第3話 おもしれえ子供


 フォートマン領を越え、ヒロインのいるハート領に着くと燃える領都で歌って踊りながら徒手空拳で戦う一体の〈剣〉と大剣を持った大将クラスの〈魔剣〉の姿が見えた。

 状況的に戦っている〈剣〉のパイロットはヒロインの母であるレーネだろう。

 イベントの進行状況が謎だったので間に合うか、自信がなかったが間に合ったらしい。

 僥倖だ。



「魔王軍に不幸を齎す魔女よ! 天誅──グアアアアアアア!!」


 ちょうどレーネの動きを捉えたらしく〈魔剣〉が剣技を放とうとしたので、被せて燕返しを放ってレーネと〈魔剣〉の間に割り込む。

 六つの斬撃に剣技ごと引き裂かれると〈魔剣〉は沈黙した。


『それは私が預けた〈剣〉……。貴様、バトラーか?』


「静止中の残党を狩に行くか」と思うと榊原良子そっくりな声でレーネが問い掛けてくる。

 前日譚ではボイスなしだったのでわからなかったが声渋いな。


「いえ、息子のルークです」


『ルークだと!? たった七歳の子供が剣に乗り、〈魔剣〉を一撃で葬ったというのか!? だがしかし確かにその声の幼さからしてそうとしか……』


「レーネ様、そのような些事についてはどうでもいいのです。早く残党を狩り、安全を確保せねばなりません」


『そ、そうだな。まだ幼子だというのにしっかりしているようだな貴様は』


 許可ももらったので残党を狩る。

 欲を言えばもう少し剣持ちの人手が欲しいが、アイドルバスターの使い手であるレーネやヒロインはめちゃくちゃな力の代償に武器が持てないのでしょうがないか。

 過剰戦力になるということで、アイドルバスター持ちの関係者は家の当主以外は〈剣〉を配置してもらえないしな。


 全てのモンスターと〈魔剣〉を始末して領民たちが火消しに動き出すのを確認すると、ハート伯爵家の邸宅に戻る。


「残党の処理完了しました。もうアイドルバスターを発動させなくても大丈夫です」


『よくやった、ルーク。娘と共に礼を言おう。アイリス、出てこい』


 レーネが迫力満点の榊原ボイスで呼ぶと7つくらいの赤髪碧眼の女の子が出てきた。

 彼女こそは俺を破滅から救うヒロインであるアイリス・ハートだ。


『感謝する。ルーク。貴様の忠義に対する褒美は期待するが良い』


「命を助けて頂き、感謝します。ルーク」


「いえ、褒美はすでに、お二人の無事という形で受け取って下ります故」


『子供と思えぬ殊勝さだな。能力も異様なほど高いし。……面白い子供だ。執事見習いとして奉公させるのはあと三年後と思っていたが、今から奉公するがいい』


「ありがたき幸せでございます。レーネ様」


 棚からぼた餅だ。

 アイリスのヘイトを買わないために来ただけだというのに、アイリスのポイントを稼ぐ機会を貰えた。

 ゴマをするには最高のスタートダッシュだ。


    ───


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