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アインツホルン伯爵家は当主のマッテオ、妻であるザビーネ、
んんん? とレナは小さく首を
「母が八年前に
エリアスもまだ七歳の頃で、新たに増えた家族を素直に喜んでいた。が、しかし。
「翌年に今度は父が亡くなって……その三カ月後に義母が義父と再婚して……今のアインツホルン家になりました」
「それは……なんと言いますか……」
再婚するの早くね? とか、そんな立て続けに? だとか、エリアス様がものすごく顔を
と
「義父と義母にとって可愛いのは義兄だけのようで、僕とカリンは……あ、別に暴力を
「何一つ大丈夫ではないですねエリアス様」
とんだ屑の義理の両親と血の繫がらない兄。可愛がっているのが長男だけとはいえ、アインツホルン家の
どれだけエリアスが優秀でも、未成年というだけで断る人間は多いだろう。レナだってその一人だ。
「お前は見た目くらいしかいいところがないから、せめてそれを活用しろと……」
「は? ……エリアス様の外見を武器にお見合いを成功させろということですか? そんな身売りみたいな真似を? 十五歳の子どもに?」
「見合いの成功は特に
「資金
そんなレナをエリアスは
「ありがとうございます……貴女は本当に素敵な方ですね。こうして話ができて……貴女のような大人の存在を知れただけで僕はとても嬉しいです」
「待って! ちょっと待ってくださいエリアス様! これ話を終わらせようとしてますよね? ここまで聞いた上にそんな言い方されて、はいそうですかさようなら、なんてできるわけないでしょう、だから待って!!」
レナは必死に考える。相手は金を
不意に、とある考えが浮かんだ。それはあまりにもおぞましく、レナはそんな考えが浮かぶ自分にドン引きする。
だが、そんなレナの反応でエリアスは察したようだ。
いっそ
「見合いという大義名分を
「ああああああ
「そんなわけで僕の方がよほどの不良債権なんです。でも良かった、貴女にそんな僕を押しつけることにならなくて」
ひいいいいい、とテーブルに突っ
「貴女の未来が良きものであるよう、心から
「だから待って……待ってエリアス様……あの……もし、ここでお別れしたとなったら、その後エリアス様はどうな……るんです、か?」
どうなさるんですか、とはもう
義理とはいえ親とも評したくないほどの下衆に人生を
「次の相手が見つかり
それは今度こそ、そういった目的を理解した上で
つまりは身売りが成立してしまう。まだ十五歳の少年が、大人の
「――
ダン、とレナはテーブルを叩いて身を起こす。
「子どもが馬鹿で屑で下衆な大人の犠牲になるとか絶対に駄目です」
「ありがとうございます」
エリアスは心の底から嬉しそうに笑う。
だがそれは、窮状から救ってもらえるかもしれないという喜びではない。
確かにそうかもしれない、とレナも思う。今の話を聞いただけで、すぐにどうこうできるという話ではないだろう。
「エリアス様」
「僕のことは気にしないでください。話を聞いてもらえただけで僕は」
「妹さんももしかして同じような話になっているんですか?」
その問いに初めてエリアスの表情が
それだけでもう答えているのと同じだ。
「……そうならないように、僕が」
「ああああああもうほんっっとうに駄目ええええええ!! 妹さんのためにエリアス様が犠牲になるのなんて駄目です! それに、そんな屑共はどうせ後で妹さんにも同じことをさせるに決まってますし!! 二人
それはレナに言われずともエリアスだって分かっている。分かっているが、どうしようもできないのだ。
そんな
「でも大人は
いっそそう責め立ててくれればいいのに、しかしエリアスはそんな文句すら言わない。
助けも求めない。それがいかに
それが決定打となった。
レナは
「私と結婚しましょうエリアス様!!」
「え││あ、いえ、ほんとうに僕のことは」
「妹さんも一緒に私と三人で! 結婚してください!!」
「……僕と妹が
美しい顔が歪んでいるのは、
「大人の責務だからです!!」
まさかそんな答えがくるとは思いも寄らなかったのか、エリアスはきょとんとしたまま固まる。
少し前からのレナの叫びを聞きつけたのか、それとも単にそろそろ時間になったからなのか。遠くの方から
「あらあら、どうしたのレナ?」
「息子が何か無作法でも?」
やはりそうであった。
レナは勢いよく振り返ると
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