行していた冒険者の遺体をダビーがただただ物色するだけのマッピングになってしまった。途中野営を何度かはさみ結局完全攻略してしまった。


「何だかんだで一週間近く籠もってたのか。流石に疲れたな」


「結構狭いダンジョンで助かったぜ」


「出来たてのダンジョンだったしね。それより皆無事で何よりよ」


「だな、じゃあ帰るか」


こうして初パーティー初ダンジョンは無事大成功で終わった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る