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「などと、大勢の貴族のいる場で男爵家の子息と伯爵家の令嬢へ罵詈雑言を浴びせかけたという過去がですね……あるんです」
今でも
「結局、子どもがいるというのはその場限りの
「……良かったんですか?」
「そりゃあもちろん」
「なぜですか?」
「なぜって……性格の悪い人間って他人のそういう話大好きじゃないですか。そういうクソ……下衆……人間は相手が子どもだろうと
庶民の間ですら
そんなところに生まれた子どもが一体どうなるのか考えるだけで胃が痛くなる。
「その子自身にはなんの非もないのにですよ。でも、噓だったんで、そういう目に
その分レナに飛んできたわけであるが。
それを察したのかエリアスは美しい
「やっぱり、貴女こそ何も悪くないじゃないですか!」
「そうなんですけど、何しろ全力で言い返したものですからこう……言ってしまえばドン引きされましたよね。引き潮かな、ってくらい引かれました」
単純に怯えさせてしまった。それでもレナから
「両家のご両親もまとも……とても良心的な方々で。庶民の私に謝罪だけでなく、その後の
ある程度は受け取るつもりであったものの、あまりにも想定外の額すぎてレナは一度断った。しかし、どうかお願いだからと
「それを元手に王都へ来たわけです」
どうしたって
「こちらへ来てすぐにアネッテ様にお声がけいただいて、それからずっとお世話になっています」
実はアネッテもあの夜会に参加しており、一部始終を
しかも、その場で泣き出してもおかしくない中、
「私は悪くない、んですけど、でもやっぱりですね……どれだけ
以前ほど聞かなくなったとはいえ、それでもやはり婚約破棄から始まる一連の
「幸いアネッテ夫人のおかげで仕事としては成功していますが、婚約やそこから先の結婚となるとですね……どうしてもですね……二の足を
今ならきっともう少しマシな動きができたと思う。若気の至りって
「と、いうことで、結婚するとなると私はとんだ不良
彼ならばもっとずっと
二、三年もすればきっと立派な青年になるだろう。そうすれば貴族の令嬢どころか、王家の
そういえばこの国の第一王女は今年十三歳だったはずだ。
エリアスとも二歳差でお似合いではなかろうか。
もし今後二人が出会い、結婚となった
「それを言うなら、僕の方が……」
「はい?」
「僕の方が不良債権ですよ」
「エリアス様が?」
またまたぁ、と笑うレナに「はい」とエリアスは簡潔に答える。
「私よりも、ですか?」
「ええ、貴女よりもよほど僕の方が不良債権です」
「失礼な言い方になりますけど、エリアス様の中身も容姿も
「貴女に
広大な領地を持ち、かつては
貴族の家に出入りしているレナの耳にも、
「すでに世間に知られているのもお
え、と思わず声を
「先祖の財産はとっくに使い果たしています。領地の権利も手放していて」
「えっ!? そんなことって許されるんですか!?」
「許されませんよ。ですから、表面上はまだアインツホルンの領地です。そこからの収入を……債権者に分配しています」
うわあ、とレナは引く。むしろこれを聞いて引かない人間はいないだろう。
だが、エリアスの話はこれに
「一体どうして? アインツホルン
「父と母……それに兄は、
「気にしてないって! というか、エリアス様にはお兄様がいらっしゃるんですか?」
「義理の兄ですが」
「ご結婚はされて?」
「いいえ、来年で二十になりますが今も楽しく遊んでいますよ」
「それならむしろ今日はお兄様の方が適役だったのでは?」
すでに成人しており、自由に遊んでいられる身分の兄がいるのならば、未成年のエリアスに見合いを押しつける意味が分からない。
「ものすごくぶっちゃけますけどよろしいですかエリアス様」
「どうぞ」
「今日のお見合いって早い話が商売をより手広くするための家格が
「ええ、そうですね」
「それなのに、成人されているお兄様ではなく、未成年のエリアス様が……?」
それとも兄の方は別の見合いでもしているのだろうか。
しかし、エリアスの口ぶりからしてそうではないとレナは感じた。
「なんと言うか……今のアインツホルン家は少し面倒なことになっているんです」
そう告げて、エリアスはポツリポツリと語り始めた。
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