初心者お嬢様は、大きな猫さんとデスゲーム配信中です!!愉快なお友達もいっぱい!

お昼寝

第1話 0日目 独りぼっちですわ

(知らない天上ですわ)


 何処かアルコール臭漂う、白い部屋で目を覚ましました。身体を起こそうとしても下半身に力が入らない。


「動きませんわ」


 どうしたものかと首を傾げていると、部屋のドアを開けて誰かが入ってきた。その人はナース服を着ており、友の顔を見ると急いで誰かを呼びに行った。


「あの方どうしたのかしら?」


 バタバタと足音が近づいてくる。扉がバンと大きな音を立てて開けられる。入ってきたのは、若い男の先生と先ほどのナースさんだった。


「どうかしましたの?」

「猫谷友さん落ち着いて聞いてください」

「はいですの」

「猫谷さんたちは、先日事故にあいご両親は他界され、貴女は下半身麻痺になってしまいました」

「はえ?」


(わたくしのお父様とお母様が他界?死んだって事ですの?本当に、嘘ですよね?)


「お辛いですよね」


 友は先生とナースの顔を交互に見て、その暗い表情に現実だと理解する。涙が流れる。ぽとぽとと。


 ナースさんが友の抱きしめ、泣き止むまでずっと頭を撫でてくれた。憔悴しきった友に先生が一つの動画を見せてくれた。その中では人と動物が仲良く冒険したり、遊んだり、走ったりする動画だった。


「先生これは?」

「最近流行りのZoo onlineというVRMMOです。猫谷さんのその足では、何処かに出かけるのも大変だと思います。ですが、こちらのゲームであれば、お家に居ながら、色んな世界を相棒の動物と一緒に旅できますよ」

「家で一人だと気を病んでしまいますから、試されてみては?」


 友は悩む。そして決断する。


「わかりましたわ。わたくし、そのZoo onlineやらせて頂きますわ」

「では、此方の方でお家の方に手配しておきますので、ご退院後にでもプレイして見て下さい」

「わかりましたわ」


 事故から一ヶ月後、友は病院を退院し、我が家に帰ってきた。


「ただいまですわ」


 シーンと、静まり返っている室内。友の頬に涙が流れる。


(ああ。わたくし。本当に独りぼっちになってしまったのですわ)

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