最初のケモッ娘1
レオたちの説得に応じない獣人がいる一方で現状に耐えかねて解放軍の誘いに乗った獣人たちもいた。
そうした人たちはレオたちに同行していた解放軍の獣人たちが確保していた避難ルートに沿って逃してくれている。
順調に南下していたレオたちだったが情報を集めていた解放軍の獣人から知らせが入って少しルートを変更することになった。
どうにもハンビトガイが獣人の集落を狙っているという話で、先に逃したり守ったりせねばならないと向かうことにしたのだ。
「ここらって……」
「そうだよね……」
目的地付近までようやく思い出した。
守るべき獣人の集落がある近くの町はレオとミカオにとって因縁の場所だった。
バーミットの拠点がある町で、レオとミカオとフーニャはフードを深く被って顔を隠すことにして周りを警戒していた。
ここで行動を起こすハンビトガイということはバーミットかもしれない。
ただバーミットがいない可能性もある。
なぜならここはバーミットの本拠点ではなくいくつかある拠点の一つだったらしいのだ。
隠し金庫がある以上は重要度は高かっただろうがお金が盗まれてしまった今はいるのかどうか判然としない。
警戒を怠っていいわけではないのでレオとミカオはあまり顔を見られないように気をつける。
のちの参加メンバーであるフーニャは警戒しつつもレオとミカオほど警戒はしていない。
「バーミットか……最近見てねぇな」
奴隷商人であるバーミットの活動を監視するために解放軍の協力者が町にもいた。
シカの獣人でこちらは小さい宿屋を営んでいる。
シカの獣人によると最近バーミットの姿は見ていないらしい。
少し前はかなり荒れていて獣人以外の人間だって町中でバーミットを見たら隠れろと言われるほどに怒り狂っていた。
そんな様子だったのでみんな近づけずバーミットが何を考えているのか知りようがなかった。
国の中が荒れ始めて気づけばバーミットのことも見なくなったのだとシカの獣人は肩をすくめる。
「いないならそれはそれでね」
復讐したい相手ではあるが会いたくない相手でもある。
いるのなら獣人の集落を救う上で敵対することもあるかもしれないがいないのなら会わなくていい。
レオたちはシカの獣人から町の周辺にある獣人の集落の場所を聞いて回っていくことにした。
まだ襲われている獣人の集落はないそうで上手く説得できれば襲われる前に獣人たちを逃すことができる。
早速動き出したレオたちは獣人の集落に向かった。
町の周辺には二つの集落があるらしく遠い方から先に説得を試みる。
「ふむふむ……解放軍か……」
これまで出会ってきた獣人の多くが細かい差はあれど人間に近いような二足歩行の姿をしていた。
しかしもうちょっとケモノ寄りの獣人のというものも存在している。
「ハムスター……」
「ハムスタ?」
遠くの集落にいたのはハムスターだった。
ただし手のひらに収まるような普通のハムスターではない。
レオの世界にいたハムスターと違ってサイズは大きい。
生活容態としては二足歩行で立っているとレオの腰ほどの大きさもあるのだ。
ただ人がもふもふになったような体つきではなくハムスターがそのまま立ち上がった体をしている。
これはこれでかわいいなとレオは思う。
ルービはハムスターの獣人に集落が襲われるかもしれないことを説明して解放軍と共に国を抜け出すことを提案した。
いきなりのことでハムスターの獣人の族長は驚いた様子だった。
「……少し考える時間をくれませんか?」
「もちろんです。ただいつ襲われるか分からないので早めにお返事いただけると助かります」
急に集落が襲われるかもしれないことと集落を捨てて国を脱出することを言われても受け入れられないのは当然である。
すぐに断れないだけ前向きに考えてくれている。
レオたちはハムスターの獣人の判断を待つことにしてもう一つの集落に向かった。
「ここの獣人は……」
もう一つの集落は町から比較的近い。
襲われるならここかもしれないとレオたちは考えていた。
さらに集落に住んでいた獣人たちは犬の獣人だった。
犬の獣人は奴隷としての需要も高い。
なぜなら人間の体格に近いものも多く、奴隷としても真面目で働かせやすいのだ。
「黒い人ばかりだな」
犬の獣人と一口にいってもさまざまな毛色やミミの形などのタイプがあるのだが集落にいる犬の獣人はおそらく全て同じ犬種だった。
黒い毛色をしていてそこだけ見るとミカオにも近いのだが顔は大型犬っぽい。
ミカオも大きめの犬に近い顔はしているがマズル周りがシュッとしていて可愛い。
対して黒い犬の獣人たちはお口のところがちょっとタルンとしたタイプの顔立ちをしていた。
可愛い。
「私が族長のドランドです」
体格も全体的に大きく、族長のドランドはがっしりもふもふとしている。
ここまでの獣人の集落ではレオの存在はいい顔をされなかったけれどドランドはレオともちゃんと握手をしてくれた。
手のひらの肉球がガサガサとして痛いぐらいでよかった。
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