暴れろ、本能2
「じゃあ……本当に? この変な目をしたやつが?」
「……変な目をしてても仲間だ」
変な目をしていることについてはフォローしてくれない。
「…………睨みつけてすまなかった」
なんだか思うところはありそうな顔をしたラオナールだったがトブルが仲間だと認めたので殺しそうなほどに睨んだことを謝る。
「まあ、大丈夫ですよ」
変な目で見ていたという自覚はある。
睨みつけられても仕方がない。
むしろちょっとゾクゾクしたぐらいだとレオは思う。
獅子の目で睨みつけられるのは意外と悪くない。
「それで私を助けに来たのか?」
「それもある。だが本来の目的は別だ」
トブルはラオナールに対して今日の目的を話した。
ハンビトガイがアルモフトラズ内部の獣人たちを狙っていて、それを阻止するために脱獄を考えている。
ラオナールのこともいるかもしれないと分かったので協力を求めるために先に助け出したのである。
「話は分かった……だがこれがある」
ラオナールは顎を上げた。
首には太い奴隷の首輪が付けられている。
奴隷の首輪には相手を従属させる特殊な魔法がかけられている。
かなり強力な魔法で半ば呪いにも近いものである。
そして獣人を従属させる時には奴隷の主人の言うことを聞かせるだけでなく、人間に手を出さないような命令も同時に従属の魔法の一部として組み込まれている。
主人を守るために殺さない程度に戦うぐらいなら一応許容されるのだが人間を相手にする時はほとんど戦えなくなってしまうのである。
だからせっかく助け出してもらってもラオナールはほとんど戦えないのだ。
「レオ、いけるか?」
「少し触れますよ」
「どこに触るつもりだ」
「首輪ですよ」
レオがラオナールのことをすごい目で見ていたことは事実である。
なので手を伸ばしてきたレオをラオナールは少し警戒する。
「ケモアイ!」
『ケモアイを発動します。
奴隷の首輪に相手を従属させる魔法がかけられています。モフポイント100で魔法を破壊することができます』
ラオナールに触れないように気をつけて軽く首輪を持ち上げてじっと見てみると頭の中に首輪の情報と解除するために必要な情報が流れ込んでくる。
「ひゃっ……100!?」
思わず驚いてしまった。
「どうした? 解除できないのか?」
「いえ、できます」
ミカオやフーニャの時はせいぜい30モフポイントだった。
なのにラオナールの首輪の魔法を破壊するためには100モフポイントも必要なのである。
もしかしたらラオナールを従えるために魔法も強めなのかもしれないとレオは思った。
やはりたくさんポイントを溜め込んでおいてよかった。
「いきますよ」
『モフポイントを100使い、アンチマジックを発動します』
今溜め込んでいるモフポイントは200ある。
そのうち半分を使って魔法を発動させる。
「うっ!」
首輪が一瞬赤くなるほどに熱を持った。
そして甲高い金属音を立てて二つに割れて床に落ちた。
「……ま、マジかよ……」
首を触ってラオナールはとても驚いたような視線をレオに向けた。
奴隷の首輪を破壊することは簡単ではない。
場合によってはしばらく隠れ過ごすこともラオナールは覚悟していたのにレオはいとも容易く首輪を壊してしまった。
「レオ!」
「うわっ!?」
「お前最高だな! 少しぐらいいやらしい目で見ても許してやる!」
『ケモッ娘ラオナールをモフりました。
同意のあるモフです。
接触の多いモフりです。
一方的なモフりです。
モフポイントが5回復しました』
一気にテンションが上がったラオナールがレオのことを抱きしめた。
力は強いがちゃんと加減してくれていて、抱きしめられた感想では意外と柔らかいだった。
ラオナール、胸が大きいのだ。
ミカオは胸が小さく、フーニャは普通ぐらい。
対してラオナールは意外と胸があって、身長差もあるために抱きしめられるとちょうどレオの顔が胸の付近に当たるのだ。
服は着ているために毛を堪能できるので袖から出ている腕ぐらいだけど毛もそんなに硬くない。
「こうしてみると顔も悪くねぇじゃねえか」
ラオナールがレオの顎を持ち上げて顔を覗き込む。
まさかケモッ娘にアゴクイされる日が来るなんて。
ラオナールの手はケモが人によったミカオタイプの手で肉球は割と硬めで弾力がある感じ。
「それじゃあ暴れたらいいのか?」
「いや、あのメルビンダという男から鍵を回収できた。バレるまではこっそりと行動しよう。バレたら暴れる」
「了解」
レオを抱きしめたままラオナールはニヤリと笑った。
レオはこのまま小屋待機となり、トブルやクロウル、ラオナールを始めとした精鋭たちが小屋からアルモフトラズ刑務所に入っていく。
「ギュッ」
「……フーニャ?」
ようやくラオナールから解放されたレオをフーニャが後ろから抱きしめる。
ポッと出の女にレオを取られてちょっとご機嫌斜めなのである。
『ケモッ娘フーニャをモフりました。
モフポイントが2回復しました』
一応これもモフ行為の一部らしくモフポイントが回復する。
「この浮気もん」
「ミカオまで……」
怖い目をしたミカオも小屋の中に入ってきてレオの脇腹を強めにつつく。
小屋のドアは開いていたのでレオの姿を外から見ていたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます