第9話 謎のメール
香織はデスクでコーヒーを飲みながら、パソコンの画面を見つめていた。突然、新しいメールが受信トレイに届いた。差出人は匿名。件名には「黒川の秘密」とだけ書かれていた。
香織: 「涼介、ちょっとこれを見て。」
涼介が近づき、香織のパソコンの画面を覗き込む。メールには黒川の不正取引に関する詳細な情報が書かれていた。
涼介: 「これは……!具体的な取引内容や関与する人物のリストが記載されている。」
香織: 「誰がこんな情報を送ってきたのかしら?」
二人は高橋健一に協力を依頼し、メールの発信元を追跡することにした。健一は冷静な顔つきでパソコンに向かい、迅速に作業を進めた。
健一: 「このメールは匿名プロキシを通じて送信されているようですが、何とか発信元を突き止めることはできるかもしれません。」
香織と涼介は祈るような気持ちで健一の操作を見守る。数分後、健一が顔を上げた。
健一: 「発信元は公共Wi-Fiから送信されていました。場所は……カフェ『エトワール』です。」
香織: 「エトワール?あのカフェには何度も行ったわ。優香ちゃんに話を聞いてみましょう。」
翌朝、香織と涼介はカフェ「エトワール」に向かった。カフェの店内には穏やかなジャズが流れ、落ち着いた雰囲気が漂っていた。店員の佐々木優香が二人を迎える。優香は19歳の若い女性で、明るく親しみやすい性格が魅力だ。
優香: 「香織さん、涼介さん、いらっしゃい。今日はどうしたの?」
香織: 「実は、最近このカフェで不審な人物を見かけなかったかしら?特にパソコンを使っていた人とか。」
優香は少し考えた後、思い出したように答えた。
優香: 「ああ、最近見慣れない男がよく来てたわ。パソコンを使って何かしていたけど、いつも短時間で帰っていったの。」
涼介: 「その男の特徴をもう少し教えてもらえますか?」
優香: 「背が高くて、メガネをかけていたわ。スーツ姿で、落ち着いた雰囲気の人だった。」
香織と涼介は、その男がメールの送り主である可能性が高いと考え、カフェで張り込みをすることにした。彼らはカフェの隅に座り、男が現れるのを待った。
数時間後、優香がこっそりと二人に合図を送る。背の高いスーツ姿の男が入店し、パソコンを取り出して作業を始めた。香織と涼介は慎重に男に近づき、声をかけた。
香織: 「すみません、お時間よろしいでしょうか?」
男は驚いたように顔を上げた。
男: 「何か御用ですか?」
涼介: 「私たちは信用金庫の者です。黒川浩二についてお話を伺いたいのですが。」
男は一瞬ためらったが、やがてうなずいた。
男: 「……わかりました。実は、私は黒川の元部下で、彼の不正を内部告発しようとしています。」
男は香織と涼介に、黒川の不正取引の詳細や関与する人物のリストを提供した。彼は黒川の手口や組織の内部事情についても詳しく話し、二人はその情報を元に次の計画を立てる。
香織: 「これで黒川を追い詰めるための決定的な証拠が揃ったわ。警察に提出して、黒川の不正を暴きましょう。」
涼介: 「ああ、これで一歩前進だ。まだまだやるべきことは多いが、必ず正義を貫こう。」
こうして香織と涼介は、内部告発者の協力を得て、黒川の不正を暴くための次のステップに進むことを決意する。新たな手がかりを元に、彼らの調査はますます深まっていく。
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