第4話 四つ葉 春奈

やしろや神社、仏を見つけても、

簡単に御参りをしたり、

手を合わせてはいけない。


”神隠し”に遭ってしまう。

それが人間達の一般論だ。


僕にはそれが通らない。

僕は鳥目とりもくの妖精王の後継者なのだから。


御用があって山奥の小さな鳥居をくぐり抜けて、

お社に100円を投げ入れる。

こちらもこちらで若くして主祭神の後を継がれた

知り合いの稲荷さんがいるのだ。


「あ、あっ、ちょっと待ってて!」


そうそれが四つ葉神社の主祭神しゅさいじん

四つ葉 春奈だ。


「めぐまさんいらっしゃい。」


「やあ、春奈ちゃん」


「単刀直入に言うよ。

もうまもなく、精霊祭が近い。

今回は日本に降り立つらしい。」


「それを伝えに来た。」


「精霊祭って何?」


眷属けんぞくの狐達と一緒に首を傾げる姿が可愛らしい。


「運良く長くて3日くらいの

精霊界と人間界が繋がる期間だよ。」


「精霊界から人間界に来るもの達や、

精霊界へ里帰りをするもの達、

あとは精霊界の家族とその精霊が会うための

織姫、彦星のように大切な時間なんだ。」


「ふーん。もてなせばいいのかな?」


「その通り。」


「ゼリーや金平糖こんぺいとうを窓辺に置いておくれ。

幽霊が触れるから水は近くに置かないで。」


「ねぇ。」


「どうしたんだい?」


「精霊さんと友達になれる?」


「精霊次第かな、運が良ければなれるよ。

君もこれを機に眷属けんぞくを増やせるといいね。」


「もう行っちゃうの?」


「うん、妖精として僕の用事は

これだけだからね。」


「じゃあね!またね!いつでも遊びに来てね!」


良い意味で幼くて、

少し舌っ足らずな所も愛らしい。

神隠しもまだ出来ない可愛い神様が

この社には居る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る