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いくらそれまで平然としていたとしても、いざその日となればカリンは
だが、エリアスがレナとカリンの元を
「ときどきは帰ってきてくれるんでしょう?」
「ああ、そうだよ。帰れない時は手紙を書くから……前も言ったけれど、僕がいない間はレナをよろしくね」
「はいおにいさま!」
やっぱりよろしくされるのは私なんだと思いはしたが、レナは幼い兄妹のしばしの別れを静かに見守った。
「さて……じゃあ次はカリンの夢を叶えるために行動しなきゃね!」
レナはアネッテ
かつては伯爵家で
一年の間カリンの家庭教師を務めた結果、これは学校へ通わせてはどうかと
「才能もあるようですし、何よりも学びを得ようとする熱意が素晴らしいです。是非とも高等教育の受けられる場所で、彼女の可能性を広げる機会を!」
これには二つ返事でレナは応えた。
大喜びでカリンの進学先となる候補を探す。家庭教師と話し合い、最終的にカリンに決定権を
カリンは
学費も名門校だけあって、庶民が通うような場所とは文字通り
「ある意味カリンが自分で稼いだも同じですからね。だから
学費がかかる分、授業の質は保証されている。カリンの学力は編入試験で
で心配する必要もない。
レナが
「早い話が、カリンが学校でいじめられたりしないか心配なんだけど!」
だが、そんな大人達の心配など
家庭教師をつけて一年。その間もレナにヘルガとルカ、新たに家庭教師も加わってカリンは自己肯定感をすくすくと育てた。当然、その自信に見合っただけの実力も伴ってだ。
なので、この頃のカリンは可愛らしさの中にも美しさと気高さ、そして教養と知識を身につけた立派な
「わたしを一番に愛してくださるお姉様が、わたしに似合うようにと作ってくれたドレスなの。だから、それを着たわたしが可愛くないわけがないわ」
学校で開かれるパーティーなどでレナの新作ドレスを着るたびに、カリンはこう
る。言葉だけなら
この時ばかりはレナとエリアスの結婚が
「そうやって他人を貶めなければ保てないくらい、自己が
「お兄様が身売り? それはあなたがそういう風に見たいからそう見えているだけでしょう? いいわ、百歩
カリンは基本的には争いを好まない。だが、こと自分にとって大切な存在――レナと兄を傷つけようとする者には
「お兄様は自分を
貴族の
しかしカリンは
そうしたカリンの見た目のみならず気高い気性は、一部の女子生徒から圧倒的
これがまさかの副産物となってレナの元へと返ってくるのだから驚きである。
カリンはすっかり女子生徒達の憧れの対象となった。カリンの方が年下であるというのに「カリンお姉様」と一部で呼ばれるほどにだ。
やがて、憧れのカリンお姉様とお揃いの物が持ちたい、と願う少女達が現れ始めると、そんな彼女達がレナの新たな
貴族や
商品の
これもカリンからの恩返しなのだろうとレナは思う。
楽しく、幸せな人生を歩んでいる姿を見せてくれている。それこそレナが兄妹に求めていたものであり、あの時の自分の判断は
カリンの幸せな姿と、レナの工房の
だが、これで終わりではなかった。
歌に楽器、ダンスにそれこそ学業と、カリンは全てにおいて首位を独走する。
ついには飛び級で上の学年へ進み、学長からの
「ぜんぶお姉様のおかげなの。お姉様がいなかったら今のわたしはいないわ。だから、これらはすべて、わたしの大切なお姉様に
愛の告白と
カリンからの受け取りきれないほどの恩返し。だが、それすらも
それは、エリアスからの
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