第2話 1日目 大きな猫さんですわ
「さて、この大きなカプセルがZoo onlineとやらをプレイする為の機械ですわね」
家の中を散策するとリビングにそれはあった。
「取り敢えず、やって見ますわ。ふう!乗り込むのが大変ですわね!」
車椅子から腕の力でどうにか身体を持ち上げ、カプセル内に転がり込む。ポジションを整えると、カプセル内のスイッチを押して扉を閉め、目を瞑る。
「リンク」
眠りに落ちるように意識が一瞬途切れる。
「ようこそZoo onlineへ!」
その声で目を開けると、其処は何処かの音質だった。目の前には小さな龍がいた。
「こんにちは」
「うん!こんにちは!!ゲームの世界観とかは知ってると思うから、早速だけど、キャラ設定をするよ。まずはお名前を入力してね」
「わかりましたわ」
(キャラ設定?というものは、わかりませんが……名前ですわね。取り敢えずトモでいいかしら、病院の先生がニックネームを入力してねと言ってましたし)
「トモちゃんだね。次は君の相棒を決めようか、何か希望があるかな?」
「相棒……」
脳裏に浮かんだのは昔飼っていた大きな猫。
「メインクーンが良いですわ」
「うんうん。それじゃあ相棒はメインクーンと、その子の名前はどうする?」
「クイーンでお願いしますわ」
「はいっと。これで名前も決定。それじゃあ最後に一つ。自分の思い浮かぶやりたい事とかを教えて貰えるかな」
「やりたい事……農業がしてみたいですわ」
トモは、ふとテレビでやっていた農業に興味を出した。どうしてか、今の自分では体験する事も出来ないからだ。
「農業ね。了解。それじゃあこれで登録は完了だよ。あっちに行ったら【菜園管理】って言ってね。それで使い方分かるから」
「わかりましたの」
「うん。じゃあ元気でね」
「ありがとうですの」
トモが目を瞑り頭を下げ、身体を起こすと其処には森が広がっており、後ろには我が家があった。
『ログアウトが出来なくなりました』
『動画配信が始まりました』
(なんでわたくしのお家が?ログ〜アウト?動画?配信?それはなんですの)
頭にはてなマークを浮かべていると「みゃー」という鳴き声が、足元から聞こえ。ぷにっとしたものが足に置かれた。そちらに目を向けると、昔飼っていたメインクーンと瓜二つの猫さんが居た。
「あらあら、まあまあ!貴女がクイーンですの?」
「みゃーん」
「これからよろしくですの。大きな猫さん」
「みゃー」
喉を撫でるとゴロゴロと喉を鳴らすクイーンであった。
『こんにちは』
『こんにちはー』
『あれ?無反応?』
『あーあれだ、このゲームデフォルトで配信になってんだよ。確かコメントもオフとなっていた筈だ』
『あったなそんなの。でもさ、この家多分持ち家だよな』
『多分な』
『こんちはー』
『ってことは、結構ゲームやってんだよな?持ち家って結構高いし』
『そうだと思うんだがな〜でも、防具も何も付けてない。THE現代私服って感じだぞ』
『そうね。それもお嬢様って感じの』
『てか、車椅子なんて設定このゲームにあったか?』
『無い……と思うが』
『ちはー』
『ちはー』
『配信ビジュが良かったから、今来たんだけど。何で森のど真ん中に家?』
『わからん』
『どうやらこの娘、配信してる事に気付いて無い見たんなんだよ』
『マジか!まあ、プライバシーは守ってくれるから良いか。取り敢えず投げ銭でもして見る?』
『それがあったな!あれなら、勝手にお金が入るから気になるだろうし』
『じゃああたしが一番!』
『プレイヤー名友に千ズーがプレゼントされました』
『お前はえーな〜』
ボトンッとトモの目の前の地面に千ズーの入った布袋が落ちる。
「何か出てきましたわ?」
「みゃー」
不思議そうにクイーンが前足でペシペシと叩いてる。コメント欄は?!のコメントで溢れる。
『?!』
『?!』
『ばあ?』
『?!何故に!普通登録の銀行口座に入るよね!!ね!』
『こんな事初めてだ!』
『運営!!』
『はいはーい、巡回中の運営ですよ〜』
『投げ銭てこっちの世界に送られるの?』
『そんな事は無い筈ですがーん?ちょっと確認して来ますね』
『どうなってるんだ?』
『試しに俺も投げ銭してみるわ!』
『プレイヤー名友に千五百ズーがプレゼントされました』
またしても、友の目の前に積み上がる布袋。
「みゃあ?!」
「ま、またですの?」
身構える2人。それを見る視聴者。
『かわいいわ〜』
『可愛いのは確かだけど、まじでゲーム世界に投げ銭されてるな』
『只今戻りました。運営でーす。取り敢えず、バグではありませんでした。ですが』
『ですが?』
『ニュースをご覧ください』
『ニュース?』
運営から届いたネットニュースを開く視聴者さんたち。
『只今私は、突如として家ごと消えた神隠しの現場に来ています!!ご近所の方にインタビューします!そちらの奥様。こちらには誰が住んでいたのでしょうか?』
『確か仲の良さそうな3人家族が住んでた筈なんだけど、交通事故でご両親2人が死んだんですって、今日くらいから入院中の娘さんが帰ってくるって病院の関係の人から聞いてたわ。確か足が動かないから、車椅子生活で困ってたら助けてあげて欲しいと言われたわー』
と中継されていた。そしてその奥様からその娘の写真と家の写真が映される。それを見た視聴者が配信画面とニュースのスクショを交互に見る。
『おい。見たか』
『ええ、見たわ』
『この娘だよな』
『はい。どうやらそのようでして、こちらからも彼女にアクションを掛けているのですが、何故か通じないんですよ』
『いやいやいや!アニメや漫画じゃないんだから、ゲーム世界に転移?するわけ……でも、実際にしてるんだよな』
『取り敢えず彼女の設定は配信になってるので、不幸中の幸いというか、それによって何故か投げ銭がゲームの世界に送られているみたいです。此方でも調査は続けますので、もし彼女の場所が分かりましたらご連絡下さい。お願いします』
『ん、まあ、わかった?わ』
『取り敢えず投げ銭してこの娘生活を助けるぞ!!もしこの娘が死んだら、どうなるかわからん!今出来る事は投げ銭くらいしかねえからな!』
『そうね!!』
コメント欄が盛り上がってる中、トモはクイーンに布袋を拾ってもらい中身を確認していた。
「これは?お金かしら」
「みゃー」
こんな森の中でどう使えと?と首を傾げるのだった。取り敢えずお金は家の金庫に閉まっておきましたわ。
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