ああ、ケモッ娘4

「あなたに? そんなこと無理よ。これを外せるのはつけた本人か、すごい魔法使いだけ。そんなところで捕まってる常識知らずのあなたにそんなことできるとは思えないわ」


 奴隷の首輪を簡単に外せるなら誰も苦労はしない。

 しかしほとんどつけた本人しか外せないようなものである。


 ましてごろつきにボコボコにされて捕まるような人が奴隷の首輪を外したり破壊したりできるはずがない。


「できると言ったら?」


「信じないわ。ならやってみせてほしいものね」


「できる。ただし君の協力が必要だ」


「私の? ……何をしたらいいの?」


 奴隷の首輪を外してくれるというのなら文句はない。

 失敗してもミカオに損はない。


 ただただレオの言うことを二度と聞かなくなるだけである。


「……君をモフらせてくれないか?」


 奴隷の首輪を破壊するのにはモフポイントが必要である。

 そのためにはケモッ娘をモフらねばならない。

 

 今この場にいるケモッ娘はミカオだけである。

 つまりミカオをモフらせてもらわねばならないのだ。


「その、モフっていうのは何をすればいいの?」


「君の体に顔をうずめてにおいを嗅いだり、全身の毛を触らせてほしいんだ」


 レオは爽やかな笑みを浮かべてモフるということを説明した。


 ガシャン。ガチャ。


「ちょちょちょ! 待ってよ!」


 それに対してミカオは嫌そうな顔をして牢屋の外に下がって鍵を閉めた。

 この変態は閉じ込めておかねばならない。


「何が目的か言いなさい、この変態!」


「待ってくれ、ただこんなことをするだけなんてタチの悪い冗談を言うわけないじゃないか!」


「はん、なに、性欲でも溜まってるの? 獣人なら騙せるとでも?」


「そんなんけない! 本気なんだ! モフらせてくれれば奴隷の首輪を壊せる。本当なんだよ!」


「もっとマシな嘘つけば? 私みたいな可愛げのない獣人、獣人だって……」


「そんな! 君は魅力的だ!」


「は……はぁっ!?」


「できるなら君のお腹に顔をうずめたい! でも嫌だろうから首筋とか……」


「変態!」


「あっ、まっ……あぁ……」


 褒めたつもりだったのだけどちゃんと伝わらなかったのかミカオはそのまま走っていってしまった。

 ミカオの助けが得られなければモフポイントは残り1。


 とてもじゃないが逃げ出せはしない。

 またグレーシオという大男とお話しさせられると今度は死んでしまうかもしれない。


「……はぁ」


 ちょっと説得の仕方を失敗したかもしれない。

 レオは壁を背もたれにして床に座り込む。


 美人ケモッ娘を前にして興奮が抑えきれなかった。

 もっと慎重に言葉を選んで説得すればよかったのにお腹に顔をうずめたいなんて欲望に忠実な言葉が口を出てしまった。


「まだ諦めない……俺はケモッ娘マスターになるんだ」


 この1日でも2人のケモッ娘に出会った。

 もうその時点でユーファンとミカオもそれぞれケモッ娘として種類が違っていた。


 この世界にはさまざまなケモッ娘がいるのだとレオに希望を与えてくれた。

 世界中のケモッ娘に会うまで死ぬことなんてできない。


「神様にもケモッ娘を救ってくれと言われているしな」


 与えられた使命はまだまだ走り出したばかりだ。

 困っているケモッ娘を残していくことなんて許されない。


「……とりあえず寝よう」


 走り回って疲れた。

 殴られたところはまだヒリヒリと痛む。


 今は良い考えも浮かばない。

 寝て体力を回復し、頭をスッキリさせればまた違うかもしれない。


 ミカオの説得も諦めない。


「明日もまた……ケモッ娘に会いたいな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る