第4話 2日目 もしそこの緑の人

 朝日と共に起きたトモは、朝の支度をして冷蔵庫に入っていた食材でベーコンエッグを焼く。


[プライベートモードが終了します]


(なんのことですわ?)


 そんな事を考えながら、キャベツやレタスやトマトを洗って千切っていると、クイーンがよたよたと起きてきた。


「あら。おはようクイーン」

「みゃー……」

「ふふ。何か食べるかしら?」

「みゃー」


 冷蔵庫から鶏肉を取り出し、そのパックをトモに渡す。


「鶏肉ですの。焼けばいいのだわ?」

「まう」


『おはよう。誰かいるか〜』

『おはようー』

『俺は今から飯食いなが見るは』

『お嬢のベーコンエッグ、じゅるり』

『あ、あたしもなんかコンビニまで買ってこようかしら』


 軽い飯テロをくらってお腹が空いてる視聴者。

 そんな人たちは他所に出来た料理を外の景色を見ながら食べ始めた。


「うみゃうみゃ」

(猫って猫舌じゃなかったかしら)

「わたくしも食べますわ。んーやっぱり朝は、ベーコンエッグとサラダ。後はいちごジャムパンですわ。牛乳は欠かせないですわ!!」


『美味しそう』

『ふっふっふ。俺も家で同じの作って食べてるもんね』

『うぐ、ずるい』

『でも……俺のより、お嬢の料理の方が美味しそうなのはなんでだろう』

『ぐふっ……やめろ、俺にも刺さる』

『あたしにも』


 視聴者はなんかダメージを受けていた。

 その間に優雅な朝ご飯を食べて朝のラジオ体操を終わらせる。


「ふー取り敢えずイチゴ取りますわ」


 イチゴを五十個程取ったあたりで、あの謎アナウンスが流れる。


[【菜園管理】のレベルが2に上がりました。栽培可能個数が3に増えました。栽培可能品は、ほうれん草・リーフレタス・小松菜・ネギ・シソ・じゃがいも・人参・かぶ・ラディッシュ・きゅうり・なす・ピーマン・ミニトマト・枝豆・イチゴで変わりません]


「あら。あと二つ何に使用かしら」


 トモは腕を組んで頭を悩ませる。


「決めましたわ!一個はじゃがいもですわ。もう一個はクイーン用の鶏肉ですわ!!」

[目前の木を伐採し、自分の菜園にし、じゃがいもと鶏の種を植えますか?]

「お願いしますわ」

[畏まりました]


 目の前の木を二本伐採され、其処が耕されじゃがいもの芽が出る。

 もう一つの方は、何も芽が出ない。


(流石に鶏肉は無理ですわ?取り敢えず置いときますわ)


『俺の聞き間違いかな、さっきお嬢。鶏肉とか言ってなかったか?』

『やっぱり言ってた?』


 じゃがいもを自動回収していると、何やら音が森の方からした。クイーンがのそのそとトモの足元に控える。


「コ……ゴブ」

「みゃー」

「何の音かしら?」


『おい今の声って』

『ゴブリンよ!!』

『女の敵だ!お嬢逃げるんだ!』

『お嬢が薄い本みたいにされちゃうわ』


 尚、全年齢版なので皆さんが想像するような事はありませんが、トモは死んだらどうなるのか分からないので心配な視聴者。

 そんな事とは知らずにゆっくりと声の方に近づくトモ。クイーンは警戒しながらも、トモの車椅子を押す。


「あの辺からかしら」

「ゴブ!!」

「ゴフゴ!!」


 どうやらゴブリンが飯の取り合いで取っ組み合いの喧嘩をしているようだ。


「もし、そこの緑の人?」

「ゴブ?」

「あら、言葉が通じませんわ」


 キョトンとするトモ。コメント欄は大慌てだった。


「んー食べ物ですわね。コレなんてどうかしら?」

「ゴブ?」


 トモがイチゴを差し出すと、二匹のゴブリンは喧嘩を止め、トモの手からイチゴを一つずつ取る。匂いを嗅いだ後、一口食べると目を見開き「んー!!」と喜んでいる。


「あら。美味しかったみたいで良かったですわ。取り敢えず十個ずつどうぞ」

「ゴブ!」

「コブブ!」


 ゴブリンたちはテンションMAXである。喜びのあまり、トモの周りを腕組みしながらスキップする始末である。


『ゴブリンと仲良くなってるわ』

『モンスターと仲良くなんてそんな事出来るんだな』

『ああー』


 最後のイチゴを名残惜しそうに食べ終えるゴブリン。


「ゴブ……」


 ゴブリンが仲間になりたそうにトモの手を見ている。


「クイーン」

「にゃん」

「もし。そこの緑のお二人さん、わたくしのお家に来ると良いですわ。わたくしの菜園を守ってくれたら、報酬として菜園の食材を分けますわ」

「ゴブ?!」

「ゴブブ?!」

「じゃあ、これから宜しくですわ」

「「ゴブ!」」


[ゴブリン二匹が仲間になりました。名前を付けて下さい]


「んーじゃあ、一本角が青鬼くん。二本角が黄鬼くん」

「ごぶ!」

「ごっぶ!!」


 名前が貰えて喜びの踊りをするゴブリン二匹。ふふふと微笑みながら、お家に帰っていった。


[Zoo online内に置いて、初めてモンスターとの友好が結ばれました。称号【ゴブリンの友人】をトモさんにプレゼントします]


『ふぁ?』

『成程友好を結んだモンスターで称号が変わるのかな?』

『てか、あの凶暴なモンスターたちに友好結べと?』

『好物上げるとかじゃない?お嬢のイチゴ食べてから、仲良くなったみたいだし』

『じゃ!俺やって来てみる!!』


 数分後


『ただいま』

『帰ってきたのね。どうだったの?』

『全然無理!!』

『お疲れw』

『なぜだー』

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