第十七話「戦闘バトルばとるっ」

「いきなりきて何かましとんのや。こいつら……ワイらなめられとんのちゃうんけ」


 福耳に目立つピアスじゃらじゃらの坊主頭が胡散臭い関西弁でイキる姿は滑稽だ。

「アッハッハ大きな福耳だから聴こえちゃいましたぁ。汚すぎてなめれまへんがな」


 ちょびっとずつ進みながら全力で煽り返すリンちゃんは……珍しいほどマジメ顔。

北部茨木出身で一見ひょろっと男子でも刃牙大好き格闘技マニアの武闘派なんだよ。


関東こっちで流行らない商売繫盛のえべっさんぽくて人気者だから笑っちゃダメじゃん」

 待って……大阪プロレスお笑いレスラーじゃないし高校生の湘爆にハゲはいない。


 リンちゃんヒバリくんに学生たちは清掃チームの定番服……ポロシャツと綿パン。


 一見するとイケメン爽やか好青年でも本質は腹黒で挑発しながら煽るヒバリくん。

敵対するヤンキー五人組は懐かしい湘爆のコスプレイヤーっぽいし絶妙な雰囲気だ。



 そんなもんしらへんわとか昭和ナツいなんてノリツッコミが裏で響いた気もする。



 少年マンガで一番マイナーなKING誌面の連載はちょっぴり前に完結している。

それでも紫リーゼントの主人公は令和まで人気の高身長俳優さんと同姓名漢字違い。


 映画のオーディションに応募して採用された経緯が話題をさらい人気急上昇した。

OAV発売されたアニメの出来が良くやり直す前のサブスクで目にした記憶はある。


 古き良き時代の原作マンガ五人は神奈川県湘南地方の暴走族で情に厚い高校生だ。

前にいるのはヤクザ舎弟チーマーっぽいおバカさんで強そうには見えないんだけど。



「アチャー!」おかしな声に目を向けるとリンちゃんはブルース・リーの真似事だ。

 ケンシロウの怪鳥みたいな声「ほわたぁ」シャドーボクシングで回し蹴りを放つ。


 ヒバリくんが四本指でクイクイ挑発する仕草は映画「ドラゴンへの道」っぽいし。

早稲田学生チームは体育会系で肩幅が広いアメフト部に空手と柔道の師範代らしい。


 ちょうどチンピラ五人組に対してこちら側も同じ数で見た目と年齢的に釣り合う。

柔道空手の試合形式で勝ち抜き団体戦なら先鋒・次鋒・中堅・副将・大将のはずだ。


 少しだけ趣を変えて格闘ゲームの実況っぽくすればわかりやすいのかもしれない。


 躊躇しないのか先陣を切るように動きだせるのは無謀すぎるおバカなリンちゃん。

もちろん天辺ハ……令和の時代なら差別用語に指定される頭部が軽すぎるおバカだ。


 弱そうに感じるひょろっとした色白のリンちゃんにハゲ野郎は正面からツッコむ。



「こんな場所に石がっ」直進するハゲと同期して全身を傾け倒れこんだリンちゃん。


「えっ?」急制動できないおバカなハゲ野郎は足先から踏ん張りヘッドダイビング。

 おぎゃあと赤ちゃんみたいな絶叫を上げる下腹部にリンちゃんの裏拳が炸裂する。


「あぁっ」女神さまじゃない……あの衝撃を感じさせるような声音は耳を防ぎたい。

 脳筋おバカさんだから頭の中空っぽスカスカにせよ意識あるだけでもマシじゃね。


 その先で挑発して笑うヒバリくんに正面から特攻する角刈りはムキムキの胸板だ。

キン肉マンゴーファイッと頭で鳴り響いたゴングは気のせいでもヒバリくんは強い。


 右肘で庇い顔を伏せた正面攻撃をいなして懐に入りこむと角刈りは頭上を一回転。

そんなに詳しくはない格闘技でも相撲か柔道……合気道辺りの投げ技かもしれない。


「ぐえっ」路面に倒れてカエルみたいに鳴くとヒバリくんの肘打ちが腹部に決まる。



 玄関口で暴れるアフロヘア大男と小柄モヒカン野郎に正対するラグビーと柔道家。

角刈り同様にタックルで頭上を半回転するアフロと背負い投げで横たわるモヒカン。


 湘爆ならリーダーぽい金髪リーゼントは顔面のハイキック直撃で意識ないっぽい。

出待ちの状態で一瞬のうちに即落ちされるとこっちとして張り合いなさすぎて困る。


「一瞬やん……これだけぇ?」必殺技でヤンキーが沈むと同時に時間は動きだした。


 離れた位置で見守るような黒スーツ二人の背後から肩を叩くお巡りさんが見える。

制服の警察官がわらわらわいて地味なスーツを着用する強面さんは公安なんだろう。


 大学生清掃チームが襲撃された件でチーマー連中の背景を探る一環かもしれない。

実際のところ背後にいる団体組織が極東会かどうか別にして暴対法は成立する以前。



【暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律】施行が1992年3月1日だ。

 もちろん内容は暴力団いわゆる極道と呼ぶ任侠組織の取締りを定めた律令だよね。


 そのまま現地の任意同行から通常逮捕する流れなら概ね大きな問題に発展しない。

江戸から伝統のある下町でお祭りに的屋さん必要悪かもしんないけれど世は平成だ。


「火事と喧嘩は江戸の花」あのことわざ華だった? こち亀で目にした記憶がある。


  人家の密集する江戸その下町は火事が多くて火消しの活躍が派手すぎたようだ。

また下町育ちで気の短い江戸っ子たちのお祭りは余計にケンカが多く華やかだった。


 見栄え良い花と華やかすぎて夏の風物詩でもある「花火」に繋がるかもしれない。

誰かに教わった話じゃないし浪速っ子として長く暮らした人間だから適当だけどね?

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より良き世を呼び寄せたい俺らで平成からの歴史を改ざんしようぜ(シン・なにわダンジョン物語) 神無月ナナメ @ucchii107

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