変態が故に2

「ありがと」


 レオはフーニャの心地よい重さを感じながらそっと頭に手を乗せて撫でる。


「ごろごろ……」


 フーニャは撫でられると嬉しそうに喉を鳴らす。

 普段のフーニャの可愛らしい声とはまた違うごろごろ音は密着しているレオの体にも振動を伝える。


 このごろごろとした振動もまた心地がいい。


「むぅ……」


 その様子を見てミカオは少し頬を膨らませている。

 なんでこんなにレオとフーニャが仲良くしていることが気に食わないのかミカオ自身理解ができていない。


「私先寝る!」


 ミカオは厚めのマントを体に巻き付けて腕を枕にして横になった。


「フーニャも先に寝たらどうだ? 戦って疲れてるだろ?」


「……そうする」


 フーニャはもうちょっとこうしていたい気分でもあったが言われてみれば眠い。

 ここはレオに甘えることにしてフーニャも横になった。


「レイラ、ありがとう」


 2人が寝たことを確認したレオは天に向かって祈りを捧げ始めた。

 この世界に来てから割と厳しさもあるけれどケモッ娘という存在がレオの大きな支えになっていた。


 ケモッ娘と出会い、ケモッ娘と一緒にいられる。

 感謝をせずにはいられない。


「それに……ケモッ娘に好かれるというのも本当だったな」


 レイラと対面して話したのはかなり短い時間だったのだが、実はその後色々な説明を受けていた。

 光に包まれて異世界に転生したが、その間には時間があってレイラからいくつか異世界や能力などについて聞かされたのである。


 なんでも魂を神の国に留めおくのは制限があって短い時間しかできなかったけれど、魂を異世界に転生させるために色々準備するための時間と称して説明時間を作ってくれたらしかった。

 レイラからの説明の中でレオは獣人に好かれる才能があるのだと言っていた。


 これは神が与えた能力ではなくレオ自身が持っているもの。

 獣人は人間よりもはるかに感覚が優れている。


 相手が自分に対してどんな感情を抱き、どう接してくれるかということを本能的に察することができる。

 レオは無類のケモッ娘好きである変態だ。


 獣人に対して偏見がなく人と同じ以上に対等に扱ってくれて、さらにケモッ娘ならば無性の愛を持って接する。

 するとどうだろう。


 ケモッ娘はレオが悪人でないというだけでなく自分に対して愛を持って接してくれているということを本能的に察知するのだ。

 安心できる相手、信頼できる相手だとレオのことを思うのである。


 ついでにレオの言葉には嘘偽りがない。

 可愛いといえばケモッ娘はそのまま可愛いのだと受け入れられるし心からのものだと分かる。


 天然物のケモッ娘キラー、それがレオなのであった。


「まあこの対ケモッ娘用ヒューマンボディーの影響もあるんだろうな」


 ケモッ娘に好かれる要因はレオの変態的な愛だけじゃない。

 レオの体も特別製であった。


 死んで魂だけになったレオはこの世界に転生するにあたって新たな体を与えられた。

 基本的には前の体をベースに作られるがある程度融通が利くというのでレオは迷わずお願いした。


“ケモッ娘に好かれる体に!”


 そのためレオの体は人間らしい匂いが抑えられ、ケモッ娘にとって心地よさの感じる香りがしている、らしかった。

 レオの鼻では分からないので効果の程は確かではないが、今のところは効果ありそうだと思った。


 ケモッ娘とならばどんな困難も乗り越えられる。

 レイラのためにも、ケモッ娘たちのためにも獣人たちをなんとかしてあげようとレオは決意を新たにした。


「やっぱり王……とまではいかなくてもケモッ娘が安心して暮らせる国のようなものが必要かな?」


 ここまで見てきた感じでは獣人に対する人間の偏見は根深いものがある。

 人間の国で獣人が暮らせるようにしろと言ったところで実現することは難しいように思われた。


 それなら獣人たちを集めて獣人が安心安全に暮らせる国のようなものを作った方がよさそうな気はした。

 レイラは王にでもなればいいと言った。


 多少は冗談なつもりだったけれどもしかしたら本気でそうしたものを目指したほうがいいのかもしれない。


「ケモッ娘の王……グヘヘ」


 色んなケモッ娘が周りにいる。

 そんな自分の姿を思い浮かべてレオは1人気持ち悪く笑っていたのであった。

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