第15話 私についてきて頂けますかな


 バトラーから剣聖を消せという指示が出た。

 暗殺者も差し向けて、共和国から鹵獲した最新鋭の〈剣〉を使って襲撃をかけたのだから、放置しておくよりもこちらから消したほうがリスクが低いと思われてもしょうがないだろう。


 今は指示を実行するために家に戻り、黒髪のカツラと黒い仮面で暗殺一家に変装をして、ただでさえ黒いスレイブに墨をぶっかけたような漆黒の〈剣〉──ファントムに乗る。

 フォートマン家で暗闘や素性を隠さなければいけない時にしばしば使う〈剣〉で何も固有剣技を持って居ないモブと戦闘性能はどっこいどっこいだが、全てが黒いので闇夜においての擬態、静音性に優れているものだ。

 今回は深夜なので打ってつけだろう。


「保険をとりに行ったら乗り込むか」


 このまま消しに行くには襲撃された直後もあり、どうしてもハート家が疑われてしまう可能性が高い。

 それについてはバトラーも織り込み済みだと思うが、俺としてはあまり主人公たちが忌避する黒い噂はアイリスについては困る。

 アイリス以外に剣聖の被害を大きく受けた人間──殺すにたる理由を持つ人間が欲しい。


「始めまして、ヴィクトル様。暗殺一家が1人。ルーと申します」


「なんのようだ。私は家から見捨てられ、死罪を待つ身だ。取り入ろうとしても無駄だぞ」


「死罪などこれからヴィクトル様が当主となればどうにでもできるような些事にございます。私についてきていただけますかな」

 


    ───


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