地道な活動
町にいる全ての獣人が奴隷かと言われるとそうではない。
人の街から離れて、身を寄せ合って互いに防衛することで集落的に暮らしている獣人たちもいる。
そうした獣人たちも物を売り買いして生計を立てたりして何とか生活している。
一般の人はわざわざ獣人を捕まえて奴隷にしようとしないので冷たい目で見て距離を取りながら手を出すことはない。
しかし時に奴隷商人に目をつけられて誘拐される獣人や集落丸ごと襲われることもあるのだ。
だからといって他の場所に行けるわけでもないので必死に耐えるしかない。
解放軍では今回の混乱に乗じてそうした集落の獣人も引き入れようと動いていた。
ポツから聞いた情報を元にリマジハまでの間にある獣人の集落をレオたちは訪れた。
レオとしては誘えば来るのではないかと思っていた。
「……そうですか。では気が変わったらこれを分かりやすい場所につけておいてください」
猫の獣人の集落を訪れ、ルービが解放軍のところに来ないかと族長に提案した。
しかし族長はその提案を受け入れなかった。
理由は何か一つというわけではない。
住み慣れた土地を離れて一からやり直すことへの不安、集落を捨てて移動する時に人間に襲われるのではないかという心配、獣人たちも若者だけではなく年寄りもいて移動そのものに対しても懸念がある。
それに大きな理由として待っているということもある。
獣人の集落の中で奴隷として攫われてしまった人がいるらしく、もしかしたら帰ってくるかもしれない、その時に集落がなければ可哀相であるなんて理由もあった。
「環境が変化することを嫌う者は多い。たとえ周りに冷遇されていようとも一度住み着いてしまえばそこは家なのだ」
理解できないといった顔をしているレオにルービは寂しそうに微笑む。
誰もが強く自由を望み、動くことを厭わなかったのなら今頃獣人の状況も変わっていたかもしれない。
けれど誰もが戦うことに積極的ではいられないのだ。
すでに諦めた者もいれば守るべき物を抱えている者もいる。
解放軍についていくことは一見良いように思えるが今ある平穏を捨て去って、誰も分からない明日に身を投じることに他ならない。
「分かってやれ……あれもまた必要な選択なのだ」
獣人にとっても厳しい場所に身を置き続ける。
その選択が正しいかは分からない。
しかし戦いを強制などできないのだから尊重してやることしかレオたちにはできないのである。
「いつかもっと解放軍が強くなって……誰もが頼ってくれる存在になりたいですね」
「その通りだな」
解放軍が全てを手放してもいいと思える存在ではないからためらわれてしまった。
解放軍がもっと頼ることのできる相手だったなら獣人たちもついてきてくれたかもしれない。
悔しく思う気持ちはレオもルービも同じだった。
だがここで諦めて立ち止まってはいられない。
レオたちは次の集落に向けて出発する。
「落ち込まないで」
「……ありがとう、フーニャ」
フーニャがサッとレオの前に手を差し出した。
流石に歩きながら頭を撫でるのは大変だけど手の肉球をプニらせてくれるらしい。
フーニャらしい励ましにレオは思わず笑顔になる。
「ご主人様だけ、特別」
「うん、気持ちいいよ」
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