第一部 一話 これがはじまり



 はじまりは黄金だった。

 冥界の王、ティートゥリーはきんを好んだ。

 金を採掘するために惑星を支配し、金を奪うとその星を消して次の星へ移動した。


 金には大きな力があった。

 生きているものを魅了し、パワーを与えてくれる。

 ティートゥリー王は惑星に存在するすべての金を独り占めしようとした。

 そこで、次に目を付けたのは、ワクセイテラにあるパースレイン国だった。


 パースレイン国には鉱石と金が豊富にあった。

 古来こらい、パースレインで暮らす人々は、金と鉱石はこのワクセイテラを支える大切な資源であることを理解していた。


 必要な分だけ頂く。

 生きていくためには、豊かな自然と食べ物。

 火、風、水、土、物質にする前にエネルギーとなる元素を大切にする。


 金と鉱石が美しいのは認める。

 だが、これらはワクセイテラが誕生した時に同時に生まれた唯一無二の存在だ。金、鉱石はワクセイテラの一部分である。

 ワクセイテラを代表して、パースレイン国王は、代々その金と鉱石を守り続けてきた。


 パースレイン国王は、金を奪い星を滅ぼすティートゥリー王のことをよく知っていた。

 数億年前から存在している冥界の王、ティートゥリー王。

 金を狙って惑星を滅びす存在。


 冥界の王には『死』というものはないが、支配されないように追い払うことはできる。その支配されないようにするやり方が、古くから伝わる魔術書に書かれてあった。それがグリモワールである。


 ワクセイテラは意思を持っていた。

 このテラを守るため、ティートゥリーと同時に生まれた、魔術の書、グリモワール。

 もし、ティートゥリーのみが一方的な強さをもって、各星々を滅ぼしていけば、宇宙が闇のものとなってしまう。


 闇があれば光がある。

 光の元で生まれたグリモワールには、ティートゥリーのしてきた行いがはじめから描かれていた。


 グリモワールにできることはそれらを伝えること。

 それに対抗するために存在していたが、闇の力は拡大し光は追いつけないでいた。

 闇はどんどん広がっていく。抵抗できずに支配され消えていく星々。

 ティートゥリー王を追い払うために、立ち上がる人々を描いたグリモワール。

 その書物は今、一人の少女の手元にあった。


 この物語の主人公、アニス・テューダー。

 アニスは、小国パースレインの第一王女で16歳。白い魔法使い見習いである。


 先々代、もっとずっと前の先代パースレイン国王は、彼女を含め、人々が冥界の王を追い返すであろうと信じて、グリモワールを継承してきた。


 ティートゥリー王はじわじわと勢力を増しながら、金を奪っては惑星を乗っ取り移動している。数億年たって、とうとうこのパースレインにも魔の手が伸びてきた。


 ところが、寿命が百年もない人々からしたら、この手の話はおとぎ話に過ぎなかった。

 グリモワール所持者のアニス・テューダーも自由に遊びたい盛りだった。

 おとぎ話はあんまり信じていない。

 あろうことか、このグリモワールをないがしろにしている始末。そう、彼女は魔法で、我、グリモワールに全てを書き示せと命じたのである。


 よって、我はその魔法に抗うことができず、己で全てを書き記すこととなった。

 しかし、このままでは読みにくいと思われるため、なるべく分かりやすく、おトモダチみたいな語り部となってお伝えしていこうと思う。

 というわけで。


 我はグリモワール。

 白い魔女、アニスについて書きますよ。

 と、いやいや違いました。

 アニスとその仲間たちによって、どのようにティートゥリー王を追い返すかを鮮やかに描いて参りましょう。


 はじまりはじまり。

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