第18話 門出2




「ただいま〜」「おかえり〜」


「アレ〜?シリウスが居る〜」


「兄上冒険者登録は出来たの?」


「ああ、それより合否はどうだった?」


「二人共合格〜!」「おめでとう!」


「流石私の教え子よね〜」


「メイサは?」「勿論合格してたよ」


「でも発表会場で大変だったのよ〜」



     〜数刻前王立学園〜



「ちょっとスピカ待ってよ〜」「早く早く〜」


「受かってると思うけどドキドキするね」


「うん。えーっと番号は…」


「あ、あったー!私受かったー!」


「おめでとう!僕はえーっと」


「あ、あったー!」


「プロキオンもおめでとう!!」


「うんありがとう」


無事二人共受かり、喜びを共有していると見知った人物に人集りが出来ていた。

メイサ王女殿下だ。彼女は魔法科にトップで合格し、首席入学となった。その姿に有象無象が集っていたのだ。


「そうよね、気軽に接して居たけどメイサ王族だし凄い人気よね」


「うん頭も良いし魔法も一生懸命練習してたもんね」


離れた場所から見守っているとメイサが気付き人を掻き分け2人に近づいてきた。


「チョット退きなさいよ貴方達!邪魔よ!」


「あははは相変わらずメイサはメイサだね」


やっと合流出来たメイサは合格の喜びを共有し合った。

しかしプロキオンとスピカが余りにも親しく接していたので周りの生徒達は2人が何者なのか気になって仕方ないようだ。また王女殿下とお近づきに成りたい貴族の子達からは嫉妬の目でも見られていた。

そしてそんな嫉妬の火に油を注ぐかのように声を掛ける人物が。


「皆受かったようだな。おめでとう」


サルガス殿下が祝いにやってきた。

すると周りの有象無象は更にプロキオンとスピカが何者かと気になっていた。


「当然ですわお兄様。こんなモノで落ちる様では友達失格ですのよ」


この5年で更に高飛車に磨きがかかっていた。


「シリウスは来てないのか?」


今日は冒険者登録の日だと伝えると少し残念そうなサルガスだった。


「サルガス王太子殿下、メイサ王女殿下。失礼ながらそちらの二人とはどういったご関係で?」


何処ぞの貴族のボンボンだろうか。


「このプロキオンとスピカは予の友人だ。これからもよしなに頼む」


「っていうかアナタ誰よ」


メイサの一言で貴族のボン達は心が折れた。


いきなり学園生活で敵が増える事を懸念するプロキオンとスピカだった。



「これからそなた達は合格者説明会であろう。制服や教科書の支給もあるゆえ急いで講堂に向かうと良い」


そう言ってサルガスは講堂へ案内してくれた。

お昼頃には一通り終わった。

入学式に合う約束をしたが…メイサは明日も王宮へ遊びに来いと暴れた。



        〜現在〜



「メイサったら…本当にヒヤヒヤしたんだから」


「姫様らしくて可愛いわ」


「それより兄上は何で家に?」


「それが薬草の本を…」


俺は事の経緯を話した。

皆に呆れられてしまった。

すると母上が俺達に優しく話し始めた。


「シリウス、プロキオン、スピカちゃん。貴方達はこれからどんどん親の手から離れてゆくわ。大変な時もあると思うの。でもね、そんな困難に出会った時の為に人は日々学んでおくものなのよ。だから書物を馬鹿にしては駄目よ。窮地を救うのは常に先人の知恵と心してね」


何だか、今回の一件といい、とても思い知らされた気がする…

プロキオンやスピカも真剣に聞いていた。


その後母上のアドバイスで依頼量より多めに採集すれば繰り返し依頼を受けれるのでお得だと教わった。

結局薬草の知識を一通り覚えまた採集に出る事に。

途中ブラッドバニー等の魔獣も居たのでついでに狩った。薙刀を使うまでもなく石ころの投擲で倒した。耳は討伐依頼で使えるので切り落としたがその際ナイフも必要だと思った。

何とか薬草の依頼をクリアし、母上のアドバイス通り連続で達成した。

その後も毎日地道に薬草採集を熟し晴れてFランクに昇格。1個上のEランクを受けれる様になり丁度ブラッドバニー討伐の依頼が有ったので耳を納品して即クリアした。



      〜王立学園入学式〜



今日はプロキオンとスピカの入学式だ。

プロキオンも制服が似合っている。

スハイルさん達が馬車で迎えに来てくれた。


「おはようシリウス、プロキオン!」


「おはようスピカ!」


「どうかな…?」


スピカはチョット照れ臭そうだったけど、とても可愛かった。


「凄く似合ってるよ!」


「あら本当に可愛いわね〜」


「プロキオンも似合ってるよ」


「そ、そう?ありがとう…」


「馬子にも衣装なんて言うけど、アタシは気恥ずかしいよ…」


母上は慣れた様子だったけどラナさんは落ち着かない様子だった。でもいつもと雰囲気が違って綺麗だった。

今日から寮生活なので荷物が凄いことになっている。

馬車に乗り込むと学園生活を楽しみにしている子供達と不安な大人達の温度差があったが皆一様に緊張している。


学園に到着すると生徒と保護者で分かれて行動した。

遠くでメイサの暴れてる声が聞こえた気がしたが…気にしないようにした。

案内された席で談笑していると明かりが消えいよいよ始まった。


粛々と進む式に若干眠気を覚えたが、新入生の挨拶でメイサが登壇した。

堂々と立派に役目を果たしていた。

式も佳境に差し掛かる頃には皆涙ぐんでおり、良い式典だったな…そう思った時。

まさかの人物がやってきた。


「新入生諸君、入学おめでとう。朕が国王のタラゼド・サダクビア・ベネトナシュである」


何故陛下…

しかし俺の反応とは裏腹に保護者席や来賓席からは凄い人気で歓声があがるほどだった。


メイサの保護者枠で来てたのかな…


入学式も終わりいよいよ寮へ向かう生徒達に両親が別れの挨拶をする。

泣いている人も居れば…暴れている子も居た。

プロキオンとスピカも各両親に挨拶をして寮へ入っていく。今生の別れでも無いので意外とアッサリだが、母上はチョット寂しそうだ。


俺達は家に戻りいつもの生活へ切り替え、俺はギルドへ向かった。


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