二十八話 アニスの怒り爆発
ロイが前を走っているジョーンズに声をかけた。
「ジョーンズ、道は間違っていないよな」
「ああ……」
ジョーンズが苛々している。彼もなかなか森を抜けせないことに不安を感じていた。
「おい、マイケル、どうした?」
突然、ロイの驚いた声がした。
「この子が苦しんでいるんだ。大丈夫かな」
一行が立ち止まった。ところが、ジョーンズが不機嫌に言った。
「さっさと進むぞ、こんな森の中で止まったら大変だ」
「でも、この子が苦しんでいる」
「勝手にしろっ」
ジョーンズはそう言うなり、馬の背を蹴り駈け出した。アニスは口をぽかんと開けた。
「嘘でしょ……」
アニスは、ロイの馬から飛び降りた。
「ジョーンズを追いかけなきゃ」
しかし、マイケルとデニスは馬から下りて少女を介抱し始める。一方、ロイはどちらにつくべきか迷っていた。
「ロイっ、お願い。ジョーンズを追ってっ」
「でもなあ、この子は放っておけないし」
ロイはにやにや笑っている。どうしてこの状況で笑えるのか、アニスには理解できない。
「みんな、ちょっとどいて」
アニスは男たちをかき分けて、少女を見つめた。この子の目的はなんだろう。
少女を抱き上げる。軽い。いくら少女だからとはいえ、軽すぎる。
アニスは、お師匠さまに習った魔法を思い出した。
真実を暴くにはよく相手を見なくてはいけない。必ず真実が隠れている。
アニスは目を閉じて呪文を唱えた。
――真実の姿を見せなさい。
目を開けると、自分の手の中に傷ついた小鳥が横たわっていた。
「嘘っ、なんてこと……」
アニスは、動物を傷つけることだけはどうしても許せなかった。腕の中の少女は苦しそうだった。アニスの黒髪が逆立った。
「おいおい……」
ロイが驚いてアニスの腕をつかもうとした。すると、アニスの怒りが爆発した。 ロイの手をすり抜けて、ものすごい勢いで森の中へと消えてしまった。
アニスと少女の姿が消えて、三人ははっと夢から醒めた。
デニスが呟いた。
「俺たちは一体何をしていたんだ?」
「ジョーンズを探さなきゃ」
マイケルが慌てて言う。
「タンジーはどうする?」
「彼女は魔女だ。なんとかするだろう」
ロイが答えた。
「急ごう、ジョーンズを追うんだ」
デニスが馬に飛び乗り、三人はジョーンズの消えた先へと馬を走らせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます