潜入、アルモフトラズ刑務所3
「どうですか?」
「……いいですね」
レオは思わず鼻息が荒くなる。
流石に重犯罪者となると反抗的な目をしているものも多い。
それに興奮しているから、ではない。
「あれはリカオン……あれはジャッカル? もしかして、ピューマ?」
獣人として多いのは犬や猫などのわかりやすい種類のもので、犬や猫の中でさらに種類があるような感じだった。
しかし少ないながら別の種類のケモッ娘もいる。
代表的なのがミカオだろう。
ミカオは犬ではなくオオカミの獣人である。
重犯罪者たちの中にも犬や猫の獣人はいるのだけどなんとなく犬や猫じゃない獣人もいた。
動物的知識もあるレオには分かる。
ただのケモッ娘ではないということが。
「……なに見てんだよ」
レオがキラキラとした目で見ていたピューマのケモッ娘が視線に嫌そうな顔をした。
猫よりもややいかつい顔をしているがレオから見てそれは魅力でしかない。
モフモフというよりも毛は短いがそれもまた触ってみたかった。
やたらと絡みつくような視線にピューマのケモッ娘は背中がゾワリとしていた。
レオがそんな態度を取るたびにメルビンダはレオのことを変態だなと見ている。
「もうここまで来ると女の囚人は……ああ、1人いますね」
「この子は……」
奥に行くほどにケモッ娘が少なくなり、男の獣人がほとんどになった。
もう一番奥の行き止まりが見えるところまで来ていたレオは一人のケモッ娘に目を奪われた。
「見つけた……」
探していたケモッ娘がいた。
解放軍の中でも最強と名高い獣人がアルモフトラズ刑務所に囚われていることがバーミットの資料から分かった。
死んだと思われていたのにこんなところにいたのかと解放軍の中では驚きがあった。
本当にいるのかという調査もレオの目的の一つなのである。
「この子の名前は?」
「こいつは……ラオナールと言います」
「ラオナール……」
名前も聞いていたものと一致する。
重犯罪者用の独房には窓がなく通路上からの格子の間から差し込む光だけが独房の明かりとなる。
奥側の隅の光の当たらない場所にラオナールは座っていた。
手足に手錠がはめられていて鎖で壁に繋がれている。
金色にも近い瞳だけがジッとレオのことを見据える。
「獅子のケモッ娘」
ラオナールは獅子のケモッ娘であった。
「この子買えるのか?」
「こ、この囚人をですか?」
「そうだ」
メルビンダは動揺した顔をする。
こんな奥にいるということは女性の獣人の囚人の中でも最も重罪であるということになる。
簡単な相手ではなく、メルビンダも簡単には判断をできなかった。
「……値は張りますよ?」
少しの間悩んだメルビンダだが重犯罪者ということはそれだけ長く収監されるということであり、いなくなればそれだけ負担も減ることになる。
「いくらでも構わない」
「……分かりました。ですがすぐにとはいきません。手を回し、奴隷の首輪の準備をしますので」
「こちらも急ぎはしない。しっかりと準備してくれ」
ラオナールの確認はできたし本当に外部の人間に獣人を売っていることも確認できた。
中のルートも分かったし上手くアルモフトラズ刑務所に潜入することができたと思う。
「おっ、メルビンダじゃないか? 何してる?」
外に出ようと通路を戻っているとメルビンダと同じ看守の男性が歩いてきた。
隠れるような場所もないので普通に向こうに気づかれてしまう。
「パラジュートか。客だ」
「客? ……はぁ〜こんなところにか」
どうやらパラジュートという男はメルビンダと同じ秘密を共有しているらしい。
重犯罪者の獣人がいるところまで来るなんて物好きがいるのだとパラジュートは不思議そうな顔をしている。
「まあなんでもいいや。他のやつにバレないうちに早くいけ」
「悪いな」
「分け前は寄越せよ」
軽く手を振るパラジュートとすれ違い、レオたちは男の獣人のゾーンを抜けて地下水路を通ってアルモフトラズ刑務所外にある小屋に戻ってきた。
「問題はなかったか?」
「大丈夫」
フーニャは小屋に置いてあった机に腰掛けて足をぶらぶらとさせていた。
「レオ様に手を出さないように町の連中に話を通しておきましょう」
ここで変に誰かに手を出されても困る。
看守団も良い人ばかりではなく悪い人とも繋がりがあるのでお金を見せてしまったレオに近づかないように言ってくれることになった。
レオはメルビンダに前金としてお金を渡してアルモフトラズの町に戻ったのであった。
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