3-2
*****
エリアスが成人となる十六歳の誕生日を迎えてすぐに、レナとエリアスは籍を入れた。
これでアインツホルン家からエリアスに関して口出しをされる心配はひとまず消えた。
カリンに対しての
そしてこの時にレナはエリアスとカリンに一つの考えを告げる。
「これでようやく私とエリアス様は
結婚はあくまでエリアス様とカリンをあの下衆共から遠ざけるための手段ですから。なので、エリアス様は
これはカリンについても同じだ。
「レナ、僕とカリンからも一ついいでしょうか?」
「なんですか? なんでも言ってください!」
共に過ごし始めておよそ一年。これまでエリアスが何か要望を口にしたことはない。レナは気持ち的には前のめりの体勢で続きを待つ。
「レナは以前、僕達にやりたいことを見つけてほしいと言ってくれましたよね? それが見つかったんです」
「わ! それは
「それはまだ
「ええ~、カリンったらいじわる~」
口ではそう言いつつ自分の顔がだらしないくらい
常に何かに
実際カリンはレナ達が褒め称えることばかりするのだから、これは純然たる結果でもあるのだが。
あの暗く
そんなレナの姿に気付くと、エリアスは少しばかりの
「それで、そのやりたいことのために、僕は
「騎士!」
思わずレナは大きな声を出してしまった。それほどまでに意外だったのだ。
どちらかといえばエリアスは
「小さな頃からの
「素敵です
諦め去った夢をもう一度など、それはもう食い気味で
「たしか、騎士になるには長期間の訓練が必要でしたよね? その間は王城近くの隊舎で生活するとか?」
「はい、なので、しばらくはお別れになります」
「
あ、任されるのは私の方なんだ、とレナは小さく笑う。すっかりおませな性格になったカリンが可愛くて仕方がない。
そんなカリンは、勉強がしたいのだとレナに告げる。
「わたしはなにも知らないの。前のお
あっ、と小さな声を上げてカリンは両手で口を
「そういうことは考えなくていいと何度も言ってますよね?」
気持ちはとても嬉しい。だが、レナは恩返しがしてほしくて二人を保護したわけではないのだ。
「大人としての責任なんです。それと私の自己満足。だから二人が私に恩を着せることはあっても、返す必要なんてないんですよ」
それに、とレナは続ける。
「恩返しならもう
カリンのおかげで子ども服を手がけるようになった。それが好評で
「二人が気にしているだろう金銭面においては、むしろおつりがくる勢いですでに返してもらっています」
そして、それ以上に二人の存在がレナの日々の活力となっている。
これまでだって
「家に帰ってきて、二人が
我ながらいいことを言った……などと少しでも思ったのがまずかったのか、ここでレナは会心の
「おねえさまは、わたしとおにいさまの、自由な気持ちからの恩返しをしたいという願いを、しばってしまうの?」
それは不要なものであると
悲しげな表情でカリンが見つめてくる。
可愛いカリンの
あえなく
「すみませんレナ。
「……分かりました、二人の気持ちとしてありがたく受け取ります。でも、これだけは覚えていてください。私に対する恩返しといってくれるのなら、それは二人が幸せになること以外にありません。だから、どうか無理だけはしないでくださいね」
はい、とエリアスとカリンは頷く。
「そもそも、僕らのやりたいことが貴女への恩返しの延長線上にあるんです。だから、無理はしませんけど、その夢を叶えるための努力は
「ええ、それなら私はそんな二人の夢を応援します」
こうしてエリアスは騎士の道を、カリンは勉学の道を進み始めた。
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