どうも異世界人です1

 朝ミカオを撫でさせてもらい、モフポイントを10まで回復させておいた。

 いつ戦いがあるのかも分からないしモフポイントはなんぼあってもよろしいですからねということとなんとなくミカオが拗ねた感じもしていたのでモフったのだ。


 頭をわしゃわしゃと撫でてやると文句を言いながらもミカオは尻尾を激しく振って嬉しそうにしていた。

 おかげで朝のミカオはご機嫌であった。


 とりあえずレオたちは解放軍の支部があるというドーケに向かって移動を続けている。


「あれが……魔物?」


「うん、ゴブリンってやつだね」


 ここまで道を歩いていると特に遭遇してこなかったのだけどとうとうこの世界にいる魔物というやつにレオも出会った。

 ゴブリンという人の子供ほどのサイズの二足歩行の魔物で、くすんだ緑色の肌の醜い顔をしている。


 醜悪という言葉を魔物にしたらこんな感じなのかもしれないとレオは思う。

 現れた2匹のゴブリンはどこからか拾ってきたような錆びた剣を振り回して、奇妙な鳴き声でレオを威嚇する。


「まって、フーニャ」


「何?」


「俺にやらせて」


 実際のところ少しだけ後悔してることがある。

 この世界に来て最初ユーファンを助けようとして失敗した。


 モフポイントを得てなんとか事なきを得たものの危ないところだった。

 レオはケモッ娘をモフることによってモフポイントを得られるという世界でただ1人の特殊能力の持ち主であるのだが、逆に言えばモフポイントがなければ何もできないとも言えてしまうのだ。


 もうちょっと強い体を、とかお願いしておけばよかったと思う。

 しかし時はすでに遅し。


 ならば今からできることをしていかねばならない。

 モフポイントがあれば戦えるのだからひとまず戦い方というものを覚えていかねばならないとレオは考えていた。


 いつまでもミカオとフーニャの後ろに隠れてはいられず、むしろ2人を守るぐらいの男になりたい。

 ゴブリンは2匹、あまり強い魔物でもないので戦う練習をするのにちょうどいい。


「危なくなったら助けて」


「うん」


「怪我しないでね?」


「頑張るよ」


『モフポイントを2使い、身体能力を強化します』


 念のため最低限必要な1モフポイントではなく2モフポイントを使って身体能力を強化する。


「いくぞ!」


 レオの方からゴブリンに向かっていく。

 剣を肩に抱えるようにして振り下ろす大振りの攻撃は最も容易くゴブリンにかわされてしまい、剣先が地面に突き刺さる。


「げっ!?」


 かわしたゴブリンがケケケと笑い、レオに向かって錆びた剣を振り下ろそうとした。


「おいしょ!」


 なんとか剣を引き抜いて錆びた剣を弾き返す。

 危なかったと内心冷や汗ダラダラ。


「レオ! もっとコンパクトに剣は扱って!」


「……わかった!」


 不思議な魔法は扱えるけど剣の扱いは全くのど素人だなと見ていたミカオは思った。

 あんなに大きく振り回していては分かりやすすぎて当たるものも当たらないし、体力だって消耗してしまう。


 レオはミカオのアドバイスを受けてもっとコンパクトに剣を振るように気をつける。

 姿勢も何もあったものではないがただ振り回している時よりもいくらかマシにはなった。


 レオの剣が当たってゴブリンがギィッと悲鳴を上げる。


「どりゃあ!」


 ゴブリンが怯んだ時がチャンス。

 そのまま1匹を切り倒し、もう1匹も勢いで倒し切った。


「ハァ……」


「へたっぴ」


「う……厳しい意見」


「そうね。子供が戦った方がまだマシよ」


「ううぅ……」


 流石のミカオとフーニャもフォローのしようがないくらいひどい戦いだった。

 なんとか押し切ったけれど相手がゴブリンという弱い相手だからなんとかなっていたにすぎなかった。


「うーん……私も強いってわけじゃないけど少し剣を教えてあげるわ」


「本当か?」


「このままじゃ危なっかしいもの。レオに怪我されたら嫌だし」


「ありがとう、ミカオ」


「ふ、ふん!」


 口ではそっけないけれど尻尾は振られている。

 全く素直じゃないオオカミちゃんだとレオはニヤニヤが止まらない。


「な、何笑ってんのよ!」


「いや、嬉しいなと思ってさ」


 ケモッ娘が自分のことを考えてくれている。

 これ以上嬉しいことがあろうか。


「レオは私が守ったげる」


「フーニャもありがとな」


「ふへへ、ニャン」


 フーニャを褒めてやると尻尾がピーンと立つ。

 目が見えない分の分かりづらさは少しあると思っていたけれどよく見るとフーニャの感情も分かりやすかった。


「今度は魔法だ」


 この辺りはゴブリンが多いようだ。

 再びゴブリンが現れて次は魔法を試してみることにした。


『モフポイントを2使い、肉球ウォーターを発動します』


 これまで炎を使ってきたレオであるが使える魔法は炎に限ったものではない。

 澄んだ清らかな水をイメージして魔法を発動させると青い魔力が放たれて、水へと変化していく。


 相変わらず肉球の形になってしまうのはご愛嬌である。

 ただケモッ娘と同じく可愛い見た目に騙されるなかれ。


 ゴブリンに真っ直ぐ飛んでいった水の肉球はゴブリンたちを一撃で吹き飛ばしてしまった。


「魔法使いの方がいい」


「私も同感」


「確かにな」


 モフポイントを使った魔法はミカオとフーニャの目から見ても強力であった。

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