第32話 バカンス
匂いを封じる。
それには匂いを運ぶ外気と遮断することが一番だ。
この世界で外気から遮断される状況といえば、剣に乗る状態。
つまり常時剣に乗らざる状況──戦地に行く状況が最適だ。
俺は戦地へ皆を引き摺り込む為に、人工フラグ建設のために一計を講じることにした。
──
優雅な時間。
貧乏ではあるが一応貴族ではあるので、エインの実家にも執事はいるにはいるが元より仕えているわけでなく雇われのお手伝い──偽物をそう呼んでるだけだったが目の前にいるのは本物だった。
実家の執事とは違い目の前の執事は全てが洗練されていた。
実家の執事がする全ての動作がルークのする洗練されたものに上書きされるのを感じる。
これを一度味わえば他の執事は物足りなく感じるだろうが、これを味わわないというのもまたそれはそれで酷だとエインは複雑な気持ちになる。
これが終わったあとは確実に実家の執事と接する時に煩悶することになりそうだが、未だ自分はこの長くは続かない最上の時間渦中にいるので噛み締めておくことにする。
「エイン様、バカンスへ見学に行くのはどうでしょうか?」
「バカンス!? 行きます行きます」
エインが一度しか訪れないだろう最上のティータイムを噛み締めていると、ルークからバカンスの誘いがあって飛び上がりそうになった。
ティータイムで少し脈があるかもしれないと思っていたが、まさかこうまでうまくいくとは。
脊髄反射でバカンスと言う楽しそうな響きと頭に浮かんだセレブリティな想像に飛びつく。
「表向きは戦地への見学という理由で学園都市外への外出申請を取るので、戦地へと立ち寄ることと戦姫であるお嬢様にご同道願うことになりますがよろしいでしょうか?」
戦地にお嬢様。
ルークと接近する機会が損なわれる二つの要素はあったが、バカンスと言う言葉はそれを押し除けるほどにエインの中では大きな言葉だった。
今まで自分の領地内の避暑地などにいくことはあってもそれように開発された土地にいくことはなかったのだ。
それにルークがアイリスから離れられないことは先刻より承知済みでこういう機会が訪れれば必ずついてまわってしまうことは分かりきっていた。
むしろ今回のバカンスは味方を変えればルークの主人であるアイリスにルークとの仲を認めてもらうのに絶好の機会にできる可能性もある。
断る理由が存在しない。
決して下心から近づいていないという証明にグインを連れててもいいだろう。
未来のことを見据えれば寧ろここはルークとグンと距離を詰めるよりも即破局に持っていける障害を崩す方が先決。
「ええ、もちろん。必要に応じてのことですから。……もしよかったら皆でワイワイやった方が楽しそうですし、グイン連れててもいいですか?」
「もちろんいいですとも。せっかくのバカンス、気心の知れた方といかれた方がよろしいでしょうから」
グインのことを伝え、ルークの微笑みから真逆の感情──グインの邪魔が入り残念がっていることを妄想するとエインも微笑む。
お互いに内心で計画通りとほくそ笑んでいることを知らずにバカンス──戦地への遠征が始まろうとしていた。
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