第三章 マンガ家先生登場
第十四話「先生にプレゼント?」
人聞きしたイメージを払拭する苛烈さ……不本意だが初対面での抗えない印象だ。
軽蔑の意味じゃなくデビュー作の人気ヒロインだったルビちゃんっぽくて苦笑い。
調理師学生に餌付けされて恋に墜ちる……ピンクの髪が際立つ異次元からの侵略者。
高次元から転移した影響下でブチ切れた瞬間ハイパーガールに変身して暴走する。
黒髪ぱっつんなメリハリ美女ルービ先生の外見は一択館管理人杏子さんに似ている。
こちらは東京に隠れ潜む寿命ない吸血鬼女性でモンスター野郎とのラブコメ展開。
もしかすると先生はギフテッドで異能を発揮する早熟児に生まれた可能性がある。
平成から検査機器と医療技術の発達でノーベル賞級の成果が申告されるタイミング。
――未来は頭部骨折と脳挫傷の後遺症から激務と睡眠不足の再入院がデフォルトだ。
精神科の閉鎖病棟に否応なく放りこまれて隔離室で数日間寝起きした痛すぎる記憶。
それでも通常ならわからない裏事情を理解できたから後の……実務で役に立った。
令和で最後の記憶……介護福祉士として契約社員で働く週末移動支援の実務中に――
先天性の障がいに対する認識と判断は一般社会に浸透せず天才と何とかは紙一重。
令和を迎えると障がい児は増える一方ストレス原因の後天的な精神疾患は倍増した。
国内に限定する原因不明の状況だったのか現実的な世界中の平均までわからない。
晩婚や少子高齢社会の影響と添加物や住環境が密接に関連する実情なら理解できる。
劇画村塾神戸教室の出身者で小池大先生に紹介されて事務所に潜りこめたカジだ。
自我の強さに刹那主義……知能指数と生活が問題なくても裏の趣味や実態はヤバい。
「行者の道」雪山滑落事故で発覚する処理が難しい趣味嗜好のあれこれや証拠写真。
幸いにして表にでることはなくすべてが時代の狭間に葬られ事件化せずに消えた。
片やリンちゃんも闇を抱えた毒親育ちで未来の記憶は夜学中退からの転落人生だ。
派遣社員なり高収入を東通りキャバ嬢に溶かした借金で新宿の闇に埋もれて消えた。
誰でも一寸先は闇……深淵をのぞくときは深淵もまたこちらをのぞいているもの。
哲学者として著名なニーチェが書物で残した言葉は抽象的すぎて解釈に違いがある。
一般的には『悪意など問題の解決に没頭しすぎることで初心と目的を忘れやすい』
つまり相手に近づきすぎると自分まで引きずられて影響を及ぼされる危険性が増す。
同じ意味合いを簡潔にまとめると「木乃伊取りが木乃伊になる」ことわざと近い。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」敵陣まで深入りすると共感して裏切り行為を呼ぶ。
直面する社会悪をなくそうと優先させることで小さな問題なら見すごしやすくなる。
怪物と闘うなら『怪物(=同位体)』にならないよう最低限でも用心するべきだ。
一定の距離を保ちながら「相手と向き合い方」それ自体を模索しながら行動しよう。
双方にメリットがあるならより深いつき合いを長く続けることで関係は深まるし。
「「「「「お待ちしてましたよっ。いらっしゃいませぇ」」」」」いきなりの唱和にビビる。
ため息つくマネージャーに招かれ玄関から訪問すると……五人の美女が大歓迎だ。
もちろん怪しげな風俗やメイドカフェは世紀末の流行でこの時期にあるはずがない。
加えて背後から女性に両肩を押さえらつけられ前にいるルービ先生はしかめっ面。
先生の本名はどこにも公表されていなかったが目白生まれのお嬢さまだと耳にした。
三つ四つ上の二十五歳と仮定すると令和……未来なら大卒就職で結婚適齢期かな。
それが昭和……戦後すぐは行き遅れと呼ばれたかもしれない狭間のバブル絶頂期だ。
やり直す前の旧友たち……広くはない交流でも結婚式に呼ばれて祝儀を手渡した。
時代の変化で価値観は反転する……それでも少子高齢社会の令和は相応に歪だった。
後遺症と諸問題で独身を貫いたアラカンから巻き戻してより良き社会を導きたい。
なぜか女神さまに言質を与える宣誓……実体がない天使と仮段階でも祝言は挙げた。
こちらに心を開いてくれる相手として会話は弾むし中身が素晴らしい天使さまだ。
直に体温を感じられるような触れ合いは目下のところできないだけで不満でもない。
より現実的な意味の彼女が欲しいと考えるなら運とタイミングに行動力が必要だ。
情けない未来の記憶を抱えながら平成からやり直せることの喜びを味わうしかない。
玄関から開けた廊下を進みながら右は作業室で左の階段と洗面所化粧台をスルー。
十坪ありそうな正面のリビングダイニングに明るいソファとテーブル椅子が居並ぶ。
売れっ子でも素晴らしさを認識させたのがスライド書棚に詰められたマンガ本だ。
「正面のソファにどうぞ」マネージャーの導きで鮮やかな白革張りのソファに座る。
イマイチわからない状況で……まずは自己紹介で抱える贈り物の説明から始めたい。
両肩を支えられ荷物のように運ばれた先生とアシさんらしい五人はテーブル席だ。
マネージャーがパイプ椅子を拡げてテーブル側に美女七人。ソファに男が七人座る。
もちろん酒を提供する飲み会や合コンじゃないしプロポーズ大作戦は撮影しない。
「えっとですねぇ……全員面識あって勝手しったるボクが飲み物用意してきますわ」
おかしな雰囲気に気づいて空気を読んだカジが立ち上がりキッチンに小走りする。
「わたしもお迎えにでた際ご挨拶だけは済ませたのでカジくんの手伝い優先します」
どことなく場を嫌うような俵谷さんがカジに追随すると再び嫌な沈黙が生まれた。
さて……今回お客さんとして招かれたわけで代表としてまずはカチコんでみたい。
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