第八話「おバカ二人が現れた」

 結局のところ親三本積みをくず役で蹴られてから防戦一方で……勝負を避けた。

上級者二郎さんは見に回って……終盤から盛り返したのが大河さんとスズメさん。


 誰か先行リーチがかかるとメンツ崩しの完全現物ベタ降りで逃げ切りを目指す。


「いやぁ。なかなか手堅いしミス一つしない打ち筋……プロになれんじゃねぇ?」

 えらく上機嫌で笑う二郎さんに認められたようであっさり売買契約が結ばれた。


 万全の準備を終えた三郎さんに指示されながら実印を何度も押す簡単なお仕事。

もちろん一階カフェと地下雀荘は従来どおりの自営業で上階すべてが譲渡される。


 桧垣一族として複数物件を近所に所持するらしく転居先は問題なさそうだった。



 一見すると独りぼっちでワンフロアでも広いのに低層階は本拠地に登記される。

上層については展開次第の空き部屋でとりあえず最上階を居住スペースに決めた。


 昔から掃除と片づけは苦手で……マリアの指先チチンプイプイが役に立ったよ。

三つ子の爺さんがバックについてから自腹を切りながら有力者相手に顔を繋いだ。


 平成初期で中曾根元総理の正当後継になる竹下総理だったから自民党の安定期。

駅前量販店は誕生前でにぎやかな秋葉原を散策して最低必要な家電は購入できた。


 1989年……極寒の上京で春が訪れ怒涛のように平成元年四半期はすぎ去る。

宮崎勤事件も昨年末に匿名で情報提供したことから早期逮捕に繋がったみたいだ。


 オーム真理教は11月に発生する坂本弁護士一家事件に先立って準備を終える。

彼と知己だった同業の三郎さんから警察庁にお願いして……公安の助けを借りた。



 未必の故意……事件が起こらないと本来は行動しない警察を何とか丸めこんだ。

表立ってオウムが企画する犯罪行為を公表せず上級幹部から洗脳状態を解き放つ。


 上九一色村や拠点に検察の手を借りガサ入れして得られたものはテロの証拠だ。

未来で逃げおおせた上友史浩や上級幹部を抑えサギ師麻榛彰晃の真意を問いたい。


『死者や重病者たくさんの地下鉄サリン事件。それ筆頭に殺人を防げたっぽいよ』

「そだね。未来からの逆説的見解でオームは宗教団体じゃなくてテロ組織だから」


 さて……これから激しく歪む社会をより良く変えるためどう動くのが理想かな。 

渋谷チーマーと呼ばれる若者たちが徘徊を始めてから渋谷系スタイルは浸透する。


 昭和から長期に政権を握った自民党の陰りが見え始めると混乱する連立政権だ。

良し悪しは別の次元で相手を批判しながら笑うリベラリストの台頭は抑制したい。



 昔から文壇……物書きとしての作家は反体制派閥で筆頭とされたが実態は違う。


「自由と享楽を尊ぶ」意識は相手を批判することじゃないし敵対の必要性はない。

都市伝説かもしれないが国家中枢に影響力を持つ大陸や半島と繋がる大物たちだ。


 未だ存命中らしい佐川良一は元A級戦犯として巣鴨プリズンに収容されている。

「右翼のドン」にして政財界の黒幕でありCIAエージェントなんて噂もあった。


 昭和五十年代「一日一善」「戸締まり用心火の用心」子供と笑うCMが流れた。

「競艇の合法化で」表面的に日本船舶振興会の活動で篤志家として高名な人物だ。

 

 それでも黒い噂は絶えず統立教会や中華民国と共闘しながら反共姿勢を見せた。


 政権と自由を揺るがす売国奴たちは排除するべきで国士と完全に別の意味合い。

無駄遣いしないが困らない金銭はあり満員電車に揺られる必要もない夢の生活だ。



 のんびり準備の段階……「未来ネタ」小説に変えこっそりブログ連載を始める。


 そんな四月が終わるGW中日に事前連絡なしで来襲するのはおバカなツレ二人。

『ねぇライタくん。一階から外部エレベーターに乗って怪しい男二人きたけど?』


 マリアの声かけでエレベーター搭載画像を確認して懐かしい顔にビックリした。

「えっと……こいつらヤバいオタクっぽいけど地元のツレ。鹿嶋忠士と林葉リン」



 上から下まで全部が真っ黒……変わらない厨二病まっしぐらの鹿嶋は幼なじみ。

初めてクラスメートになるリアル中二時代……ケンカして仲良くなったオタ仲間。


 この時期のあいつが東京「中野」にいたことを後から本人に聴いた記憶はある。

去年まで新聞奨学生で小池一矢大先生主催の劇画村塾神戸教室に毎週通っていた。


 未来でこの時期国家公務員警察庁技官に合格して中野警察学校の研修中だった。

兵庫県警察本部本採用で大阪天満橋府庁傍で母と暮らすことになるが早死にする。


 別系ツレに部屋終いを手伝わされてヤバすぎる書籍や道具ばかりで驚きだった。



 林葉リンは本名で性別男……上友史浩を若返らせたような優男は真正ロリ野郎。

しゃれた茶系のハーフコートを着こなし細身パンツを履く姿でやたら女にモテる。


 なよっとした外見のイケメンがおっとりした話し方で誘蛾灯みたいに女を誘う。

同じ夜学を未来で中退すると大手ゼネコン派遣勤務から図面屋開業の失敗で飛ぶ。


 最後に誘われた阪急東通商店街のキャバで三百万借金をねだられ断ると消えた。

すぐ動かせる金銭はなく拒否すると「新宿行くわ」あれが辞世の句かもしれない。


 実際のところ別れの挨拶は平成十年ごろでお互い携帯番号が代わり音信不通だ。

新宿で何をやるか詳細はしらずエスポワールや蟹工船に乗せられたように感じる。


 未来で二人を救えずに別れの挨拶をしていないことはある種の心残りになった。

ティアマトさまとマリアに見初められ人生やり直した今ならできることあるかな。

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