日焼けしたクラゲ

釣ール

自分達は水分だけで出来てない

 今日も水族館を探す。

 別の場所に行かないと知り合いに会うので下調べも兼ねて電車やバスを経由けいゆし、他の水族館を探す。


 水菜みなはなるべく食事に気をつかい、殺生せっしょうを行わない料理を選んでエネルギーをつけて大学生活を送る。


 この後好きでもない仕事場で転勤や転職前提で就活するのか。


 夢のある職業にきたい人には申し訳ないけれど水菜は環境が良い職場で経験を積んで若いうちに貯金し、水族館巡りを残りの人生でし続ける毎日を送るために課題へ取り組むのだった。


 海をただよい続けるクラゲもエネルギーは消費しているし全ては水分で出来ていない。


 ミズクラゲ、タコクラゲ、エビクラゲ。

 ジョークだが陸にはキクラゲというキノコもいる。


 今日も知り合いのいない水族館へ行く。

 初めての場所なのでまるで初恋だ。


 筒のようなガラス張りの水槽にアカクラゲ達が泳いでいる。

 アカクラゲは波に打ち上げられていても毒性が強くそばを通れば目が痛む毒がある。


 勿論触手には気をつけること。

 クラゲ図鑑で見た後に海へ遊びに行って浮かんでいるのを船から見て怖かった記憶がある。


「水族館で見るとこんなに可愛いのだけどねえ。」


 じっくりと眺めていき、嫌な出来事も好きな出来事も水族館の中で溶けていく。


 クラゲ博士に本当はなりたかった。

 専攻せんこうした大学は経済大学だが海に詳しくなるにはあまりにも学力の壁が多すぎて断念だんねん


 クラゲだけでなく他の海洋生物についても多大な知恵が必要だった。


 水菜みなは心の中で水槽のアカクラゲに謝りつつも

 これで良いとこんな今を生きてどうしようと葛藤している。


 今日は帰ろう。

 あとはまた目星がついた水族館へ行けるよう、次の予定に組み込むだけ。


 いつも通りのはずなのにクラゲへの考え方は変わらない。


 社会人になっても海へ関わる仕事が出来るのなら考えてみたい。

 どうせ一度きりの人生だ。

 うだうだ嫌な仕事をして、転職するのも仕方ないかもしれないけれどせっかく好きなことがあるのだ。


 自分も何か一つ願いを叶えたい。

 まずは大学卒業を目指そう。


『またね』と頭の中でアカクラゲへ伝えて水族館を去る水菜。

 少しだけ浮かぶ煩悩ぼんのうを取り払う方が建設的かも。


 そして水族館への仕事内容を勉強する水菜みなだった。

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