変態だけど、変態だから……
「なんなの、アイツ!」
地下にある牢屋にの前から一階に上がってきたミカオは息を切らせていた。
心臓が妙に大きく鼓動している。
てっきり解放軍から助けが来たのかと思った。
なのに解放軍じゃなかった。
変態だった。
モフるという言葉はミカオには分からなかったけれど吸ったり撫で回したりなんて、それはもう少しえっちな行為ではないか。
「でも……」
ミカオの尻尾が意思とは関係なく激しく振られる。
恥ずかしくてミカオは誰も見てないのに腕で顔を隠した。
「魅力的……なんて初めて言われた」
お腹に顔をうずめたい。
すごい変態的行為だけどそんなことをしたいほどに魅力的に思ってくれているのだと考えると尻尾が飛んでいってしまいそうなほどに振られる。
「どうしちゃったんだろ、私……」
相手は人間。
嫌いなはずの人間なのにどうしてこんなにドキドキするのか分からない。
「吸いたいだなんて変態だよ……」
しかしそれで奴隷から解放されるのならと頭の中で理由をつけ始めている。
今一度レオのことを思い返してみる。
ただの一度だってレオはミカオのことを蔑んだり下に見るような目をしたことはなかった。
人間が獣人を見る目は冷たい。
特に奴隷となっている獣人に対しては物を見るような視線を向けるものもいる。
ミカオが奴隷だと聞いた時レオはどうしたか。
ほんの一瞬だけど怒りのようなものが見えた。
ミカオが奴隷だと聞いてレオは怒りの感情を覚えた。
それはミカオが奴隷にされているから、ケモッ娘が奴隷となっていることに怒っていたのである。
そんな人間ほとんどいやいない。
「もー……」
どこか嫌いなところを見つけてこの感情を終わらせようと思っているのにレオはミカオに対して嫌なことを一つもしなかった。
褒めてくれて、真剣な目で対等に見てくれた。
奴隷から解放したいと言ってくれて、なんだかすごく、感情と尻尾が揺り動かされる。
モフるとかやれば解放するのだとレオは本気の目をしていたと考えれば考えるほどに思った。
けれどもまだただの異常性欲者の変態という可能性も捨てきれない。
「もうちょっと……観察してみよう」
それで信頼できそうなら多少モフるとかやらせてもいいかもしれないとミカオは思った。
ーーーーー
ミカオは男たちの奴隷とされている。
ただ体に手をつけられるなんてことはなく、召使いのような扱いを受けていた。
家全体の管理を任されていて常にピカピカにしておかねば殴られたりする。
料理なんかもやらされたりするので食料に関してもほんの少しだけ融通がきく。
飯を持っていけとは言われていないが牢屋で死なれても困る。
掃除しなきゃいけないし、きっと死んだら怒られるのは自分だからなんて頭の中で言い訳しつつレオにご飯を運ぶ。
といっても粗末なものだ。
でもレオはミカオが来ると嬉しそうな顔をするのだ。
モフらせてほしいとは言わないけどやはり見下したような目はしない。
「あなたは……獣人を蔑んだりしないの?」
「どうして俺が?」
「だって……獣人だから」
「なんだよそれ。生きてるだけで蔑まれることなんてない。ミカオが悪人だっていうなら別かもしれないけど……ミカオが悪いことするなら理由があるんだろうなと思うから、結局は蔑むことなんてないよ」
「なんで……そんなに」
「人間だからとか、獣人だからとか関係ないだろ? こうやってちゃんと話して分かり合えるんだ。差別なんてしないよ」
ただ無条件でケモッ娘に関しては信頼が高い。
ここまで築いた関係を崩したくないのでギリギリ口に出すことはしない。
「夜、寝ないで待ってて」
「えっ? あっ、おい……」
ミカオはレオが食べ終えた食器を回収すると走っていく。
「信じてもいいかな……」
信じさせてほしい。
ミカオはレオのことを信じてみることにした。
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