第十六話「池袋のヤクザもどき」

 結果として先生やアシさんを補助するお土産が絶賛されて互いの関係性は深まる。

先生たちを手助けしたい学生がたくさんいると匂わせて追加のメンバーは後日対応。

 

 世紀末と比較して穏やかな夏は終わりベルリンの壁が崩れるとドイツの再統一だ。

この辺りから独裁政権の宿命である腐敗を避けられない社会体制は急激に縮小する。


 ドラキュラ伯爵の舞台ルーマニアのチャウシェスク政権も遠からず破綻を迎える。

ここから急速に東欧の瓦解が進み共産主義国の盟主であるソビエト連邦は消滅した。


 もちろん年末年始に国内の事故犯罪が多発しても記憶しておらず阻止はできない。

やり直す前は三度目の事故から不本意な三十五年がすぎて余裕のない暮らしだった。


 昭和末からのやり直しが順風満帆すぎると逆の意味で張り合いや気力は湧かない。

死者と傷病が大量に生まれる争いを防いで未来で起こる事件災害の対策が最優先だ。



 これらの成果がティアマトさまの復活に繋がり天使マリアの覚醒に強く影響する。

天使マリアと契約者を結んで互いの感情を宣誓に乗せたが実体化するのは楽しみだ。


「店の内装終わった連絡受けてざっくり確認してきたよ。どことなくいい雰囲気?」

 純喫茶エブリーのモーニングを味わっている途中リンちゃんが入口に姿を見せた。


「とりあえずリンちゃん適当にお座り。マスター追加のホットモーニングよろしく」

 おバカさんは基本的に風邪なんて引かないだろうけど実働部隊が減ると困るんだ。


「風ピューピューやからうれしいわぁ。12月のいいタイミングで開店したいよね」

 確かにチラシの宣伝するなら世間一般に師走とクリスマスで相乗効果が生まれる。


 歳末のサンシャインセールに訪れた女性たちなら帰りはアニメショップでお買物。

大阪西梅田の第三ビル間近にあったアニメショップペロが開業する店のお隣さんだ。



 サンシャイン傍に令和代表格アニメチェーンanimateの池袋1号店がある。

1983年3月に本店が生まれたと聴いて驚きだったが当時は空前のアニメブーム。


 あれって高一だよなぁ……サンライズの聖戦士ダンバインに装甲騎兵ボトムズだ。

題材が同じロボットでも中世欧州風異世界転移と銀河系戦争ものアクションの違い。


 装甲騎兵ボトムズと前作に当たる太陽の牙ダグラムで大量生産ロボが大活躍した。

二つは同じ制作会社でもガンダムシリーズの富野由悠季じゃなくて高橋良輔監督だ。


 キン肉マンや魔法の天使クリィミーマミにキャッツアイとキャプテン翼が同時期。

それぞれ異なる不朽の名作で……ジャンプ連載プロレスと怪盗モノに青春サッカー。


 クリーミィマミは女の子がアイドルに変身するスタジオぴえろ制作の魔法少女だ。



 腐女子の聖地と呼ばれる池袋乙女ロードは影や形もない時代にキャプ翼で荒れた。

週刊少年ジャンプに連載した青春サッカードラマは本来なら腐の要素が欠片もない。


 それでもどちらか受け攻めかけ算でメジャー化する作品の元祖はキャプテン翼だ。


 1984年は重戦機エルガイムと北斗の拳が有名で宮崎駿は犬の名探偵ホームズ。

翌年の機動戦士ゼータガンダムとタッチは異質でハイスクール奇面組がコメディだ。


 当時は商品も少なく下敷きポスターに缶ペンケースとステッカーやカードぐらい。

アニメ現場で使用された唯一無二のセル画や台本などが当時は高額で売られていた。



 のんびりと熱々の珈琲にバタートーストゆで卵つきミニサラダをしっかり食べる。

ピッタリのタイミングで戻ったヒバリくんとカジに学生数人を連れ池袋を目指そう。


 寒さに震えて歩くのも面倒だからタクシー三台に分乗して池袋駅前まで直行する。

ちょうど西口サンシャインビルが目に入ると同時にガラ悪い男たちの絶叫が轟いた。


「ここで飲食やんならスジ通してきちんとウチの傘下で契約してもらわんとなぁ!」


 目に見える形で暴れる男たちはどう見ても未成年っぽいしチーマーの前身だよな。

ちょっと前に駅前清掃活動中に絡まれたらしいし的屋系暴力団が背後にいるっぽい。


 中野顔役の爺さんから教えられた池袋……豊島区を束ねる大手団体は幾つかある。

サンシャインの向こう側になる文化通りビル四階が本拠地の指定暴力団は極東会だ。



 戦後闇市からそれなりに歴史のある的屋系で構成員は常時数百人いるとか聴いた。

不良の強面ヤンキーかもしれないが振り回すモノが金属バットにバール風の何かだ。


 どことなく古臭い昭和不良シネマっぽくて失笑がこぼれるほどチープすぎるよね。


「ひぃふぅみぃよぉいつ……リーゼント。スキンヘッド角刈りパーマにモヒカン?」

 さほど怖さを感じなくても遠巻きに見える五人はここらで珍らしい黒の特攻服だ。


「湘爆のコスちゃうかなぁ」平成を迎えてもヤンキー臭が消えず厨二っぽい雰囲気。

あまりにも懐かしいチバラギ風味のヤンキーで強烈すぎる髪型は驚異の対象だった。


 歩行者が遠巻きにする都心の裏道で叫び暴れる男たちは店に押し入る訳でもない。

内装が済んでもカウンター奥の厨房機器と照明設備は入荷待ちで閑散とした印象だ。



 実は子ども時代に神社境内で寸止め空手を習ったぐらいで実際のケンカに不慣れ。

腕力がないカジと見守りつつ武闘派筆頭のヒバリくんリンちゃん学生さんにお任せ。


 まぁ言葉の裏まで通じるかは別にして穏便な声かけと様子伺いから始めようかな。


「金銭を支払うのが嫌なわけでもないんだけど……代表取締役支社長の速水来太だ。

キミたちを動かす組織……仮名をK会にしちゃうよ。みかじめ料渡す意味あるの?」


 いやいやいや煽りたいわけじゃない。おバカすぎる田舎ヤンキーが苦手なんだ……

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