9話:下着にはご注意を
一通りの片づけが済み、後は詰め込まれた段ボールを郵送するだけになった。
今日はここに宿泊し、明日からは本拠地で過ごしていく。(まるで野球みたいだな、この言い方)
なんにせよ、また掃除から始まるわけだ。
意外と苦じゃないし、確かに部屋は散らかってるけど物が多いだけでゴミが散乱しているわけじゃない。ゴミはちゃんとゴミ箱に捨てられている。服とか鞄とかが散乱しているだけ。
金持ちは一度着た服は着ないのか? というくらいにはその日着たであろう服が散乱していた。
ちなみにウォークインクローゼットには死ぬほど服が掛けられてた。
疲れてなにもしたくないのが容易に想像できる。
帰って来る→服を脱ぐ(廊下に散乱)→その辺に靴下脱ぐ(リビングに散乱)みたいな形跡が所々残っている。
それに脱衣所に普通に下着とか洗濯機に入ったまんま。これはどうも思わないのか? 俺が男ということを忘れているレベルだろ。
まあそんな俺も気にせず洗濯したのだが……。
その散乱した服どもを洗濯してたら一日中洗濯機が動いてて、可哀想に思えてくる。酷使されすぎ。ごめんな。
幸いドラム式だったので乾燥もついてるので、割とそこに手間がかからなかったが、全部が全部乾燥かけている時間もないので、少しばかり室内と外と共に干す作業はあった。
もちろん下着は乾燥機なので安心していただきたい。
「さて、今日はもうめんどくさいしコンビニ弁当で済ますか」
空っぽになった部屋の電気を消し、俺は部屋を出てコンビニに向かうことにした。
♡♡♡
……しまった。
私はとんでもないことをやらかした。
片付けてもらっている家……洗濯機にブラとかパンツとか入れっぱなし……だ。
だぁぁぁぁぁ! しまったぁぁ!
私としたことが! 家の事になるとついポンコツが出てしまう。どうして私はこんなことを早く気付かなかったの!? ばかばか!
……ん? 待てよ。
でもこれから私はあの人に洗濯とか家の事をやってもらうんだ。どうせ見られるには変わりはない。という事は、もう見せてもいいか!
……ってなるかぁ!
「どうしたんですか社長。なんだかおバカさんに見えますよ。考え込んだと思ったら頭抱えて、と思ったら、今度は机をバンバンして……頭おかしくなりました?」
秘書のさつきが私の奇行を見て、少し引いている。
「ごめん、こっちの問題なの……」
「異常でしたよ……」
「そんなひどかった?」
「だいぶ気持ち悪かったです」
まじか。ちょっと一旦冷静になろう。
「さつきってさ、異性に下着見られるの平気? ……例えば、そう部下に下着を洗濯して干されるとか」
「例えが具体的すぎてちょっと勘繰っちゃいますよそれ。気をつけてください———まあそうですね、普通に嫌ですし、部下に洗濯とかキモいです」
「キモッ———そうだよねぇ、きもいよね」
それはちなみにどっちがきもいのかによって話が変わってくるんだけど、洗濯させてる私が気持ち悪いのか、それとも普通に洗濯できちゃう彼がきもいのか。
「社長も男もお互い興味がないって事でいいんじゃないですか?」
「興味ないわけ———ごほn……ん」
「分かりやすいですね。基本的にそんな状況にはならないですよ? アニメの見過ぎではないですか? それともそういう状況なんですか? それはそれで面白そうなんで話を詳しく聞かせてください」
眼鏡をスチャじゃないんだよ。
「気が向いたら話す」
「ありがとうございます。おかげで今、そういう状況なのが分かりました」
「謀ったな!」
「なにを失礼な。私は聞いただけですから。では、私はもう上がらさせて頂きますね。お先に失礼します」
そう言って社長室から出て行った。
「私って……なんで社長が出来ているんだろう」
自分がよく分からなくなった。
下着問題、どうしたものか。
確かに見られるのは恥ずかしい。当たり前の話である。でもこれからはあの人にやってもらうことになる。
……うーん。
あ、そうだ!
「私ってば天才!」
洗濯ネットを購入し、それに私が下着を入れてお風呂に入ればいいわけだ……できるかな? いやいや、できるかな? じゃないんだわ。やるんだよ。
それで予め西野君に伝えて、これは触らない。乾燥機で乾燥させてもらうと。
こうすれば見られることはないだろう。
よし、早速買いに行こう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます