暴れろ、本能1
199モフポイント。
日頃のモフ行為に加えてミカオとフーニャのお腹をモフらせてもらって結構ポイントが溜まった。
これだけあれば十分に戦えるだろう。
レオは奴隷に偽装したフーニャを連れてとある酒場を訪れた。
そこでメルビンダと落ち合い支払うべき金額の半分を先に渡した。
残りはちゃんとメルビンダが仕事をしてからである。
前回と同じくアルモフトラズ刑務所横にある小屋に案内された。
「連れてくるから待ってください。それと奴隷を受け取ったら出来るだけ速やかに町を離れてください」
今回はレオは刑務所の中に入らずメルビンダだけが入っていった。
「ちょっと緊張するな」
この後アルモフトラズ刑務所を襲撃する。
多くの獣人たちの命がかかっていると考えると自然と緊張もしてしまう。
レオは小屋のドアを開けて合図する。
「何も疑っていないようだな。よほどお金が必要らしい」
小屋の近くにある木の上からトブルとクロウルが降りてきた。
「自分たちの金なのにな。おめでたいこった」
メルビンダのことを調べてみると面白いことが分かった。
メルビンダという看守、実はバーミットの配下であったのだ。
アルモフトラズ刑務所で働きながら色々な情報を集め、奴隷を扱ってお金を得てバーミットに送っていたのである。
メルビンダが簡単にレオに奴隷を売ったのはレオがバーミットのお金を盗み出したために急遽資金が必要になったためでもあったのだ。
レオからお金を巻き上げてもそれはバーミットのお金であり、盗まれたお金が戻ってきただけになる。
「周りには警戒している奴もいない。普段からこうなのか、焦ってるのかは知らないが不用心だな」
「我々にとっては都合がいい」
「まあ、そうですね」
クロウルはポケットから小さな笛を取り出して吹いた。
レオには何も聞こえていないが実はフーニャには高い音がなっているのが聞こえていた。
今拭いたのは犬笛であった。
人間には聞こえない音域の音を出す笛で人間にバレないようにこっそりと意思疎通を図るときに使われることがあるのだ。
笛を吹いて程なくして小屋に獣人たちが小屋に集まってきた。
獣人たちは解放軍のメンバーであった。
「もうここまでくれば俺の仕事は半分終わりだな」
レオは大きな役割を果たした。
囚われた解放軍の仲間を確認し、さらにはアルモフトラズ刑務所に入るための秘密の通路まで見つけた。
これ以上ないほどの働きといえる。
「あとは獣人たちがうまく抜け出してくれれば……」
「こちらに任せてくれ。それに……アレもあるのだろ?」
「はい、もちろんです」
獣人たちが逃げるためにレオができることはまだある。
トブルに対してレオはニヤリとした笑みを返す。
「ご主人様、来るよ」
フーニャが戻ってくるメルビンダの足音を察知してレオに声をかける。
獣人たちはサッと隠れてレオは小屋の中に戻る。
「お待たせしました。こちらがお望みの獣人です」
「おお……」
近くでみるとラオナールはより大きかった。
転生する時に会った獣人の神様レイラよりは一回りほど小さいけれど、それでも体格的にレオよりも普通に大きくてレオは感動していた。
対して太い金属の首輪をつけられたラオナールは蔑むような目でレオのことを睨みつけている。
「最後にもう一度確認しますがこいつで本当にいいんですね? こんな目をしていますが」
「構わない」
「そうですか……」
改めて変人だとメルビンダはややひきつった笑みを浮かべた。
むしろラオナールの方が心配になってくる。
これからどんな目に遭わされるのだろうかと自分の頭では想像できないと思った。
「ちょっと具合を確かめたい。小屋から出てもらってもいいか?」
「…………分かりました」
何の具合だとは聞かない。
もしかしたら獣人愛者の側面もあるのかもしれないしお金さえ払ってもらえるならメルビンダは何でもよかった。
あまり小屋を汚されたら困るなと思いながらもメルビンダは小屋を出た。
「えっ?」
出た瞬間メルビンダは切り裂かれた。
「悪いな人間。特にバーミットの部下なら生かしておけないから」
クロウルの一太刀でメルビンダは上半身が斜めに切られて、何が起こったのか理解することもできずに死んだ。
「……私をどうするつもりだ」
低めの声、可愛い。
抵抗できないなら一度ぐらいモフってもいいのではないかという悪い考えがレオの中に浮かんでしまう。
「ぶ、ダメ」
もはやレオの考えはお見通しのフーニャがレオの頬を肉球でつついた。
「分かってるよ」
少しおかしいとラオナールは感じた。
獣人でなくとも奴隷があんな主人を軽んじるようなことをすればひどい目に遭う。
なのにフーニャは反省した様子もなく、レオは少し笑っている。
今の肉球接触でも1モフポイントが回復したぐらいでレオはもちろん怒るつもりはない。
「俺はあんたに酷いことしないよ。なぜなら……」
レオはポケットを漁って1枚のコインを取り出してラオナールに見せる。
「俺も解放軍だからだ」
「何……!?」
「こちらは終わったぞ」
「……トブル!」
レオが解放軍ということに驚いているとメルビンダの懐から鍵を盗み取ったトブルが小屋の中に入ってきた。
ラオナールはトブルの顔を見て驚きが隠せないようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます