修仙勇者異聞錄

第13話：仁義のとんこつラーメンです

食事を終えた後、李飛星は弥子を背負い、席を占めた幽蘭に手を振って別れを告げた。

「飛星お兄ちゃん、眠いよ。」

「それじゃあお風呂に入らないの？」

Zzzzz...小狐は寝ちゃった。

「まったく、仕方ないなあ。」

弥子をベッドに寝かせて、そっと布団を掛けて、彼女が心地よく眠れるようにした。

李飛星は服を着替えて、静かに部屋を出て、夜の闇に歩み出した。

浴衣は着心地が良いだけでなく、公共浴場へ行くために特別に作られたゆったりとした服でもある。

お風呂に入ることはこの島の住民にとって好ましい文化だ。蘭学思想が流入して以来、平民階層の地位が向上し、楽を享受することが平民の楽しみとなった。だから、これは体を清潔にする方法であると同時に、心身をリラックスさせるための手段でもあり、やがて伝統的な習慣となった。人々は通常、一日の労働の後に入浴の静けさを楽しむ。これは働く人々への慰めだ。

石板で敷かれた小道、街の灯籠が柔らかな光を放ち、夏の夜の虫の音が時折聞こえる。少し塩っぽい海風の他に、ここにはほのかな花の香りと湿った土の匂いが漂っている。こんな夜はとても穏やかだ。公共浴場——つまり「銭湯」に到着した。当然、「温泉」と呼んでもいい。

李飛星は入口で料金を支払い、大きなタオルと小さなタオルを受け取った。規則に従って、浴室の外で全ての服を脱ぎ、小さなタオルを腰に巻いてから、浴室に入った。

「ぬるま湯をかけて体を洗ったら、湯船に浸かってしばらくリラックスしよう。楽しみだな。」

誰もいなかったので、彼は頭の半分を湯船に浸し、温かい湯が体を包み込み、疲れを癒してくれた。

「生きているって本当に素晴らしい。」

このような環境の中で、誰も彼と話さないが、温かい水が筋肉をマッサージし、蒸気が疲れを和らげてくれる。

夏の夜の虫の音が水の流れる音に重なり、これは彼の真夏の夜の夢だ。

「はあ、今日は本当に疲れたな。」

「船の積み下ろしでこんなに疲れるとは。」

「サークルなんてもうやりたくない。」

「早くお風呂に入ってすっきりしよう。」

「早く、早く。」

李飛星がこの貴重な静けさを楽しんでいる時、浴室の扉が再び開いた。数人の男たちが入ってきた。彼らの体には夜叉や怒目金剛の刺青があり、地元の秩序保衛者たちが入場したのだ。

神州連盟が新たに設立されたばかりであるため、以前の統治者である幕府の勢力は大幅に衰退し、その下にあった武士階層は動揺している。幽蘭嬢が所属する安防組とは異なり、これらの人々は政府の背景を持たず、地下の規則を集めて安防組や鎮守府が解決できない問題を解決している。彼らの気質だけで、その身分と経験が分かる。「極道」と呼ばれ、冗談で「893」とも呼ばれている。これはこの地の花札の中で最悪の組み合わせでもある。

彼らとは関わらないほうがいい。

「見なければ大丈夫...」李飛星は無表情で思った。

「海の中の金を本当に見つけられたらいいのに。」

「そうだね、武士の国って呼ばれていたのはもうずっと昔のことだ。黒船が来て、神州の修行者がやってきて、これらの勢力がますます強くなって、武士階層は本当に衰退したよね。」

「ねえ、桜井、夜お腹空かない？」

「そうだね、お腹空いたよ。」

「この辺に美味しいラーメン屋台があるみたいだよ。」

「お？本当？」

「行かない？行こうよ？」

「ちょっと行きたいな。」

「じゃあ今夜行こう。」

「ああ、行こう。」

極道のメンバーたちは李飛星がいる温泉に入り、彼に目もくれず、日常の雑談や組織の話をしている。時折粗い言葉が浴場内に響いた。

彼は黙って聞いていたが、心の中でこの奇妙な共存に感嘆せずにはいられなかった——この小さな空間では、異なる背景を持つ人々が外の身分を忘れ、入浴のリラックスを楽しんでいた。

「でも海鮮は美味しいけど、確かにまたお腹が空いたね。」

李飛星は起き上がり、浴びて帰り道にラーメンを食べる準備をした。

「あ、そうだ。おい、お前！」

「え？どうした？」

李飛星は声を聞いて驚き、指を自分に向けた。

「お前だよ、このガキ、温泉にいるとき何を見ていたんだ？」

「いや...何も見てないよ。」

「嘘つけ、絶対に見足りないだろう。」

「俺が何を覗く必要があるんだ？」

「そんなに見たいなら、存分に見せてやるよ！」

「え？」

李飛星は慌てた。数人の刺青兄貴に囲まれた。

「見ろよ、この刺青は夜叉だぞ、邪気を払う効果があるんだ。」

「刺青があるのが男の証だろう。」

「俺のを見てみろよ。」

「確かに武士道精神が感じられるね...」

桜井は誇らしげに言ったが、李飛星はお世辞を言うのが慣れていて、賛同した。

「お前、武士道を知ってるのか？」

「ちょっとだけ知ってるけど...男らしい感じがするね？」

「そうだよ、武士道は大河の魂だ！」

李飛星はこの是非の地を離れたいだけだったが、この言葉を言い終えると、突然、皆が感動し、武士たちの柔らかい心に触れたようだった。

「え、なんで急に燃え上がったの？」

「お前、うちに入らないか？」

「いや、どちらも無理だよ、責任を負えない感じがする...」

声は大きくなかったが、言葉はその場にいる全員の共感を呼び起こした。年長の極道が浴池から手を叩き、風霜に満ちた顔に表情は見えなかった。

「このガキ、口が達者だな。」

危機は解除され、李飛星は安堵の息をつき、雰囲気は和やかになり、楽しく会話を交わした。

「彼らはただ温泉に救われたい普通の人たちだよね。」

「ところで、ラーメンを食べに行こうよ。君も一緒に行かない？」

「え？俺も行くの？」

「おいでよ、おいでよ。」

「行かないとちょっと悪い感じがするしね。」

三人は笑いながら服を着替え、温泉に入った後の必須の手続きを行った。

※

極道の二人組は少し呆れていた。

「ねえ、飛星君、温泉から出た後なんで牛乳を飲むんだ？」

「当然ビールだろ！」

「ここでお酒を飲むのは、二十歳になってからじゃないですか。」

「桜井君は本当に豪快だね。」

李飛星と話しているのは桜井幸太郎という男だった。

「ああ、どうでもいいよ、乾杯しよう！」

「至福だ。」

三人は一気に飲み干すと、同時に爽快な表情を浮かべました。

「行こう、ラーメンを食べに行こう。あそこのラーメンはチャーシューが特に大きいんだ。」

至る所にあるラーメン屋台、灯籠が灯され、赤い布で飾られたラーメン屋台。

「路上でラーメンを売っているのを侮ってはいけない。彼は黒道の帝王かもしれないんだ。」

桜井の和の魂が完全に目覚めた。

「そんなことないよ、豚骨ラーメンはこんなに美味しいんだ。」

長時間煮込まれた豚骨、骨髄のコラーゲンが完全に溶け出し、濃厚で乳白色の香り高いスープが形成された。李飛星の時代にはまだコラーゲンが何なのか知らなかったが、濃厚な「脂の香り」と「しっかりとした」口感は一度食べたら忘れられないものだった。

一口食べて、桜井は元気を取り戻した。

「ちゃんと食べて、早く海底の宝物を見つけるぞ！」

「ううん。」

「おい、バカ、飛星君を驚かせるなよ。」

李飛星は表情を保つのが難しく、同行者は思わず突っ込んだ。

「ああ、何でもないよ、ただ興奮してるだけだ。この貧しい場所に黄金があるなんて思わなかったよ。」

「そうだね、まさか沈船の宝があるなんてね。」

「飛星君も聞いたことあるの？」

「うん、少し聞いたことがあるよ...」

李飛星はとても困惑していた。自分が何気なく言ったことが、どうしてこんなに盛り上がったのか。

「そういえば、俺は港で君を見かけたことがあるよ...飛星君が描いた航路だよ！」

「これで本当に大金持ちになれるぞ。飛星君、俺がボスに話して、君も一緒に船に乗ろう。」

「どうせ明日にはみんな宝探しに行くんだ、レモネードも売れなくなるし、市場にも人がいなくなる...こんなに多くの人を海に出させたんだから、俺が航路を計画して事故を避けるのを手伝おう...」

「ああ、確かに一理あるね。」

「助かったよ。」