暴れるな、本能1
後日レオのところにメルビンダからメッセージを預かったという少年が訪ねてきた。
ラオナール引き渡しの日が決まったのである。
「ミカオ……本当にいいのか?」
「知らない……勝手にすればいいでしょ」
消えいるようなミカオの声。
ベッドの上で横たわり服をはだけさせてお腹を出したミカオは恥ずかしさのあまり腕で顔を隠している。
横のベッドではフーニャがその様子を見ている。
これはレオが強制したことではない。
ラオナールを助け出した後レオたちはアルモフトラズ刑務所を襲撃するつもりだった。
アルモフトラズ刑務所にはラオナール以外にも解放軍の獣人が囚われていて助け出したいと考えていた。
それにこのまま放置しておけば過激派組織であるハンビトガイにアルモフトラズ刑務所内の獣人たちは抹殺されてしまうかもしれない。
その前に手を打たねばならず、それならばいっそのこと獣人を全員脱獄させてしまおうということになったのだ。
その過程で何が起こるか分からない。
万全の備えをしておかねばならない。
レオも戦ったりするためにモフポイントを出来る限り溜めておかねばならないのである。
毎日のモフモフでモフポイントも溜まってきた。
けれどもうちょっと溜めておきたいと思ったらよりミカオかフーニャと濃厚なモフ行為が必要となる。
以前から時々話に出ていたお腹をモフらせてもらう。
これをフーニャが提案した。
レオならいいよ、そう言ったのだ。
「早くしてよ……恥ずかしいんだから」
ならばどうしてミカオが今レオの前でお腹をさらしているのか。
これもまたフーニャが言ったのだ。
ミカオの方が先輩だからやるならまずミカオから。
レオからしてみれば謎の理論ではあるが、フーニャなりの気遣いであった。
ミカオもレオのことを好いている。
レオと先に出会ったのはミカオだけどどこか素直になりきれていない部分がある。
ここでフーニャがレオにモフられてもいいのだけど抜け駆けしてしまうような感覚があった。
ミカオはレオと同じくフーニャにも親しく接してくれる。
ミカオは旅の仲間であり、友達でもあるのだ。
だからミカオが先。
腹モフを提案されてミカオは一度断った。
そんな恥ずかしいことできるはずがないと。
しかしミカオは実は一度腹モフ未遂は起こしている。
バーミットのところに捕われている時にお腹をモフらせる必要があると思い込んで服を脱いだことがあった。
結局ミカオはフーニャに押される形でレオに腹モフさせることになったのだ。
ただすごく恥ずかしいとミカオは思った。
バーミットに捕らわれていた時は必要に迫られていたし勘違いもしていた。
けれど今は自らベッドに横たわりお腹を出している。
もっと先の行為の一歩手前みたいではないかと顔から火が出そうになっている。
「いくよ……」
レオがベッドに膝をつく。
顔を腕で覆っているミカオにレオの姿は見えていないがマットレスの沈み込みでレオの存在を感じずにはいられない。
極力ミカオに触れないようにしながらベッドに手をついたレオはそっとミカオのお腹に顔を寄せていく。
(ちゃんとお風呂入ったし、フーニャも臭くないって言ってくれたから大丈夫……)
「ん……」
レオの吐息がミカオのお腹の毛に触れて思わず声が漏れてしまう。
別にえっちなことをするわけじゃない。
時々頭を嗅いだりすることの延長みたいなことなのに意識すればするほどに頭の奥まで熱くなっていく。
でもそんなに嫌じゃない自分もいて、それもまた恥ずかしいのである。
レオの鼻が触れ、そして顔をミカオのお腹にうずめていく。
最初は触るなり段階あるだろうというツッコミをする正常な思考の持ち主はおらず、なぜなのかお腹をモフるということの第一段階として顔をうずめるということにレオは成功したのである。
『ケモッ娘ミカオのお腹をモフりました。
同意のあるモフです。
接触の多いモフりです。
ミカオは嬉しそうにしています。
得られるモフポイントが増加します。
モフポイントが21回復しました』
頭の中でモフポイントが得られたという情報が聞こえてくるけれどレオは聞いていなかった。
雲の上に寝転がることができたらこんなに気持ちがいいのだろうかと思った。
顔面で感じるミカオのお腹の毛。
呼吸のたびに上下してレオの顔をくすぐる。
もう少しだけ顔を下げてみると鼻の先がミカオのお腹についた。
もちっとして柔らかな触感がある。
女の子らしさもある可愛らしい感触だ。
レオの脳天に爆発でも起こったようだった。
こんな幸せなことあっていいのか。
「ヒャンッ!」
レオが思わず息を漏らすとミカオはくすぐったそうにしている。
「レ、レオ?」
「……嬉しそう」
ふと顔を上げたレオにミカオはもういいのかと不思議そうに視線を向けた。
幸せそうな顔で天を見上げたまま涙を流して動かない。
ミカオのお腹に涙や鼻血を垂らすことがあってはならないとなんとかギリギリのところで顔を上げたのだ。
余韻に浸るレオの様子を見て嬉しそうならよかったかなとミカオはまた勝手に尻尾が振られていたのであった。
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