みずんぼう

十夢

○みずんぼう

 ボクはみずんぼう。みずのボウヤだよ。そらからおちてきたんだよ。

 

 ボクのともだちもいっぱい、いーっぱい、そらからおちてきたんだよ。


 キミのかたに。キミのはなびらに。キミのはねに。キミのえだに。キミのはっぱに。

 かたいいし。やわらかいつち。ながれるかわ。おだやかなうみ。


 ボクたちがおちていけないところはないんだよ。だからボクたちはみんなとともだち。あめになって、つぶになって、みんなとあわさって、いっしょになってしまえるよ。


 ボクたちはあつまってながれをつくるよ。ながれをつくったらあちこちをながれるよ。みちのうえ、はたけのなか、あぜみち、アスファルトのうえ。コンクリートのうえ。いしづくりのうえ。やねのうえ。といのなか。すいろのなか。ボクたちはひくいところがとくいなんだ。


 ボクたちはおおきなおおきなあつまりをつくったよ。それをみんなはうみってよぶよ。うみはボクたちがあつまってつくりあげたおおきなおおきなみずたまり。


 ボクたちはうみにあつまっておおきなおおきなながれをつくるよ。そうしてボクたちはうみからまたたびだっておそらにたかくたかくあがるんだ。

 おそらにたかくたかくあがったら、ボクたちはふたたびであっておもくなる。ボクたちはおもたくなるとよりあつまってくもになるよ。ボクたちのそらでのあつまりをみんなはくもってよぶんだよ。


 ボクたちはくもにいられなくなったら、ふたたびまたはなれるよ。ひとつぶ、ひとつぶのあめになって、ボクたちはまたふりそそぐんだ。


 やまに。たにに。のはらに。うみに。かわに。いけに。みずうみに。さわに。はたけに。たんぼに。

 みちに。だいちに。やねに。

 かたに。せなかに。あたまに。おしりに。

 

 ボクたちはあつまったり、はなれたり。なんども、なんども、いったりきたりして。みんなのうるおいになるよ。


 かなしいなみだをながすキミ。ボクをみあげてごらん。ボクのつぶもキミのなみだおおんなじみずんぼう。ボクたちはキミのほおでであってなぐさめる。

 どうかキミ。なかないで。

 どうかキミ。なくならボクたちといっしょになこう。


 ボクたちはみずんぼう。みずはどこにでもいるんだよ。

 キミのからだにも。キミのそばにいるともだちにも。キミのおかあさんにも。キミのおとうさんにも。おじいちゃん。おばあちゃん。

 キミがおもいだせるだけのいきものたちをおもいだしてみて。

 キミがおもいだせるだけのきやはな、しょくぶつたちをおもいだしてみて。

 このほしでであう、いくせんものものたちがボクをふくんでいきているよ。

 だから、キミはひとりぼっちだとなかないで。

 ボクたちはそばにいる。

 みずになって。あわになって。つぶになって。こおりになって。ゆきになって。しぶきになって。

 めにみえないほどのつぶになっても。そしてまた、どこからともなくあらわれる。それがボクたちみずんぼう。

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